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人生はプラスとマイナスの帳尻合わせ。悪いことがあればイイことも必ずある。假屋崎省吾 氏 インタビュー【第2回】

 

 

「花は心のビタミンです」を座右の銘に掲げ、花にも負けない生命力をみなぎらせている華道家・假屋崎省吾氏。今回の取材ではご自宅に伺わせていただきましたが、植物に誘われるようにして玄関に足を踏み入れると、エレガントな調度品や美しくいけられたお花が待ち構え、思わずため息をついてしまいそうでした。あと数か月で還暦を迎えるとは思えない假屋崎さんの若々しさにも驚きを隠せません。第二回インタビューではその若さの秘訣やお墓のことを考え始めた「終活」、お金にまつわる自身の経験から得た教訓などを教えていただきました。

 

 

──本当に見事なご自宅ですね。お花やインテリアもそうですが、それより気になるのは60歳には見えない假屋崎さんのお肌の艶。お顔もですが假屋崎さんにとって仕事道具でもある手もとっても綺麗……。一体どうすればそんなに若々しくいられるのでしょう。

 

男ですし、手入れは一切していないんです。化粧水もつけていません。テレビに出演してメークをしてもらっても、収録が終わった途端にゴシゴシメイクオフしちゃいます。

しいて言うなら、食べ物には気をつけています。十四、五年前に糖尿病を患ってから、食事には気を配るようになりました。糖尿病ですから全くの健康体とは言えないのですけれど、こうして今日も生きていられるのは食事のおかげ。一時期から比べると体重は20キロくらい減りました。糖尿病は生涯付き合っていくものですから、いかにして病気の進行を遅らせるかは重要なんです。

健康を考えるうえで意識したいのが、まず遺伝。父は59歳の若さで糖尿病で亡くなりました。そして母がパーキンソン病で他界したんです。両親どちらも病気が原因でした。子供である私にだって遺伝要因があったのに、そのことをすっかり忘れていました。私が糖尿病を発症した時期は、おかげさまで仕事がありすぎるくらい舞い込んでいました。ですから過労が溜まっていたのでしょう。それから加齢に睡眠不足にストレス、暴飲暴食と…。いろいろな要因がすべて重なって発病してしまったんです。

今は暴飲暴食をやめてお酒も飲まなくなりました。変わっていないのは過労と睡眠不足とストレス! 加齢は拍車をかけてますね(笑)。

 

 

 

 

──美肌で体型もスリムなので加齢を感じさせませんが、現役で活躍されているだけに疲れやストレスは付きものなのかもしれませんね。どんなことでストレス解消をされていますか?

 

ストレス解消はなかなかできていませんね。ピアノを弾いたり、先生に習いに行ったり、音楽会に出かけたりすると気持ちが安らぎます。

それと海外旅行には必ず行きます。仕事も含めて年に十回は海外に出ますし、国内を見て回るのも好きです。私は、飛行機が好きで、国内の空の旅というと一時間くらい?海外なら近場で4、5時間。遠出すれば10時間以上飛行機に乗っていられる。飛行機に乗っている間は、人とほとんど接触しなくて済むのが、正直ほっとするんです。打ち合わせの電話もかかってこないですしね。空の上では好きな時に食事をいただけて、寝られて、映画や音楽を思う存分楽しめる!快適な時間をゆったりと過ごす。これって一番のくつろぎの時間ですよね。皆さんは「10時間も飛行機に乗っているなんて、退屈」と嫌がるけれど、私は楽しいんです。

 

──お話ししている間とても笑顔がやさしい假屋崎さんですが、人と接して疲れを感じる時というと?

