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小川榮太郎氏インタビュー【第1回】 人生100年時代の今、日本の“知的ヒエラルキー”が揺らいでいる。マスコミの信頼度を左右するものとは?

 

 

現代日本における報道の在り方に、真っ向から挑んでいる人間がいる。舌鋒鋭く朝日新聞を追求する姿が記憶に新しい文芸評論家・小川榮太郎氏だ。フェイクニュース、デマの拡散、メディアの偏った報道。今日を取り巻く情報社会の構造から人生100年時代を生きていくために日本人が獲得すべき知力まで、三回にわたるインタビューでたっぷりと論じていただきました。第一回目は森友・加計問題をいちから丁寧に検証していきます!

 

 

──著作『徹底検証「森友・加計事件」--朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪(小川榮太郎著、飛鳥新社、2017年発行)』で小川さんは、一連の出来事に関する朝日新聞の報道を”ねつ造”であると断じています。この著書を執筆するに至った経緯とは?

 

この問題について、私にインタビューを依頼する方々がたくさんいるんですけれども、朝日新聞社の社長にもインタビューすればいいのに(笑)。

 

──う~ん(笑)。……そういった記事は見たことがないですね。

 

ですよね。一度も、朝日の社長のインタビューを見たことがないんです。出てこない。

私がこの本で書いた事実というのは、2017年2月からの森友スキャンダルと、5月からの加計スキャンダルのことです。この二つのスキャンダルは、どちらも朝日のスクープから始まった。

最終的には7月までで、500本近くの記事を朝日新聞は書きました。これによって安倍政権の支持率は落ちた。スクープ前は大体60%前後がアベレージだったものが、30%を切った。25から30ポイントも落ちたのです。

本当に問題があるのであれば支持率は落ちるわけだし、政権は批判されるべきです。ですが、安倍政権は5年に及ぶ長期政権。支持率は50%以上を堅調に保持してきたというのは、日本の政治史ではまれなんですね。日本の国民が基本的に信任している政権ということです。そういった政権を、メディアが数か月にわたるスキャンダルで追い込んだとすれば、当然スキャンダルが本当でなければなりません。

ここでひとつ、「マスコミの信頼度」について諸外国との比較を検討しましょう。マスコミの信頼度は、日本と諸外国とでは大きく異なります。日本国民のマスコミへの信頼度は非常に高いんです。全体主義国家や後進国のマスコミの信頼度とほぼ同じです。70%の国民がマスコミを信じている。

では先進国はどうか。例えばアメリカは20%台の後半。ドイツ、フランスで30%台前半。イギリスに至っては15%くらい。日本はその3~4倍でしょう。そのマスコミが嘘の報道で政権支持率を下げたとしたらどうでしょうか。

日本の内閣平均支持率は、30%後半なんです。平均的な政権が、その支持率を30ポイント下げたとしたら、その内閣は潰れてしまいますね。正当な理由が合って、正当なスキャンダルがあって、正当な報道によって政権が潰れたなら、それは当然です。

しかし、私が朝日新聞の一連の報道を見ても、何が問題なのか全然わからなかった。テレビをつけても、新聞を読んでもわからなかった。

 

 

 

 

──報道から得られるものがなかった?

 

だから、「これはおかしいな」と。非常に不可解でした。もちろん朝日が安倍叩きをしようとしていることはわかっていました。が、どれだけ根拠があってやっているのか。

6月の終わりくらいかな。支持率がガタガタっと下がり始めて、これは「放っておいたらマズい」

と危機を感じたんです。なんだかよくわからない話でこんなに支持率を下げられるのは異常な話です。ドキュメンタリーを書こうと思い立ち、期間内の朝日の新聞記事をすべて取り寄せました。ネットですべて集められますよね、今の時代。それと紙の資料とを突き合わせて読み込んだんです。

研究所の所員と一緒に、読み込みから始めました。びっくりしたのが、いくら読んでもわからないということ。記事をずーっと読んでも、行き着くのは、「で、何が問題なんだろう?」というところ。

