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薬を使わない対人恐怖症へのケア。対話による治療が、長期にわたり確かな効果をもたらす。

 

 

宮崎大学 吉永尚紀 講師と千葉大学 清水栄司 教授らの研究グループは、 抗うつ薬で改善しない社交不安症(対人恐怖症)に対して、 認知行動療法が長期にわたり確かな効果をもたらすことを臨床試験により明らかにした。

成果は2019年5月23日付で、 欧州医学雑誌のPsychotherapy and Psychosomatics誌にてオンライン公開された。

Yoshinaga et al., 2019 [10.1159/000500108])。

 

 

 

 

本成果のキーポイント

社交不安症とは、 『人との交流場面で生じる著しい不安や恐怖』を主症状とする精神疾患で、 患者の多さと生活障害度の大きさを考えると重要な疾患。

また、 この疾患に関連した労働損失額は大きく、 各国の経済状況に与える負担は甚大といわれています。

抗うつ薬を用いた薬物療法は、 社交不安症に対する効果的な治療法として最も普及しています。 しかし、 一部の患者では十分な改善が得られないため、 次の有効な治療法を確立することが課題であった。

吉永講師らの研究グループは過去に、 抗うつ薬で改善しない社交不安症患者に対して、 認知行動療法が有効であることを報告。

Yoshinaga et al., 2016 [doi: 10.1159/000444221])。

しかし、 その効果が治療終了後も長期にわたって維持されるかは明らかになっていなかった。

 

 

研究グループは今回、抗うつ薬で改善しない社交不安症患者が、認知行動療法を受けることで顕著に症状が改善するだけでなく、その効果が治療終了1年後まで維持されることを明らかにした。

なお治療終了1年後の時点で、 認知行動療法を受けた21名の患者のうち85.7%(18名)が顕著な改善反応を示し、57.1%(12名)は社交不安症の診断がつかない程度(健常者と同程度)まで改善しました。

本成果は、 社交不安症の診療ガイドラインの改定など、 世界の標準治療に貢献しうる貴重なデータになることが期待される。

また吉永講師らの研究グループは現在、 英国オックスフォード大学と協働しながら、 英国と香港で有効性が実証されたインターネットを活用した治療プログラムの日本語版を開発している。

さらには、 認知行動療法で改善しない場合の、 次の有効な薬物療法や精神療法を確立することも今後の重要課題と考えられる。

 

 

社交不安症とは

社交不安症(対人恐怖症)は、『人との交流場面で生じる著しい不安や恐怖』を主症状とする精神疾患で あり、その不安や恐怖によって著しい苦痛が生じるだけでなく、日常生活上の様々な支障をきたしてしまい ます。

社交不安症は多くの人が抱えている一般的な精神疾患であり、児童・思春期に発症しやすい、自然に 症状が改善することは稀で慢性化しやすい、といった特徴もあります。

また、この疾患に関連する労働損失 額は国内だけでも年間で 1 兆円を超えるという推計データがあり、治療にかかる費用を含めると、各国の 経済状況に与える負担は甚大であるといわれています 。

 

研究の背景

抗うつ薬を用いた薬物療法は、社交不安症に対する効果的な治療法として世界的に最も普及しています。

しかし、一部の患者では抗うつ薬で十分な改善が得られないため、次の有効な治療法を確立することが課題 となっていました。

そこで吉永講師らの研究グループは過去に臨床試験を行い、抗うつ薬で改善しない社交不安症患者に対 して 16 週間(4 ヶ月間)の認知行動療法注 2 を実施すると、治療の前後で顕著に症状が改善することを報告 しました(Yoshinaga et al., 2016 [doi: 10.1159/000444221])。

しかし、抗うつ薬で改善しない社交不 安症患者が認知行動療法を受けた後(16 週以降)、その効果が長期的に維持されるかについては明らかにな っていませんでした。

 

今回の研究と主な知見

研究グループは今回、抗うつ薬で改善しない社交不安症患者が 16 週間の認知行動療法を受けた後、その 効果が治療終了 1 年後まで維持されているかフォローアップ調査を行いました。

対象患者 42 名は、『通常 治療のみを受ける群(通常治療群:21 名)』と『通常治療に認知行動療法を併用する群(認知行動療法群: 21 名)』)の 2 群に分けられ、認知行動療法は週 1 回 50~90 分の個人面接を計 16 回実施しました。16 週 が経過した時点で通常治療群は観察を終了しましたが、認知行動療法群では治療終了 1 年後まで経過観察 を続けました。

なお、16 週までに通常診療群のうち 1 名が研究から脱落し(理由:抑うつ症状の悪化)、経 過観察期間中には認知行動療法群のうち 3 名が脱落しています(理由:他県に引っ越した、これ以上治療を 受けたくない、仕事の都合がつかなくなった)。

結果として、認知行動療法群では介入期間中(16 週まで)に顕著な社交不安症状の改善を認め、さらに その効果は 1 年後まで維持されていました。

興味深いことに、認知行動療法を受けた患者の社交不安症状 は、治療を終えた直後よりも 1 年後の時点でさらに改善していました。

このことは、認知行動療法は短期的 な効果をもたらすが、その過程で得たスキルや学びが患者の日常生活に十分に取り入れられることで、さら なる改善に繋がることを意味します。

なお治療終了 1 年後の時点で、認知行動療法を受けた 21 名の患者の うち 85.7%(18 名)が明らかな改善反応を示し、57.1%(12 名)は社交不安症の診断がつかない程度(健 常者と同程度)にまで改善しました。

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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