 

会う人の数が半端じゃなく多いからだと思います。展覧会では一日に何千人、多い日は一万人近くのご来客があります。サイン会を開催することもあるので、そうなると初めて会う人と言葉を交わすわけなので……。見に来ていただいてうれしいしパワーをもらえると同時に、疲れはやはりあるんです。

きっと誰でもそうでしょう。人からいただくエネルギーって、プラスになることもあれば、疲れちゃうこともあるんじゃないでしょうか。それに人生60年も歩んでいると、いろいろな人と出会うんです。そうそう、お墓を買おうとした時にはあまり人に恵まれなかったんです。

 

 

 

 

──お墓ですか? 人生の最期を迎えるための準備は「終活」と呼ばれ、生前整理やエンディングノート、お墓や葬儀の準備に取り組む人もいます。假屋崎さんも終活を始めていたんですね。

 

お墓のために土地を都内に買うことにしたんです。埼玉の狭山にいい場所があって、両親は二人一緒にそこで眠っています。ただし、なにせ遠いんです! やっぱりもう少し気軽に行けるところがいいと思ってお墓の場所を探しているんです。今って、お墓も以前より簡単に変えられますから。でも……業者さんってさまざまですね…

とある業者さんがやって来て「こういういい場所があるんです。どんな宗派でも大丈夫。それにお墓を好きな時に建てていいですよ」と言うから土地を買ったんです。そしたら購入した途端に「さぁ、お墓を建ててください! そのためには宗派を変えないといけません」と来たんです。話が全然違う!そういうことならお墓を建てるのはやめさせていただこうとしたんだけど、払ったお金をまったく返してくれなかったんです。それじゃ余りにもと思って内容証明を送ったら、あとから返金してもらえましたが… でもほかに泣き寝入りしている人がたくさんいるんじゃないでしょうか。

こういうトラブルって少なくないらしいですね。皆さんもサヨウナラの時に少しずつ近づいていると思いますが、自分や家族のお墓のこと、終活について考えてみるのもいいと思いますよ。

 

──お気をつけあそばせ! ですね。

 

今住んでいるこの自宅を建てるときも、ハウスメーカーとトラブルがありました。大手メーカーなら信頼できると思い込んでいたんですけど… 実は大手って自分たちでは仕事をしないんですね。下請けに仕事を任せておいて利益は抜いちゃう。関連会社をできる限り呼び寄せて、儲かりそうなところはくまなく儲かる仕組みを構築しているみたいです…

私、家にはこだわりがあったのでしっかりと打ち合わせを重ねていたんです。そこで床の大理石が大変だったんです。どの製品を使うかは品番からサイズまできちんと決めていたのに、いざ床に張りましょうという段階に来たら「あっ、発注していなかった!」と…寸法から何から当初の予定とは変わってしまい、やり直しになったんです。これは氷山の一角の話。建設中、何度も現場に足を運んだんですけど、びっくりすることの連続でした。

下請けのメーカー担当者も「おかしいとは思っていたんですけど言えなくて……」と打ち明けてきて。現場のハウスメーカー担当者がいる手前、口出しできなかったみたいでしたけど、そんな対応ではお客様が困るってものでしょう。

 

 

 

 

──プロフェッショナルとしての誇りがある假屋崎さんからすると、なおさら信じられない状況でしょうね。完成する前にご自身の目できちんと確認しに来なければ、もっと取り返しのつかないことになっていたかも……。異変に気付いて身を守るためにはどんなことをするのがよいのでしょう。

 

知識を得たり勉強することは必要じゃないでしょうか。でも難しいですよね。細かいところまで手が行き届くかというと… こちらは専門家ではないですからね。

世田谷区北沢に一軒目の家を建てたときは、とても親身になって話を聞いてくれる建築士さんにお願いできたんです。エドワード鈴木さんという方で、嘘偽りなくきちんと仕事をしていただきました。建材ひとつだって相見積を取ってくれましたし、細やかなところまで誠実に仕事をまっとうしていただいたんです。

大手企業だからといって信頼できるとは限らないものですね。手抜き工事だったり発注に問題があったり、欠陥住宅が大きなバッシングを受けた事件もたくさんありましたしね。

 

──自宅を建てる、または購入するというのはいつの時代も夢や目標とされていますが、自分ひとりの力ではなかなか手に入るものではありませんよね。大抵の人はメーカーや建築士に発注をすることが必須です。

 

相見積をきちんと取る、信頼できる人に相談する、現場に自分の足を運ぶ。こういうことはしておいた方がいいんじゃないでしょうか。メーカーさんも商売ですから吹っかけてくることもあるでしょうし、こちらがしっかりと正しい判断をしないと。