朝日の記事に『政権、また窮地』と見出しがあっても、「な~にが窮地なんだろう?」とかね。『疑惑解明ほど遠く』ってあるんだけど、「え~と……疑惑ってそもそもなんだろう」と。記事本文を読んでみても、見出しの説明になっていなかい。読んでも読んでもわからない。研究員と読み込みをしながら、「わかんないね、ストーリが取れないじゃない全然」って首を傾げました。

でも、わかったんです。国会の議事録を読んだらわかった、森友に至っては初日の分で話がほとんどわかるってくらい、この一連の出来事は簡単な話だったんです。

 

──5か月に及ぶ一連の報道、しかも疑惑・いわく付きのように思えた事件が、実は簡単なお話だった……、ということでしょうか?

 

まず、森友学園のスキャンダルの話からですね。

あれは近畿財務局と大阪府の教育課の間の話です。教育課から諮問を受けている教育審議会。渦中の土地をもともと保有していたのが大阪の航空局という国土交通省の出先機関です。

そして、役所と籠池夫妻のやりとりで土地の値段が下がったという話です。このことは最初の段階で国会は把握しています。それなのに、朝日はその一番肝心な部分は書かないかった。だから何が問題かわからない、だけどずっと問題であると言う、いつのまにか話は籠池夫妻の不思議なキャラクターだとか昭恵夫人(安倍首相の夫人)がいかにいろんな人と付き合っていたかとか、わけのわかんない話になっていきました。

いまだに(2018年2月上旬)昭恵夫人のことがニュースになるじゃない(苦笑)。おかしいよね。

昨日の国会で、安倍総理がこのことで野党の議員からこういわれていました。「昭恵夫人はこの事件について『私にもよくわからないから、私こそ説明してほしい』と言っていた。奥さんがこんな無責任なこと言ってますよ! 総理、どう思いますか」。安倍総理は、朝日新聞が嘘の報道をしているのだと何度も説明している。こんなもの(虚報)を認めてしまったら、それは誹謗中傷されることを認めるということになるのだ、と。(朝日の報道は)報道の品質に達していない、と。

内閣総理大臣の国会答弁というのは、議事録に残るんです。一新聞社のことを総理自身が非難するというのは通常ありえない。例えばですよ、トヨタとか東芝の問題が国会であがり、総理が強い口調で企業を非難したとしたら、これは相当な事態になります。安倍総理はそれほど朝日新聞に対して厳しい姿勢をとったんです。

だから私にしたのと同じように、朝日新聞は総理を訴えるのかな(笑)?今、私は朝日の動向を注意して見守っているんです。これで朝日が総理訴えたら、私と安倍総理が被告人。裁判で総理と僕が被告人席に並んだら面白いかなあ(笑)。

 

 

 

 

──小川さんと安倍総理、立場は違えど朝日に対する主張には共通点があるようですね。

 

根拠があるのかないのか。実態をちゃんと調べて報道したのかどうか。というのが私がこの問題を精査しはじめた動機でした。

実際に新聞をいくら読んでも事件がまったくわからなかったので、議事録や関係者の証言をつなぎあわせていった。そうすると、森友事件はこういう問題だな、土地を巡る地方の役場の問題だなというのが見えてきた。一種のいわくつきの土地ですよ。部落に近いという問題と、騒音の問題。それから籠池夫妻の特異なキャラクター。あの手の人にしょっちゅう詰め寄られては、役人はやはり困る。

今度出版する対談本があるのですが、そこでも話に上がったんですが、ヤクザが国有地の真ん中に寝っころがって「この土地はおれのもんだ」と始めたとします。では、その土地の価値をどう見るか。その土地には家がすでに建っているとみなし、嘘の価格で土地の値段を算定するということがあるんだそうです。

こういった地方ごとの”闇”はたくさんあるんです。そのなかでいくと籠池夫妻の話は、かなり “かわいい闇”(笑)。籠池夫妻と地方役場のプチなレベルの闇の話なんですよ。

 

──かわいくない闇の方も気になりますが……、加計学園の概要はどのようなものでしょうか。

 

