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小川榮太郎氏インタビュー第3回 未来のために、一度たりとも許してはいけないことがある。

 

 

現代日本における報道の在り方に、真っ向から挑んでいる人間がいる。文芸評論家・小川榮太郎氏だ。舌鋒鋭く朝日新聞を追求する姿が記憶に新しい。インタビュー第三弾の今回は、ネットニュースの問題と、迫り来る日本の危機についてお話を伺いました。

 

 

──SNSが浸透し、個人の持つ情報力がマスコミを追い越している場面が少なくありません。情報収集のスピードや専門性など、高度な情報リテラシーを持つ国民が増えていますね。

 

過渡期というのはまさにこのこと。ネット空間においてはマスコミの信頼度が完全に失墜しています。これは「専門性」と「比較優位」が問題となります。

何らかの意味で信頼していく、信頼をしながら事実を確認をする作業がネットだとできます。産経のヘッドラインニュースを見て、次に朝日を見て、さらに日経を見て、そして個人のブログを見ていく。そうしているうちにどっちが本当のことに近いか、事実に近い率が高いかを判断し、選ぶわけです。この作業はネット上なら容易にできます。総理はしょっちゅうそのことを国会で答弁していますね。情報を自分で選べる若い世代はどんどん自分で答えをだしていっていると。

 

──比較できるニュースなら選ぶことができますが、黙殺されてしまう情報もありますよね。

 

小池新党ができましたよね。民主党が小池新党に合流しようというのを満場一致で可決し、雪崩のように向かっていった。その際の小池新党はまだ組織も政策もない。そんな新党に5年前の政権党が合流するというのは民主主義の自殺です。問題にしなければ国民はスルーしてしまいます。

そういったことはメディアの問題というよりも、知識人がきちんと問題化しなければならない。つまり日本の知的社会が脆弱になっているんです。これにはいくつかの段階があります。

マスコミ全体がものすごく劣化してしまっというのが第一段階。

SNSによって情報が比較できるようになり、国民が妥当に判断できるというのが第二段階。

このあたりは沖縄の選挙でもわかりますね。世代によって自民党、安倍政権支持率が異ななっています。40代以下なら70%、60代から70代くらいだと20%代。3世代間でこれだけ違う。利害はそこまで対立していないのにここまで異なる原因は、「情報の差」によるものでしょう。相当異様な差だと思います。情報を比較できる人とそマスコミ判断をする人とで、全く異なってくる。

ネットの情報のよくない点は、断片的であること。そして自分の偏りに気が付かなくなっていくこと。自分が住んでいるネット世界、SNSの世界は断片的です。私もSNSでなにか発信すると、賛同者がたくさん集まり、批判者が視界から消えてしまう。賛同者の連鎖する空間の中にいると、勘違いしてしまいがちです。世間もそうだと思ってしまう。けれど実際は数%の人しか共有していない空間、考え方である可能性がある。

閉鎖的で断片的で速度の速いネット空間だけに過度に依存すると、全体性、知的な妥当性への感性がなくなってしまう。知的な部分の粘りというかな、学問に対する粘りのようなもの、これは活字、読書でなければ得られない。それがネットによって失われています。

 

 

 

 

──読書もそうですが、情報を得ようとするとコストがかかります。時間、費用、体力などのあらゆるコストです。年齢を重ねれば重ねるほど、コスト負担が大きく、正しい情報を得ることが厳しくなるのでは。

 

日本人ってね、元々勤勉だったんです。江戸時代の識字率や読書能力は、同時代の欧米と比較しても段違いに高かった。実際に読んでいるもののレベルも非常に高かった。そういった信頼できる活字を読むということが一つの文化になっています。

活字を良心的に新聞が提供してくれるだろうというのが、日本人の根深いDNAにありますよね。

そのため、比較して正しい情報を見分けるという行為にわれわれ日本人は“慣れていない”。

その意味で情報媒体が平気で嘘をつくという前提で物を読んでゆく訓練を新たに積んでゆく必要が我々にはありますね。

 

──日本の知的社会が弱くなっている。テレビが衰退しているということは、テレビに出る有識者の質も変わってきているのでしょうか。

 

