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華道家としての生きる道。お花のように美しい心根で成長していきたい。假屋崎省吾 氏 インタビュー【第1回】

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日本の伝統的芸術文化のひとつである華道。室町時代にまで遡るお花の文化を現代で牽引しているのが假屋崎省吾氏です。繊細かつ大胆な作風は花のみならず空間全体を優美に演出し、観るものを別世界に連れ出してくれます。妥協なく美を追い求めるその姿勢は、美輪明宏氏に「美をつむぎ出す手を持つ人」と評されるほど。2018年は假屋崎さんにとってのメモリアルイヤー。個展の開催を控え益々の輝きを放つ假屋崎さんに、お花の道で歩んできた日々、これからの展望をお聞きしました。

 

 

──今秋、10月から11月にかけて個展を開催されるのですね。10月20日からは茨城県の笠間稲荷神社で「假屋崎省吾の世界展」を開催。続いて西日本は福岡で11月8日から「假屋崎省吾の世界展―錦上添花―」で洗練された花と空間のコラボレーションを披露されるご予定。益々のご活躍ですが、今年は假屋崎さんにとって意味のある年になりそうですね。

 

はい。この個展は今年で60歳を迎える私の還暦祝いでもあるんです。12月17日で60歳になります! それからお花を始めて35周年という区切りの年でもあります。

 

──生命力あふれる美しい作品に心ゆくまで魅せられそうな個展、とても楽しみです。お花の道を極めていく假屋崎さんですが、大学生の頃に草月流でお花を習い始めて間もなく、その才能は注目を浴びるようになりました。若くして成功の階段を上っていらしたんですね。

 

成功、というのが自分ではわからないんです。手応えがないものですから。たしかに、いけばな教室に入門してから二回目の授業で、私がいけたお花を目にした家元に「面白いね」と声をかけていただきました。その頃から、器に花をいけるだけでは物足りなかったんです。テーブルを使ってみたり、空間全体で考えてみたり、花だけではない素材を試してみたり。今までにないことに挑戦していたら「あの子、どんな風に花をいけるんだろう」と周りの方々は気にしてくれたみたいでした。

そうしているうちに家元の仕事に携わらせてもらえるようになりました。家元の個展の会場構成など何から何までやらせていただいたんです。だけど不思議だったのは、どれだけ仕事をしても私の名前のクレジットがどこにも出ないこと。映画だったらエキストラやアシスタントの名前をエンドロールに出してくれることがあるでしょう。でも私の名前は一切どこにも出なかった。

 

 

 

 

──これから花の世界で生きていくという気持ちが強かった分、自分の名前を世間に早く知ってほしかったのでしょうか?

 

いいえ、それとは違うんです。仕事をしたからには自分の責任。他の誰でもないという意識からそうあるべきだと思いますし、今でもその考えに変わりはありません。ですから当時は「不思議な世界だなぁ」と感じていたんです。

お花の世界は美しいものを生み出します。けれど嫉妬やそねみもたしかにある業界なんです… お花を愛する方々の多くはいい人たちばかり。しかし一方で花のように心根もやさしく、美しく、とは限らない方もおりますし、組織はなおさらだったり… 一部の人間からはお花とは真逆なものを感じることがあるんです。

こういうことはどこの業界でもあるでしょう。政治なんて特にそうですね。選挙だと対抗馬が現れたら人間模様が渦巻き出します。お花やお茶など伝統文化にもそういう側面はありますし、会社もそうです。派閥やら対面やら……なんだかんだと尽きませんね。

 

 

 

 

──伝統文化では徒弟制の名残のようなものが人間関係に影響を与えているようなイメージがあります。もちろん良い面もあるのでしょうが、反対の影響も少なからず出てきてしまうのでしょうか。ということは假屋崎さん、荒波に揉まれながらここまで来たのですね。

 

いけばな教室に通いながら大学の卒業も間近という頃に、父が他界しました。そうして大学卒業後、一旦はアパレル会社に就職して三か月はそこで働いたのですが『これは自分の生きる道じゃないなぁ』と思い、見切りをつけて辞めたんです。

それからは今で言うフリーターのような生活が始まりました。マクドナルドで時給360円のアルバイトをしたり、スーパーで働いたり。そうして生活費を稼ぎつつお花の教室には通い続けていたんです。