加計の方では一切なにもないんです。前川喜平さんが、彼だけの思い込みで突っ走った滑稽な話。

大体、前川さん自身は総理の意向を聞いていないし、自分で確かめたこともないのです。一方、政治家側のトップ文科大臣が松野博一さん(2016年8月に文科大臣に任命され、2017年8月の内閣改造で退任)、副大臣が義家弘介さん(2015年10月に就任)です。松野さんは自民党において「清和会」に所属しており、安倍総理とは友人です。義家さんは安倍さんの子飼いです。二人とも必要があれば安倍さんから直通電話ですぐ話が繋がる、ツーカーの仲の人なんじゃないかな。

ところが文科省文書を見ると松野さんも義家さんも総理の意向を聞いていないことがはっきりわかる。 前川さんは「(加計学園に関する決定は)総理の意向だ」と今でも言ってるのかな。どうかしているとしか思えない。

どういう事実が発生していたかは文科省文書を読めばわかります。義家副大臣が「内閣府が何か言っている、確認してこい」と(自分のところの)課長に指示しているんです。「文科省には文科省のスジがあるからね」と義家さんが主張しているわけ。総理の意向なんて聞いていないのはどう見ても明らかです。普通の意味でスジ通りに動きなさい、という指示をしているだけ。

総理は意向を腹心の政治家2人に伝えていない。じゃあ、「総理の意向」って誰の言葉なの? という話になる。

今回、朝日が「総理のご意向」文書として大騒ぎした「文科省文書」とは、文科省の課長クラスの人が作成したものと考えられます。そしてその言葉を言ったのは内閣府の藤原豊審議官です。 (審議官という役職は)前川さんから見ても7階級くらい低いんです。総理から見ると7階級どころじゃない。つまりですね、この藤原さんが総理の意向を知ることはできないんです。そしてそのことをみんなは知っているわけです。そういう言い回しって、民間の大企業でもあるでしょう?

「社長もこの案件頑張れって言ってんだ。お前わかってる?」

こんな風なことを、課長が平社員に言ったとして、誰も、課長が実際は社長の意向を聞いていないことはわかっているようなものなんですよ。

加計学園の獣医学部新設を阻んでいたのが岩盤規制ですが、国家戦略特区制度によって岩盤規制を撤廃しようという一般論が「総理の意向」なのです。

 

 

 

 

──そのうえで発表された朝日新聞の報道とは。

 

加計の場合は前川さんという前・文科事務次官の証言をとる、あるいは文科省文書というのが出てきたぞ、と朝日新聞は報道したわけですね。かなり有名にもなりましたが、文書に黒枠を付けて発表した『新学部「総理の意向」』という見出しのトップ記事が出たのでした。

私もこの記事を調べましたが、総理の意向で決まったようには思えない。そうして、ある程度調べてからびっくりしたんです。朝日新聞がスクープをしたと称する文科省文書の全文を、朝日新聞は一度も報道していないということがわかったからです。私はその文書をすぐ入手しました。ネットでもすぐ手に入るんですよ。たった600字程度の文書です。600字の文書を総理疑惑としてスクープしたのに、一度もその全文を報じていない。

これ、全文を報じて初めてスクープと言えるでしょ、それがスクープの責任でしょ。そこを幾ら指摘しても、朝日は現在に至るまで報じていないんです。 なぜ文書全体を朝日新聞は報じないのか。全文を報じると解説をしなければいけない。すると、この文書は「総理の意向」と関係なく、文科省、内閣府の現場が正常に動いていたことを立証する材料にしかならない。

そういうことがわかってしまう。

ですが朝日新聞は、「総理の意向」という一言が書いてある。そのことはファクトだ」と主張している。

いやいや、そんなこと言ったらね。「僕(小川)は殺人をしたことを絶対に認めない」という文章のなかの一部を切りとって、『僕(小川)は殺人をした』と見出しにするのと同じですよ。

いわば文書とか証言とか、事実全体を妥当に浮かび上がらせるという常識的な報道と、朝日新聞の報道は極端に乖離していたと言わざるを得ない。

 

──小川さんは事実の積み重ねてることを執筆のモットーとしていますね。現在、小川さんと朝日は対立関係にあるわけですが、朝日の抗議の論点はどこにあるのでしょう。

 

朝日のスキャンダルを報じた記事を読んでもポイントがわからなかったように、朝日の訴状を読んでも何を訴えたいのかわからないんですよ。もう、ひっどい訴状!