テレビ局の指示通りに喋らない人は基本、出してもらえないからね。

あと、タレントと学者を同じ列に並べようとするので、タレント側に話の基準を合わせるんですよね。

出演者に対する指示が露骨な場合も結構あるようですよ。最初に「アベノミクスのことは絶対に褒めない」というようなことを指示されたとどなたかが暴露されてましたね。

八幡和郎さんは、蓮舫の二重国籍を孤軍奮闘で取り上げて辞職まで追い詰めた人ですが、彼が地上波のテレビに出演するとき多くの局から「蓮舫さんの二重国籍には言及するな」と言われていたそうですが。

いや、それなんで!?って話でしょ。

基準を設けることで、国民に対する洗脳空間を作っているということは確実です。証拠はいくらでも出ている。八幡さんは骨がある人だから平気でそういうことを書くけれど。テレビの指示通りのことを自分の意見であるかのように言っている人が大半なんじゃないかな。

 

 

 

 

──森友・加計報道に関して、小川さんは「戦後史上最大の情報暴力」と定義付けましたね。そして、デモクラシーが傷つけられたのだ、と。

 

メディアに言論の自由という御旗を振りかざされて、うそをつかれても国民側が何もできない。政治家はメディアに言及するだけで言論弾圧だと言われてしまう。この状況は報道による言論の弾圧でしょう。

安倍総理はそこを一歩一歩崩そうと上手に対応しています。ところが朝日は安倍総理には反論しません。どこまで藪蛇になるかわからないからです。 マスコミの皆さんには、自分たちがやっていること、たくさん嘘を言ってきたんだという問題に直面してもらうのが先です。モラルの問題ですよ。開き直ったり言い訳をしないで、まずファクトベースにたつことと。ファクトとオピニオンをきちっと分ければいいんです。それらが混在している中でストーリーを作るような報道を続けるのがいけないんです。ファクトはファクト。オピニオンはオピニオン。

朝日は朝日で意見を持つのはいいんです。「ファクトはこうで、安倍はこう述べた。そして朝日はこう考える。キャンペーンをはるからそのつもりでいてね」そのうえで国民が何を選ぶか。朝日を選ばないで安倍を選んだら、それはそれ。自分たちの社論をもっと、説得力のあるところまで磨けばいいじゃありませんか。 今、朝日は朝日で引き裂かれています。高齢の読者たちと新しい世代とで。朝日が今更新しい社論に進化しようとすると、朝日を長年支え続けてきたコア層が購読をやめてしまうから。どんどん現実と朝日の社論がかい離し続けている。

 

──公平性がメディアからなくなった場合に訪れるであろう民主主義の危機とは?

 

森友・加計スキャンダルのようなことを許すということで何が起こるか。

ファクトに基づかないで政権を転覆させようとすることは、政治活動です。たまたま大きなマイクを既得権によって持っていたから、やったと。今の法律ではこれを防げない。信用ある大新聞が、嘘によって政権を転覆させるということはしないに決まっているという前提が日本の社会にあるからです。

日本の社会にはたくさんの脆弱性があります。ミサイルが飛んでくるはずがない、だから避難場所を作っていない、だから避難訓練をしてもパニックになるから訓練もできません。原発も電化のインフラも全部そう。想定していない脆弱性がたくさんあるんですね。メディアの暴走も想定していない脆弱性なんです。

政権をデマで潰すということを一度許すと、先例になる。やってもOKだし、法規制がないから最後は逃げ切れるという今の状況は危険です。

安倍政権のときでさえ逃げ切れた。ならばもっと気の弱い、もっと支持基盤の弱い政権に変わったときは……より簡単にマスコミ主導のでたらめな政権つぶしが可能になってしまいます。

そういった日本の脆弱性に誰が目を付けますか。中国でしょう。私が中国の上層部だったら日本社会をコントロールすることを意図します。というか日新聞はすでに連動しているのではないかな。

尖閣諸島の接続水域に初めて中国の海軍潜水艦が入った事件が先日ありました。産経、毎日、読売はトップニュースで報じているのに、朝日だけは……。全然違うことを取り上げてる。

 

 

 

 

──危機が迫っているのに、緊張感のない状態で報道されている事件もありますね。

 

北朝鮮のミサイルについても、米朝の緊張がどんどん高まっていった時期に、総理が国会で北朝鮮のサリン弾頭装着について指摘をしました。すると朝日は『北の話をして森友隠し』と書いた。

