人生100年時代を楽しむ、大人の生き方 Magazine

俳優・千葉真一氏「誇りを抱き、世界に示せ。素晴らしい日本人、ここに在り!」インタビュー第3回

 

 

目まぐるしく変遷を遂げる世の中において、後世に伝えるべきものがきっとある。活力が萎えて久しい日本はどんな道をすすむべきなのでしょう。現代に生きるサムライ・千葉真一氏の胸に去来する、これまでの日本、これからの日本とは――

 

 

――映画の製作体制がどんどん変わっていますが、昔との違いを体感されていますか?

 

違ってきているみたいですね。僕が俳優として育ったのは京都の撮影所。ああいうところで映画を作り続けなければ、昔ながらの素晴らしさが伝わらなくなります。

と言って古いものであればいいんだ、という意味ではありません。昔から伝わる伝統など大切なものを今の若者に伝えていくことが重要なのです。ただし、そういった伝える力を持った映画がなかなか製作されないのが実情で、僕はそれが寂しいんですよ。

東映よ、素晴らしい財産を持っている会社なんだ。いい俳優、いい裏方、いい財産を沢山持っているんだから、それを活用して次世代に伝えていきましょうよ。そのためにも、日本の時代劇が続いていかなければいけませんよね。これが僕の気持ち。

息子(新田真剣佑。1996-。千葉真一さんの息子。俳優)の映画を観ていると、今の時代に合った作品が製作されていることがわかります。漫画が原作の作品などね。一方で僕の世代からの観点や自分が置かれた立場からすると、違う感情が湧いてきます。

いやいやいや!もっと違った作品も作らなければ、そして後世に残さなければ、と思うのです。しかしながら、いざ作品を撮ろうと思ってもうまくいかないのが現状で、それが目下のストレスですねぇ!

 

 

 

――製作意欲に衰えなし。頭が下がります。俳優としてまだまだ精力的ですが、映画製作に欠かせない職人の技術力の保持も重要ですよね。

 

正にその通り。しかし職人が絶えつつある現状で、誰かがその技術を伝えていかなければいけない。だからこそ僕は伝える力のある作品を撮りたいんです。しかし製作資金がない状態ですね。

一番大きな原因は、金のかけ方がまるで違うことですから。アメリカや中国は資金に加えて時間もかけていますね。本格的な映画製作を比較した場合、その差は歴然。資金と時間が潤沢な国は、スタッフもしっかりと育てています。特に、自分の国の外に人材を送り出すことに力を入れている。

そうすることでいい監督が育つ。外国で勉強にいかせて帰ってこさせて自国で監督をさせる。中国はハリウッドと手を結んでしっかりとしたものを作ろうとしていますし、韓国映画界もそういう取組を始めています。これでは日本映画界は敵わない。

日本は資金を多く確保しなくても作品を作れたという流れがあります。日本人って器用なんです。そのおかげでお金がなくとも、器用さを活かして作れてしまう。しかし、お金も時間もないまま作ったものはそれなり……ということもあるんです。

例えばもっと音楽にお金をかける、時間をかけて曲を練る、いい音楽を作ろうという体制づくりに貪欲になっていい。ですがなかなかそんな風には事が運ばない。日本の映画製作の寂しいところですね。

 

 

 

 

――外国の映画業界は、日本よりも世界に対して開けているのでしょうか。

 

僕はアメリカなど外国に行って活動してもいますが、そういった寂しさやジレンマも日本を飛び出した理由のひとつです。海外志向といいますか、そこに学ぶものがあるんですよ。アメリカの映画祭に行きますし、中国もよく訪れています。世界を知らないと遅れをとってしまうから。

中国映画業界の勢いは凄い。ハリウッドと手を組んで自国の文化を世界に発信しています。日本もそうしようとしたことがありましたが、引き揚げてしまった。今や日本の配給網は東南アジアにしかないと言っていい。日本映画界の発展を考えると、これは非常にネックです。

中国がうまくいって、日本が手をこまねいている。なぜなのか。金銭的な問題かもしれないし、ほかにも様々な要因があったのでしょう。困難はつきまといますが、日本文化を世界に発信するという夢を僕はまだ捨てていません。

しかしこれからの日本映画界を引っ張っていく人物、それは僕ではないのです。僕にはもう「俺についてこい!」という力はない。今の時代にみんなを引っ張ていく力を持っている人材ですか。日本にも何人かいますが、アメリカや中国と渡り合っていける人材が求められます。

それと日本人としての誇りを持つことだね。僕はアメリカのパーティに呼ばれると、背広の上にサムライの羽織を欠かさない。すると「Oh~! You are Samurai!!」と歓迎されます。これは笑い話だけど、日本人の誇りを抱いて牽引していってほしいね。

 

 

 

 

――枠にはまらない活動をされている千葉さんらしいです。映画『戦国自衛隊』で千葉さんは主演でありアクション監督も務めました。映画における役割分担をどのように捉えていますか?