また、何か攻撃されるかもしれないけど、オウム真理教現象なのではないだろうかと感じています。学歴エリートがひとつの共同体に入っていく。共同体の中にいるとお互いがエリートだという意識があって、途轍もない異常な事でも自分達こそ正常だ、正義だと信じ込んでしまう。そしてほかの奴らが馬鹿に見えるようになる。今の朝日にそうした閉鎖エリートの異常性を私は感じています。

申し入れや訴状についても、世間で朝日は笑われてしまっているんですよ。例えば、、『安倍叩きは朝日の社是』という私の記述に対して、朝日が「安倍叩きは朝日新聞の社是とあるが、本社の社是であった事実はありません」という抗議を出した……。あのね、世の中で誰も朝日の社長室に「安倍叩き!」という社是を貼りだしているだなんて思ってるわけないんだよね。こういうギャグみたいなことを、平気で申し入れ書に書いてしまっている。

朝日がですよ? 日本を代表するメディアだというのに。私は産経新聞で一番書いているし、信頼しているメディアだけれど、世界に通用しているとは言えない。読売新聞だって部数は一番多いけれど、読売が日本の論調だという風には世界に認識されてはいない。国内では保守やネトウヨから散々叩かれているけれど、日本の代表的なメディアは今でも依然としてNHKと朝日新聞なんですよ。

 

 

 

 

──その2強の力は圧倒的ですか。

これは戦後ずっとそうです。彼らがそれに相応しいかというと、文化報道では確かにそう言える。しかし政治報道はひどいと私は思う。ですが、世界としてはそういう認識なんです。

世界的な大国である日本を代表する朝日新聞がね、自分でギャグを演じている。嘆かわしい落ちぶれ方ではありませんか。

高山正之(ジャーナリスト、コラムニスト。『週刊新潮』で「変見自在」を連載中。他連載多数)さんというジャーナリストがいらっしゃいます。彼にも朝日から抗議文が来てね。高山さんが『朝日は一生懸命安倍叩きをして記事を書いていれば、安倍政権を呪詛できると思い込んでいるかのようだ』と書いたところ、抗議書で「朝日新聞は安倍氏を呪詛した事実はありません」ときた。

個人間のやり取りでもそういう言いがかりをつけられたら「あ、この人と付き合うのやめよう」と思いませんか? その申入書は産経新聞宛に来たらしんだけど、産経の皆さんは抱腹絶倒だったらしい(笑)。真面目な顔して呪詛していませんって……。夜中に藁人形に釘でも打ってるとでも思ったというのかと。

オウム真理教現象といったのは、自分たちがやっていることが社会的に見てものすごく笑われることなんだという感覚の欠如のことです。そういった感覚があったらこんな書き方にはならないはず。申し入れ書を朝日の広報部が書いたとしても、それを取締役クラスが見て「うちの会社に泥を塗るつもりか」と止めればいい。しかし誰ひとりとして止めずに表に出してしまっている。そこが怖い。

 

──監視役が機能していないのでしょうか。

 

制度の問題じゃないですよ、ここまでくると。社員の常識がぶっ壊れているということです。今回の私への訴訟は猶更そうです。

朝日新聞というのは、ものすごく文化的な権威なんです。『月刊Hanada』や雑誌『正論』が保守系のオピニオン誌ですが、発行部数は10万部もいっていない。こういうオピニオン誌は長年の知的な意味でのヒエラルキーの上をとっていない。いろいろな理由によってね。