自分の作品をいろいろ創っていた時期でもあります。創るだけではなく、画廊を訪れるようになったのもこの頃。銀座や神田に足を運んでは彫刻や絵画の世界に引き込まれていました。インスタレーションの個展を見に行くようにもなっていましたね。お花ではない素材を使った表現というのが、とっても面白くて魅力的だったんです。

画廊を訪れると、若い方から中堅の方までさまざまな人と交流する機会にも恵まれました。すると『私も何か発表したい』という気持ちが胸の奥からふつふつと湧いてきたんです。

ですから次々とやってみたいことにチャレンジしていきました。お花の教室で新しい作品をいけると、参加されている皆さんが「假屋崎さん、面白いことしてるねぇ!」と褒めてくれたのもすごくうれしかった。正のパワーをいただけたんだと思います。お花を愛する心の美しい人たちからのそういう言葉って、頑張る力になりますから。

 

 

 

 

──人からもらえる言葉は励みになりますよね。自分の内側から湧きおこる熱意と相まって大きな力になりそうです。

 

はい。『それなら個展をやってみようか』という気持ちにつながったんです。そこで壁となったのが費用の工面。個展のために画廊を貸し切ると、五十万から百万ほど必要となります。『時給360円のアルバイトじゃ、個展を開くのに何年かかるんだろう』そんな風に思い悩んでいると、母が銀行の袋をさっと渡してくれたんです。「省吾。これを使いなさい」と、父親の残した生命保険や退職金を私のために差し出してくれました。きっと老後の蓄えだったはず… ありがたいという気持ちと申し訳ないという想いが入り乱れましたが、そのお金をありがたく使わせてもらって個展を開いたんです。

それは父への親孝行の思いを込めて“土”をテーマにした個展でした。たとえば会場に土を敷き詰め、そこに水を張った水盤を用意して日本桜草を浮かべた作品などを展示しました。土は、園芸を趣味としていた父と母とのつながり。親孝行を何もできなかった罪滅ぼしじゃないけれど、そんな土をテーマにして何か創りたかったんです。土と苔を使って隆起をイメージした作品もありました。

 

 

 

 

──両親との絆を土に託して発表した作品は、草月出版新人賞を受賞。最新アートを発信する雑誌『美術手帖』からは「いけなばというより現代美術作品だ」と評されました。意外にも芸術の道にどっぷりではなく、企業への就職と退職、アルバイト生活を経験するなど遠回りをされてきたんですね。

 

アルバイトをしながら画廊に足を運び、さまざまな芸術家やその作品に触れたこともきっとインスピレーションになっていたんじゃないでしょうか。

最近では苔を使ってお花をいけることは当たり前になりましたけど、当時は苔や土をメインテーマにした作品はほとんどなかったんです。土って美しいでしょう? 新しいことへのチャレンジを批評家さんに評価していただいて、現代美術のインスタレーション且つ土を使う作家として扱われるようになりました。そこから企画展へと広がり、評判の声もいただくようになっていったんです。ディスプレイや空間構成としての店舗デザインもやらせていただけるようになりました。

「假屋崎省吾を起用したい」「あの人にお花を習いたい」という声が聞こえるようになったのは、本当にうれしいことでした。

 

──華道家の道を切り拓き、ますます仕事が面白くなっていたのでは?

 

やっと母親に親孝行ができると思い、世田谷区北沢に家を建てたんです。ところが引っ越しの前日に母は亡くなってしまいました。母のための家と思っていたのに……。その矢先のことでしたから、私はすっかりお先真っ暗な気持ちに沈んでしまったんです。

数か月経っても心は暗く沈んだまま。そんな状態で渋谷の街を歩いていたら、美輪明宏さんのコンサート会場に行き着いたんです。母が生前に美輪さんのことを「すごい方なんだよ」と言っていたのを思い出し、私のなかで大きな存在となっていきました。その時はコンサートを拝見することはできなかったんですけれど、後に美輪さんとのご縁が始まったんです。とても慈愛にあふれた方で、家にも何度も遊びに来ていただいています。

 

 

 

 

──このソファに! 美輪明宏さんが!! に、似合う……。

 

先日亡くなられた樹木希林さんにも来ていただいたことがあります。TBSのバラエティー番組の企画でしたけれど「假屋崎さんのお宅に遊びに行きたい!」と言っていただいたのが実現しました。安住さんと市原悦子さんもご一緒してくださって、地下2階から地上3階までくまなくすべての部屋をご覧いただきました。

