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青年期に強い意志と情熱が現れた写真を展示する、ヤング・ポートフォリオ。 2019年度収蔵作品136点を一堂に展示

 

 

清里フォトアートミュージアムでは、2020年3月20日(金・祝)から6月14日(日)まで、「2019年度ヤング・ポートフォリオ」展を開催する。

ヤング・ポートフォリオ(YP)とは、「写真を通して世界の若者を支援する」ことを目的とする文化貢献活動。

毎年、世界の35歳までの若手写真家の作品を公募し、第一線の写真家による厳正な選考を経て、若手写真家の「原点」となる貴重な初期作品を購入・収蔵し、後世に残す活動だ。

選考された作品を、美術館が永久保存するという、コンテストと異なる性格を持つ本活動は、世界でも他に類をみないもの。

1995年度より開催しており、2019年度は第25回となる。

これまで世界77カ国から10,508人、137,252点の作品が応募され、そのなかから、46カ国の802人による6,241点の作品を購入した。

 

 

 

 

自然への異なるアプローチ/表現の可能性に挑む

井上拓海は、バイオテクノロジーやヒトゲノム計画が進行する一方で、昆虫が世界で毎年2.5%ずつ減っており、しかも3分の1が絶滅の危機にあることに着目した。

「生物とは何か、生命とは何かを再定義するために何ができるのか」井上は、食物連鎖の底辺にあって、落ち葉や動物の死骸を分解する役割を持つことから、昆虫を生物のシンボル的存在と考え、シリーズ〈Life-e-motion〉を制作。ドライフルーツなどを組み合わせて撮影し、個々の種をみごとに“再生”させている。

本展では、全25枚を展示いたします。

 

一方、桑迫伽奈の〈arteria〉シリーズからの作品《after the rain》は、インクジェット・プリントに直接刺繍が施されている。

刺繍を重ねることによって、作家は、記憶の中の自然の色合い、光や風の表現にたどり着くことができたと言う。

本展では、プリントの表裏両面を展示し、繊細な手技をご覧いただきます。

彼らをはじめ多くの作家たちが、自由な発想によりアナログとデジタル両者の特徴を駆使して、作家の記憶や想像上の「目に見えないもの」をどのように写真で表現するか、その可能性に挑んでいる。

 

 

 

なぜ35歳なのか – 芸術における青年期の意義を問う

芸術家は、 をもって試行錯誤を重ねることにより、才能・資質が高められ、作品のクオリティが磨かれる。

研鑽を積んだ作家の多くは、おのずと30代には自己のスタイルを確立し、代表作となる作品を生みだしている。

青年の原点とも言うべき作品が、表現の領域を開拓し、歴史を築いてきました。そこには永遠の輝きがある。

 

 

YPとコンテストの違いは?

作家の世界観や芸術性を表現するポートフォリオ(作品集)となるように、1枚だけでなく、複数の作品を収蔵することが特徴だ。

また、通常コンテストの入賞は1度限りだが、YPは、35歳まで何度でも応募することができる。

20代から35歳まで何度も収蔵することができれば、作家の成長を見守り、応援することが可能となるからだ。

 

 

写真家の成長とともに世界へ伸展するYP

これまで作品を収蔵してきた写真家のなかには、めざましい成長をとげ、土門拳賞や林忠彦賞、木村伊兵衛賞など内外の様々な賞を受賞する写真家が誕生し、また東京造形大学、大阪芸術大学、九州産業大学などで、後進の育成にあたるなど、多くの優秀な写真家が誕生している。

2014年には、東京都写真美術館にて清里フォトアートミュージアム開館20周年記念展「原点を、永遠に。」展を開催。

世界34カ国の197人(YPのみ)による約500点を展示し、世界を俯瞰しながら、写真表現の多様さを展望する展覧会を行った。

さらに、芸術における青年期の意義を問うという理念を明確に表現するべく、2018年、再び東京都写真美術館において、「原点を、永遠に。-2018-」を開催。

同展は、当館が収蔵する全写真家の青年期(35歳まで)の写真のみを展示したもので、会期前半は<歴史篇>として撮影年代順(1898年~2017年)に展示、後半は<作家篇>として、作家名をABC順に展示した。

ヤング・ポートフォリオの作品だけでなく、写真史における重要な作品を多数含むこの展覧会は、一部再構成のうえ、2018年6月、国立台湾美術館に巡回。

同館の開館30周年記念特別展「起始・永遠」として開催され、成功裏に終了いたしました。今後も海外への巡回展を企画してまいります。

 

 

YPの見どころ

作品選考は、当館館長のほか、YPの理念にご賛同いただいた現役写真家2名が行います。

それぞれの写真家が手がける写真のジャンルは多様ですが、表現意欲の強さ、視点の明確さなどが基準となるため、担当する選考委員によって何らかの“傾向”が生まれるということはありません。

若い才能に未来を託す思いで選考し、3名の選考委員全員が合意した作品を収蔵します。

特に近年応募の多いロシア、ポーランドなど東欧の国々、アジアでは中国、韓国、台湾、バングラデシュなどです。

世界のさまざまな地域の特徴、多様な芸術性、そして、世界の若者が捉えた<いま>を俯瞰して見ることができます。

 

 

2019年度ヤング・ポートフォリオ(第25回)データ

選考委員  :川田喜久治、都築響一、細江英公(館長)

作品募集期間:2019年4月15日~5月15日

応募者数  :152人(世界22カ国より)