先程言ったように、朝日新聞は日本のオピニオンの頂点を長年とってきた。そういう新聞社が、私のような一物書きの書いたものに訴訟を起こした。なぜか。私がが政治的に右寄りの人間だからです。マスコミ主流は今でも左優位だからみんな黙殺している。今回のことをを継続して報じてくれているのは産経新聞だけです。

あとは『月間Hanada』が一生懸命書いてくれているけど版元の飛鳥自身が訴えられています。

大手新聞社が一物書き相手に5千万の損害賠償請求を起こすというのは、日本の言論史の年表に残るくらいの大事件です。まったく例がない! それをどこも報じない。私が小物過ぎるからか。そういう問題ではありません。朝日が大物なんだから、非対称性だけでも、他の報道機関が話題にする値打ちはある。それが無視されている。皆さんにとって都合が悪いからではないか。

いろんな弁護士に相談してみました。揶揄気味に言われたのが、「朝日新聞は訴えられるのには慣れているけど、訴えるのには慣れていないから素人くさいね!訴状が!」というのが印象に残ってる(笑)。

朝日のような大企業が訴えを起こすなら、相当慎重でないといけないはずです。トヨタがもし一個人を訴えるとしたら相当気をつけるでしょう。これはよほど慎重にやらないと普通は叩かれますよ。個人を完全に抹殺することに等しいわけだから。ましてや朝日と私は同業でしょう。

トヨタの例でいえば、自分の下請けに当たるような人間に、高額の賠償請求なんかしたら完全な嫌がらせ、あるいは社会的にその個人を抹殺する行為に当たります。

私が右派じゃなれば、左翼の連中が周りに集まって「応援します!」と言ってくれるはず。メディアだって取材にくるはずです。ところがゼロ。そのくらい非対称的ですね。

5千万というない請求額は破格中の破格の金額でしょう。こうしたいわば記事や出版物への名誉棄損というのは100万円を超える賠償命令はあまり例がないんですよ。よほど悪質なデマを飛ばしたなら別だけど。100万くらいですよ、とれたとしても。ところが最初からそれがわかっているのに5千万という金額をふっかけてくる。 絵に描いたように圧力をかける金額です。 朝日の訴状の狙いは何か、論理は何か。端的にいうと、私が著書で「朝日新聞は森友・加計スキャンダルにおいてねつ造した、報道犯罪だ」と書いているけども、自分たちの報道はねつ造ではないというのが彼らの訴状の一番の主張点。訴状を見ると、「13の適示事実」というのが出てきます(朝日新聞社HPから全文閲覧可能)。適示事実というのは私の著書のなかで13か所が朝日に対する名誉棄損に該当する、ねつ造していないのにねつ造していると書かれているという点だそうです。

しかし、再三私は反論している。2月から7月にかけての朝日新聞の報道全体が、存在していない安倍疑惑、政権疑惑、実在していない疑惑を、あたかも実在しているかのように見せている。しかも5か月にわたって国民にそのように見せていたら、それは日本語で「ねつ造」というんです。

そうすると、本文から13か所くらい引っ張ってきて、「小川がこう書いているけど、ちょっと違うよ」と言われても、私は280ページくらいの本全体で朝日はねつ造しているんだと主張しているんだから、全体として自分たちはねつ造していないと反証しなくては、反論として成り立たない。

名誉棄損というのは普通は事実をめぐって争います。ところが、ねつ造というのは”評価”なんです。

 

 

 

 

──事実と評価の違いをしっかりと分けて考えなければいけない?

 

たとえば5千万を横領したという記述があったとします。ところが事実において5千万の横領など何もない。これは名誉棄損になりますから、取り消せ、賠償、あるいは回収しろというような訴訟が成立します。普通はこういう事実をめぐって明白な争いをするのが名誉棄損のケースです。 明白でかつ侮辱的な嘘ですね。