 

映画って映像です。どんな風に画を撮るかによって、まるっきり印象が変わるんです。そこでカメラマンと監督は夫婦の仲でなくちゃいけません。主役はその長男あるいは長女です。互いに分かり合っている関係性。それが映画製作の環境で重要なことです。

例えばあなたはカメラマンで、こんなシーンを撮ろうとしている。ある少年は自殺しようとしています。少年は自殺の直前に、自分の部屋を眺めながらぽつんと佇んでいる。カメラマンのあなたは何を撮りますか?

寂しさでしょうか?少年の心境でしょうか、或いはまったくを死の予感を感じさせないものを撮りますか?どんな画が撮れるかは、あなたの意図によって違ってくるんです。

もしもその映画のテーマに寂しさがないのであれば、寂しさを撮ってはいけません。寂しさのない画を撮らないためにはどうすればいいか。ライティングを工夫するのもひとつの手。そういった意図を考える段階では、俳優はそこにいなくていいんです。俳優が入ることで画はもっとよくなりますが、必要なのは監督とカメラマンの意図。それが俺の持論です。だから監督とカメラマンが夫婦だと考えています。

 

 

 

 

――ひとつのことに対してみんなが深く理解し合い、強い絆で結ばれているのが最高の現場という印象を受けました。

 

もう一つ加えるなら、照明も大切です。監督、カメラマン、照明が揃うと三兄弟。コントラストが微妙に違ければ、画はガラリと変わる。映像って奥が深いんですよ!

僕は俳優を長い間やってきたから、そういうことを覚えちゃった。レンズを向けられながら「今、何mmで撮ってる~?」と聞くんですよ。レンズが捉えている範囲がわかるんです。

カメラマンじゃないのになぜわかるかというと、撮影現場では周囲の動きを勉強することを心掛けてきましたから。そういったことを身に付けて、初めてわかることがあるんです。覚えたことを思い出し、再現し、いい作品に一緒に向かっていくことができる。

 

 

 

 

――ジャパニーズカルチャーのファンは世界中にいますから、力を合わせ、国を挙げて日本映画にもっと力を入れてほしいものですね。

 

僕が国に言いたいのは、「文化に税金をかけるな」ということ。宗教団体には無税なのに文化からは税金を取るんですか。映像作品はね、その国の文化や歴史を紡いでいるんです。その意義を認めてほしい。映画を通じて、日本の歴史や日本人像を伝えていくことができるんです。

それって国にとって非常に大事。製作者がお金や時間をかけていいものを作れる環境が必要なんです。中国はチャイナマネーをガソリンにして、どんどんハリウッドに入り込んでいる。それが僕は悔しいよ、悔しい!

このままでは日本でいい役者は生まれない。日本映画界がぬるま湯になっていると同時に、世の中が役者を抑えこんでしまっている。これは国レベルの問題になっていますよ。このままでは日本の映画事業が潰れますから。ようやく国が危機感を持って動き始めているのが現状です。

役者にとって息苦しい環境を変えていかないと。今の時代に高倉健さんのような俳優になりたいと口にしても「あんな古い俳優はダメ。時代が違うんだから」と、そんな理由で挫かれるのが今の日本映画界。……寂しい話です。僕はそういう環境に慣れちゃ駄目だぞと言い続けている。自分が今なにをすべきか、力をつけるためにはどうすべきかを考えろ。沢山の栄養を身に付けるべきなんだぞ。そんなことを伝えています。

今の若者には期待しているんだけど、例えば息子の真剣佑が一人前の俳優になって世界に出ていく頃には僕はこの世にいないでしょうね。その姿を見れないなんて本当に悔しいよ。日本映画が世界にもっと進出していくのをこの目で見たいね。

 

 

 

 

――千葉さんから見て、現代の政治家はどのように映りますか?サムライの心は政治の場にあるのでしょうか。

 