応募点数  :3,848点

購入者数  :22人(国内10人・海外12人/8カ国・二重国籍を含む)

日本/マレーシア/ベラルーシ/中国/

韓国/台湾/ポーランド/ロシア

購入点数  :136点(全作品を展示いたします)

 

1995年度から2019年度までに作品を収蔵した作家の総数:802人(46カ国)6,241点

2019年度ヤング・ポートフォリオ(以下 YP2019)の見どころ

 

ヴァーチャルな世界を日常と感じている世代は、現実をどのように捉えているのか

2019年度購入者は1985年から1993年生まれ。物心ついた時からデジタルカメラや携帯で写真を撮って来た世代で、フォトジェニックなモノを捉える感覚が自然に培われ、ヴィジュアルセンスが充満していると3人の選考委員も共通した印象を語った。

ヴァーチャルな世界が日常に溢れるなか、上野公園で撮影した淵上裕太の〈UENO PARK〉シリーズなど、カメラを介して“キャラクター”ではない生身の人間と対話し、自身の存在を確かめ、世界と向き合った作品が多く見られる。

一方で、YPにて4回作品を購入している高島空太は、複数のイメージを組み合わせてスケールの大きな“物語”を生み出し、デジタルでなければできない豊かな創造性とイメージの抽象性が高く評価された。

 

 

 

開催概要

展覧会名  :2019年度ヤング・ポートフォリオ

会期    :2020年3月20日(金・祝)~6月14日(日)

休館日   :毎週火曜日、

但し4月28日、5月5日は開館、3月19日(木)までは冬季休館

会場    :清里フォトアートミュージアム

開館時間  :10:00~18:00(入館は17:30まで)

入館料   :一般 800円(600円) 学生 600円(400円) 高校生以下 無料

( )内は20名様以上の団体料金

家族割引 1,200円(2名~6名様まで)

交通のご案内:車にて 中央自動車道須玉I.C.または長坂I.C.より車で約20分

JR   中央本線小淵沢駅にて小海線乗り換え 清里駅下車、

車で約10分

 

 

 

【同時展示】

過去のYPにて収蔵した作品+3人の選考委員の初期作品各5点

35歳まで何度でも継続して作品を収蔵するのが、YPの大きな特徴。

実際にYP2019にて収蔵した作家全18人のうち、5人が過去のYPでも作品を収蔵している。

彼らがどのようにシリーズを発展させ、視点を深めているのかをご覧いただくため、“選考委員のヤング・ポートフォリオ”作品全15点を同時に展示する予定だ。

 

左:選考風景。左から2019年度YP選考委員・川田喜久治氏、細江英公(館長)、都築響一氏

 

 

川田喜久治(日本、1933) 本展出品作品《地図》1960-67年(5点)

1955年、新潮社に入社。

1959年、フリーランスとなり、細江英公、東松照明らとともに写真家のセルフエージェンシー「VIVO」に参画(1961年解散)。

1965年発表の写真集『地図』は、戦中戦後の日本人の記憶と未来を示唆する作品として、全頁が観音開きというデザインとともに大きな話題を呼び、世に衝撃を与えた。その後の作品ではカタストロフィな世界を展開。

1990年代以降はいち早くデジタル技術を駆使し、新たなドキュメンタリー・ヴィジョンを構築している。

代表作に『聖なる世界』『ラスト・コスモロジー』『世界劇場』などがある。

 

 

都築響一(日本、1956) 本展出品作品《TOKYO STYLE》1993年(5点)

「POPEYE」「BRUTUS」誌などで雑誌編集者として活躍後、1993年、東京の人々の生活空間捉えた『TOKYO STYLE』を発表。

写真家としての活動を始める。日本各地に点在する秘宝館や奇妙な新興名所を撮影した『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で第23回木村伊兵衛賞受賞。

暴走族、デコトラ、パワフルな高齢者など無名の人々への取材を通して、現代の日本を描く。

2012年からは、他のメディアとは全く異なる視点から、好奇心の赴くままに取材し、発信する個人雑誌有料メールマガジン『ROADSIDERS’ Weekly』を刊行中。

 

細江英公(日本、1933) 本展出品作品《おとこと女》1960年(5点)

舞踏家・土方巽を被写体とした「鎌鼬」や、三島由紀夫を被写体とした「薔薇刑」(1963)など、特異な被写体との関係性から紡ぎ出された物語性の高い作品により戦後写真の転換期における中心的な存在となる。東京工芸大学名誉教授。1995年より当館初代館長。

2003年、「生涯にわたり写真芸術に多大な貢献をした写真家」として英国王立写真協会より創立150周年記念特別勲章を受章したほか、2010年、文化功労者。

2017年、写真家として初めて生前に旭日重光章を受章した。

 

 

【特別展示】

当館収蔵作品よりウイリアム・クライン(アメリカ、1928-)の初期作品<東京>を10点展示

ウイリアム・クラインは、20世紀の写真に多大な影響を与えた写真家のひとり。

1956年に発表した写真集『NEW YORK』は、写真表現の既成概念を覆すブレやボケ、荒れた画面で構成され、過激で挑戦的なその手法は、写真界に大きな衝撃を与えた。

本展では、クラインが1961年に撮影した<東京>から、ヴィンテージ・プリント10点を特別に展示する。

小型カメラを手に東京を自在に動き回り、雑然としながらも高度成長期に沸く街の生々しい表情を捉えている。

これらの作品は、クラインが33歳の時の作品で、クラインにとっての“ヤング・ポートフォリオ”と言うべき貴重な作品群だ。

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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