そうでなければ事は非常に難しくなる。形容の仕方が行き過ぎだとか、下品かどうかを争おうとすると、通常は裁判をしようと誰も思わないんです。もし本当に無礼で品のない行き過ぎた形容であれば、言った側の信用が社会的に落ちるのです。同時に、判決も難しくなります。言論の自由との関係において、極めて難しいのです。どこまでの形容が許されて、どこからが許されないかという線引きは言論の自由の幅となる。それを裁判所に判断を委ねるというのはね……。裁判所というのは国家権力ですから、国家権力が形容詞の使い方を決めていいのでしょうか。

私もネット空間でとてつもなく下品な言葉を浴びせられていますが、いちいち腹など立てない。そういう言葉をぶつけられても「お前黙れ」とかいちいち言いにいかない。ましてや裁判を起こさない。

これは形容詞の問題です。ところが私の本は下品な内容ではないのであって、下品なことは書いていない。

「これは白でか黒か」とか「5千万円を横領したかしないか」ではなくて、事実全体をどう評価するかという問題があるんです。

この評価という言葉にも2種類あるんです。たとえば「今日のごはんはおいしかった」「さほどおいしくなかった」評価が対立しますが、これは結論は出ない

そうではなくて、事実全体をどういう風に表現しますかという意味合いでの評価があるんです。私が朝日の報道をねつ造だと主張しているのはそういう意味合いにおいてです。その報道に安倍疑なるものがなかった。「悪魔の証明」という言葉を安倍総理はよく言いますね。何かが”ない”ということを証明することは絶対できません。従って、森友・加計スキャンダルで何が争点だったかかというと非常にシンプルです。

 

<森友学園スキャンダルにおけるシンプルな争点>

 ・森友学園建設における建設予定地の価格が、9億円から14千万円になった

 ・値下げはなぜ行われたのか

 ・値下げに安倍夫妻が関与しているのではないか、という疑惑

 

これら3点であって、「安倍夫妻が関与していた」と報道するならば、関与の物証が必要となります。かつ職務権限あるいはそれによる贈収賄の立件が必要となります。しかし、そのような物証は今日に至る一年の間に全く出てこない。

加計学園の場合も同様です。安倍総理と加計さんが友人であった。それだけ。友人だったという以外なにひとつ物証となり得るものが出てこない。朝日は「友人なんだからゴルフをしている間に話をしたんじゃないですか」と追いかけますが、だからなんなんですか。そこに違法な贈収賄、金品のやり取りがあって、その物証があって初めて、総理が職務上の不当な権限を用いたのかどうかということが争点になります。

両スキャンダルは全て疑惑を言い立てているだけ。これでは魔女狩りです。

エビデンスがない状態のまま、5か月間も「安倍政権疑惑」なる言葉を使い続けたわけです。これは実際に存在していない問題を、あたかもそこに存在しているかのよう国民に印象付けたということになる。なかった疑惑を作りあげたのであって、これを日本語では「ねつ造」と言うんです。それが私の主張です。

 

常識の欠如、閉じられたエリート層。今、マスメディアの内部でなにかの崩壊が進んでいるらしい。情報社会に構造問題は、我々国民を守ってくれる壁になるのか、それとも我々の前に立ちはだかる壁になるのか――

 

 

写真:田形千紘   文:鈴木舞

 

 

 

 

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小川榮太郎氏インタビュー第3回 未来のために、一度たりとも許してはいけないことがある。

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
人生100年時代を楽しむ、
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PROFILE

小川 榮太郎

文藝評論家。一般社団法人日本平和学研究所理事長、放送法遵守を求める視聴者の会呼びかけ人。昭和42(1967)年生まれ。大阪大学文学部卒業、埼玉大学院修了。専門は近代日本文學、十九世紀ドイツ音楽。著書に『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)、『最後の勝機(チャンス)』(PHP研究所)、保守の原点――「保守」が日本を救う』(共著:宮崎正弘、海竜社)、『一気に読める戦争の昭和史』(KKベストセラーズ)、『小林秀雄の後の二十一章』(幻冬舎)、『テレビ局はなぜ「放送法」を守らないのか ―民主主義の意味を問う』(共著:上念司、KKベストセラーズ)、『天皇の平和 九条の平和――安倍時代の論点』(産経新聞出版)など。

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