僕が現代の政治家にモノ申したいのは、(当時と)同じくらいの危機感を抱いて職務に当たってほしいということ。我々庶民の代表をしているんだから、命を張っている気概でいてほしい。「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり。」という信念のようなものを抱いてほしい。政治家たちよ、信念を持って俺たちの代表をやってくれと、そう願わずにはいられない。

僕は、『日本暗殺秘録(中島貞夫監督、笠原和夫・中島貞夫脚本、1969年公開)』という映画に出演したことがあります。日本の暗殺史を題材にした作品です。桜田門外の変による井伊直弼暗殺や二・二六事件など事件を辿っていく。幕末から昭和にかけてどのくらいの暗殺が日本で為されたか。驚きですよ!これほどの暗殺が過去に為されてきていたとは……。

日本人ってね、武士道の潔さをよしとしていますが、間違いを犯したら腹を切れという側面も持ち合わせている。このことが暗殺にも結び付いているのではないかと、僕は考えた。

現代において暗殺はほぼありません。だからこそ政治家は安穏としていられる。……なんてことを言ったら俺の命が危ないかもしれないね(笑)。

 

 

 

 

――自分の命を賭けてでも守りたい大切なものがあって、それを突き詰めていく人間がサムライでしょうか。

 

やはり山本常朝ですね。「侍とは死ぬことと見つけたり」。それから「花は桜木 人は武士」。僕はこれらの言葉が大好きです。

しかしいくら好きでも、サムライになりたい気持ちがあっても、僕はなりきれませんでした。なりきれない理由はわからないんです。なぜだろうと考えるとき、幼かった頃の記憶が思い出されます。親父が飛行機に乗っているのを見つめながら、親父の後を継いで空を飛び、たとえ死んでも悔いはないと思った瞬間が確かにあった。あれから長い年月が経ちましたが、僕は飛行機乗りにはならず、生きて、映画の仕事を続けてきました。

今まで「死」というものはどんなだろうと考えに考えたけれど、その答えまで僕は行き着いていない。武士道精神には切腹という側面があると話しましたが、僕は切腹を肯定しているわけではないんです。

「死」は一体なんだろう。そこに行き着くためには、どんなことを学べばいいのか、どんな教育をしたらいいのか。そういった精神を抱くためにはどのように生きたらいいのか、ということを考え続けているんです。

 

 

 

 

――人一倍歯がゆい思いをしているとのことですが、千葉さんはクエンティン・タランティーノ監督など、海外の映画業界から出演を依頼されてきました。肌で感じた外国の現場はどんなものでしょう。

 

アメリカでは僕が出演している作品が封切されていますね。ある時アメリカで、俳優のキアヌ・リーブスの稽古を見学する機会がありました。なんとキアヌが本物の銃を手にしている!流石に撃ち合いっこはしてないけど、本物の銃を撃っている。稽古でも本物を使っているんですよ。

スタントマンの出番は、あくまでキアヌが出来ないところ。「そこは頼むぞ」というやり取りを、キアヌとスタントマンが交わしている。そういう風景に触れて、世界は広いと痛感しました。

もし『戦国自衛隊』をアメリカと合同で製作したらどうなるか?ハッハッハ、面白いだろうなぁ!本物の航空母艦を使って全滅させたり、大迫力だろうね~。もちろん1979年の『戦国自衛隊(斎藤光正監督、千葉真一アクション監督)』も名画ですよ。戦国時代に自衛隊がタイムスリップするという発想がいいですよねぇ!なんといっても脚本がいい。

若者にはそういう過去の作品から何かを学びとってほしいね。僕は仲間たちと月に1回は集まって情報交換をしています。そこで得た意義あるものは、若者にどんどん伝えようと思っています。いい俳優たちにはいいものを伝えてあげなきゃいかん。それもひとつのサムライの在り方じゃないかな。僕は僕なりのサムライ道を進んでいきますよ。

 

――使命感を抱き、夢や目標を常に追いかけているとは。男から見ても格好いいですが、女性にからもさぞ?