樹木さんは部屋を見たあとに私のそばに来て「このおうち、お花ひとつで假屋崎さんが作ったのね。本当に頑張ったのね……」と声をかけてくださいました。

樹木さんはマネージャーをつけないで全部自分でお仕事されていました。前へ前へ目と向けて進んでいく、心根の優しい素敵な人でした。そして不動産が好きであちこちに足を運んでいたそうです。だから私の自宅も楽しんでいただけたようでした。木香薔薇が咲いているベランダで、みんなで笑いあったのを覚えています。

樹木さんはオノヨーコさんとも仲が良くって! 二人がいらしたときはツーショットを撮ってさしあげたんです。「假屋崎さん、撮ってちょうだい!」「ハイ! もうワンカット行きますよ~!」なんて。私、写真を撮るのけっこう上手なんです(笑)。とっても楽しい時間を一緒に過ごすことができたのを覚えています。

 

 

 

 

──素敵な人生の先輩方と交流を深め、何か気づきを得たことはありますか?

 

心根の優しい、慈愛に満ちた人というものは、この世の中で一番素晴らしいんだと年齢を重ねて一層強く思うようになりました。

美輪さんにはたくさんのことを教えていただいていますが、その中のひとつが「日光東照宮」というヒント。「見ざる聞かざる言わざる」です。そこにもうひとつプラスしたいのが「関わらざる」! 怪しい人間や心根の曲がった人間は、自分とは次元の違う関係ない世界にいるのだと思って、関わろうとしないこと。怪しい負のパワーが漂っているところには近づかないのがいいでしょうね。そうして自分が「こうだ」と思ったことには素直に突き進む。

それから過去のことにはしがみつかない。後ろを振り返っても、もう過ぎ去ったことしかありません。現在と未来だけを感じて生きる。その方が楽しいでしょう?

 

 

 

 

──2018年は個展も開催されますし、ほかにもまだまだ計画中のことがありそうな假屋崎さん。溌剌と輝いていらっしゃるのは、これからの未来に描いているものが多いからでは?

 

そうなんです! やりたいことがあり過ぎて時間が足りないんです。いろいろなことに挑戦しようとすると、お金もかかります。でもお金を使うと経済効果につながりますから、国のためになっているのでいいんです。税金もちゃんと納めていますし、ガラス張りの経営できちんとお仕事面での収支も管理しています。

何かを始めようとすると、元手は大なり小なりかかります。お金は出さなければ入ってきません。これも両親に教わったことです。父と母は一円の貯金もしない、限られたお給金で日々の生活を楽しむまっしぐらな人たちでした。美しい音楽や建築、美味しい食べ物などに喜びを感じ、そのためには必要なお金をきちんと使っていたんです。だから私は子供の頃から芸術に十分に触れることができたのだと思います。そうして得たものが血となり肉となり細胞となり……、今の私を培っているんです。

そういったものは、いわゆる先行投資ですよね。企業もそうでしょう。投資をして設備を整えたら、成功につながるんじゃないでしょうか。そこからお金を生み出していく。人生も一緒です。勉強も先行投資のひとつ。私が今、惜しげもなく美しいものを提供できるのは、両親の存在や画廊に通い詰めた日々があったから。そう思うんです。

 

 

 やるからには力を尽くす。そのために必要なものごとを学び、社会に還元する。假屋崎さんの人生はお花のように栄養を吸収し、成長を遂げ、美しく咲き誇り、そのパワーで世を照らし出しているようです。これからもその手で美しい世界をつむぎ出してくれることでしょう。次回インタビューでは、60歳を目前にしてエネルギッシュに活躍をする假屋崎さんの人生設計などについてお伺いします。

 

写真:田形千紘     文:鈴木舞

 

 

【假屋崎省吾氏 個展のお知らせ】

 

 

 

 

 

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編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

假屋崎 省吾

華道家。Kariyazaki Flower Professional Education School主宰。美輪明宏氏より「美をつむぎ出す手を持つ人」と評され、繊細かつ大胆な作風と独特の色彩感覚には定評がある。日本はもとより世界各地で日本伝統文化の「華道」を広める活動にも精励する。
クリントン元米大統領来日時や、天皇陛下御在位10年記念式典・花の総合プロデュース、能・狂言や舞台美術などを多数手掛ける。

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