肩書や見た目が立派なようでいて、実は内面が真逆な人間は沢山います。そういう人のことを見抜く目を養わないと!なるべくそういう人には関わらないようにするのがいいでしょうね。よさそうに聞こえるウマい話を持ってきてくれたからといって、すぐに飛びついてしまうのは考えが足らないということです。

という私のところにも本当にいろいろな人が来るんです! 投資だとかなんだとか……。ただし、簡単に儲かるような話はきっとないんです。

 

 

 

 

──甘い投資の話には簡単には耳を貸さない假屋崎さんですが、素敵な家への憧れだったり芸術に存分に触れるなど、使いどころでは出し惜しみしない印象があります。

 

だから身を滅ぼさずに今まで生きてこられているんだと思います。お金だって有り余ってなんかいません。私がお金を使うのは先行投資のためです。今だって借金が残っていますから。家を建てることは先行投資でもあります。

現在はこういう家に住んでいますけど、初めはここに中古住宅があり購入して改装をして住んでいました。そうしたら隣の土地が売りに出たので購入して……と、少しずつ今の家に近づいていったんです。そのための資金を銀行から借りながら、自分でも一生懸命働いてという風に。お金を使うと『よし、働かなくちゃ』と思いますし、なんとかなるんですね。お金は出ていくものですけれど、そうしないと入ってもきません!

恵まれすぎるとぽ~っとしちゃいますしね。私は愛のあるそこそこ恵まれた家庭に育ちましたが、住まいには恵まれていなかったんです(笑)。家族みんなで住んでいたのは六畳間に四畳半、それからトイレと台所付きの都営住宅の借家でした。

だからこそ素敵な造りの家に憧れて、今の自宅ができたんです。子供の頃にそれなりの一軒家に住んでいたら、こういったこだわりのある家は建てていなかったかもしれませんね。

 

──幼い頃の憧れや先行投資が、夢の実現につながる。人生をロングスパンで考えて進んできたのが、假屋崎さんの生き方ですね。

 

美輪明宏さんからお聞きしたのですが「正負の法則」というものがあるんです。人生には必ずプラスとマイナスの両方があり、プラスだけでは人は生きていけません。帳尻が合うことで人生はうまくいくのです。必ず!どんな人にでも。私にとっての負は母の死、それから借金でしょうね。

それから、100じゃダメだと思うんです。目黒雅叙園の百段階段はご存知ですか? とても美しい装飾の百段階段は、本当は九十九段しかありません。ものごとは完璧ではなくて、「あともうちょっと」というところがいいのだと思います。

一番手、トップに立つのはすごく大変じゃないでしょうか。どんな業界でも二番手が最もいい! こういった考え方は日本のみならず世界中にありますよね。なぜならトップになった途端、天狗になってしまう人もいるでしょう。私はそうはなりたくないんです。あんまり謙虚過ぎるのもどうかと思いますけど、天狗は絶対にダメです!

 

 

長期的な見通しを持ち、人生の舵取りは自分の手でする。人生100年時代のしなやかな生き方を假屋崎さんの姿から学ぶことができました。終活のススメに自分の身の守り方など、華道家として身を立ててきた假屋崎さんのお言葉、心に響いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。次回インタビューでは多方面で活躍する假屋崎さんのアーティストとしての顔、経営者としての手腕について迫ります。

 

 

写真:田形千紘     文:鈴木舞

 

 

【假屋崎省吾氏 個展のお知らせ】

 

 

 

 

 

華道家としての生きる道。お花のように美しい心根で成長していきたい。假屋崎省吾 氏 インタビュー【第1回】

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

假屋崎 省吾

華道家。Kariyazaki Flower Professional Education School主宰。美輪明宏氏より「美をつむぎ出す手を持つ人」と評され、繊細かつ大胆な作風と独特の色彩感覚には定評がある。日本はもとより世界各地で日本伝統文化の「華道」を広める活動にも精励する。
クリントン元米大統領来日時や、天皇陛下御在位10年記念式典・花の総合プロデュース、能・狂言や舞台美術などを多数手掛ける。

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