 

女性にモテたってことはないなぁ。あのね、モテる秘訣なんてなんにもないよ!僕は僕なりに生きている、自然体です。人生のテーマは「ナチュラルであろう」。よりナチュラルに、自然体でいたい。演技もそう。勝手に撮ってよ、僕も勝手に動くから。そういうのがいいね。

大体さ、女性によく思われようなんて、くたびれるじゃない(笑)。そんなことを意識しだしたら、自然体で生きていけない。僕は僕でしかないんですよ。

 

 

 

 

――同じように、日本にもここにしかない素晴らしさがあるのでしょう。そのことを世界に伝えることが千葉さんの信念ですね。

 

誰かが何かをやり続けなければ、革命は起きません。僕は革命家でありたい。小さな一個人が革命を起こすには、何人ものさざれ石が必要です。無駄死にはしたくない。

僕は「千葉塾(せんばじゅく)」という、日本の文化と武士道を学ぶための場を開いています。世界に向けて日本の素晴らしい魂を伝えようという活動を始めたばかり。みんなで同じ目標を抱くき、ざれ石になろうじゃないか。そんな心意気です。

塾には若い子にもっと来てほしいんですよ。なぜなら千葉塾は人間としての成長をするための場ですから。若い子に興味を持ってもらうには、こちらが何かを作ったりやってみせてあげたりしなきゃいけないよね。なかなかそこまで出来ていないから、イライラしていますねぇ!

JAC(ジャパン・アクション・クラブ。1970年に千葉さんが創設したアクションスター・スタントマンの育成団体)の若手や真剣佑にもよく言うのですが、「お前はまだ20年しか生きていない。俺は70年分の映画を観て、70年分の作品を作ってきた。お前も少しでも多くの作品を観ろ。多くの本を読んでたくさん経験を積め。栄養を蓄えろ」。息子なりに僕が言わんとすることはわかっているらしく、映画を相当数観ているみたいです。いろいろと考えて、たくさんのことを感じている。それも素晴らしいことですよ。わかろうとすること、感じていること。そこから始まっていくんです。

 

 

 

 

――千葉さんの人生、これからも挑戦ですね。

 

そうですねぇ!新しいことへの挑戦が生きがいですし、僕は過去の栄光を振り返ったことがありません。そういう話をするのが一番嫌いなんですよ。いい歳をした我々なんかが酒を呑んで、「昔はよかった~」なんて振る舞うのは好きじゃあない。

昔がよくて今は駄目だって?それでどうした、嘆いてしょげて終わりなのか?「昔」をもう一度取り戻せばいいじゃないか!そのため大切なのは、「今」何をするかだろう。

昔は昔。いつもそういう気持ちを持っていますし、僕は若者に期待をしていますよ。そして我々の世代だって諦めなくていい。だからこそ過去にしがみついている奴は格好悪い。僕は1500本の映画をこ確かに撮ってきました。その事実はあるけれど、だからこそ「今」がある。財産なんです。財産を携えて次に進んでいこう!

過去に積み上げてきたことが、今の僕の財産になっている。親父が語った君が代の意味、オリンピックを目指した鍛錬、俳優としての一歩一歩、敬愛してやまないサムライたちとの出会い……。僕の財産はこんなにも豊かです。

その財産をみなさんに共有してもらうのが千葉塾であり、僕だからこそ語れるもの、日本だから誇れるものを知ってもらう場としているのです。世界に発信できる日本文化の素晴らしさ、規律や礼儀とは何たるか、武士道とは何ぞやなど、日本文化を改めて学ぶきっかけにしてほしい。千葉塾にはそんな志ある人が集っています。

さあ、未来に向けて何ができるか。日本人よ、みなさんよ、信念を抱いて前に進みましょう!

 

 歴史を重んじ、先達を敬う。それでいて未来を見据えて前に進む。日本の誇りを体現するサムライ・千葉真一ここに在り!そしてこれからの日本にもきっと、サムライは在り続けるのでしょう。その尊さを伝える人物と、受け取る人物がいるのだから。

 

 

写真:田形千紘     文:鈴木舞

 

 

 

 

 

千葉真一氏「歩め、サムライの道。誇れ、日本文化。武士道精神とはなんぞや」インタビュー第1回。

俳優・千葉真一氏、銀幕の向こうで見つけたサムライたちを偲ぶ。インタビュー第2回。

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
人生100年時代を生きる、
大人のためのマガジンMOC(モック)
Moment Of Choice-MOC.STYLE

 

PROFILE
千葉 真一

千葉 真一

国内外で1500本以上の作品に出演している日本を代表する国際俳優、監督のクエンテン・タランティーノ、俳優のサミエル・ジャクソン、キアヌ・リーブスといったハリウッドのトップスターも千葉にファンとして有名である。
国内外の映画界に多大な影響を与え続けている千葉真一の俳優魂は今も衰えることなく健在です。

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