頭がおかしい。確信犯ですね。情報を隠す。私が言っているのは、こういったことを一度でも許してはいけないということ。情報工作を許してはいけない。

もしこんな工作的なメディアの状況を放置したまま、いずれ親中政権というより媚中政権へ後退する時代が到来したら……、呼応しますよ。メディアと政権とが。呼応したとき、私たち民間では何もできない。そんな弾圧社会が来ることを今のうちから覚悟しないといけない。日本社会の自由というものを守るのは今なのです。

保守を含めて危機感がないんです。今のまま放置したら、私は逮捕、拷問、殺害される時代がきかねないと思っている。なぜなら日本人は立ち上がらないから。ただ見ている。「ヘンだよね~、ホントにヘンだね。……黙っておこう」となっちゃう。

自由社会は自分たちで、声を上げ、戦って守るんです。

私はヨーロッパのフランス革命は評価しないけれど、少なくとも彼らは自由という以上、闘って守るものだという意識をきちんと持っている

日本はどうでしょう。言論弾圧ともいえる私の裁判、誰か自分の問題と感じて闘ってくれているのかな?

 

──かなり危うい状況ですね。

 

安定した社会の中でネット世代がだんだん広まり、朝日的なるものが衰退化していくという人がたくさんいます。20年くらいの間に言論状況がまともになっていく、とね。でも中国の謀略は待ってはくれませんよ。

日米安保の時代は急速に終わりを告げ始めている。アメリカが日本の主権を守るという時代は終わりつつある。中国が世界の覇権をアメリカと二分するという状況を、世界中が容認している。

「中国社会は崩壊する」なんて主張しているのは、日本の保守派だけですよ。中国崩壊論は世界的に見て例外です。

中国の台頭の中、今、非常に危惧されるのが日本で知識人層が解体されてしまっていることです。強烈に学問をするということがなくなっているでしょう。学問の意味がちょっと違うけど、中国や中東、東南アジアの若い人たちは、強烈な知的エネルギーを持っています。

 

 

 

 

──海外と比較すると、それは如実でしょうか。

 

圧倒的に低いです。中国の若い人たちのエネルギーは物凄い。日本は習近平(中国の政治家。2013年より第7代中華人民共和国主席、第4代中華人民共和国中央軍事委員会主席を務める)の分析ばっかりしているけど、たとえ彼一人が暗殺されても、中国の国力発展は止まらない。国民の充実度が違います。

中国からすれば、「米中覇権」というのはドリームなんです。日本の学者や言論人の一番悪いところは自分たちがドリームを持っていないこと。だからいくら分析力はあっても、中国人のドリームを理解できない。ドリームは努力や実力が伴えば、やがてリアルになるということがわからない。

「ドリームを描けなければ負ける」ということをわからなければいけない。

日本人も、自分たちを守るためだけでもすごいエネルギーがないといけません。このままでは中国に抵抗できません。普通にいままで通りでやっていると、守る前に、終わっちゃう。 ウイグルや香港、チベットで起こっていることが、日本で起こり得るんです。「断固として日本は自由社会を守ります」ということを主張し、自分たちでそれを守る行動をし続けないといけません。立ち上がるのは今です。

 

 

情報社会の充実は、国民の充実とリンクする。その原動力となるのが、我々ひとりひとりの知的エネルギーだ。「事実を知りたい――」些細な疑問でもいい。そこから立ち上がり、声を上げる。今、求められているのはそういうことかもしれない。

マスメディアの構造からこれからの日本の危機まで、幅広い視点からなされる考察がたいへん刺激的でした。小川榮太郎さん、ありがとうございました。

 

 

写真:田形千紘   文:鈴木舞

 

 

 

 

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編集・構成 MOC(モック)編集部
人生100年時代を生きる、
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PROFILE

小川 榮太郎

文藝評論家。一般社団法人日本平和学研究所理事長、放送法遵守を求める視聴者の会呼びかけ人。昭和42(1967)年生まれ。大阪大学文学部卒業、埼玉大学院修了。専門は近代日本文學、十九世紀ドイツ音楽。著書に『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)、『最後の勝機(チャンス)』(PHP研究所)、保守の原点――「保守」が日本を救う』(共著:宮崎正弘、海竜社)、『一気に読める戦争の昭和史』(KKベストセラーズ)、『小林秀雄の後の二十一章』(幻冬舎)、『テレビ局はなぜ「放送法」を守らないのか ―民主主義の意味を問う』(共著:上念司、KKベストセラーズ)、『天皇の平和 九条の平和――安倍時代の論点』(産経新聞出版)など。

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