人生100年時代を楽しむ、大人の生き方 Magazine

中村うさぎ氏インタビュー第3回 性的価値に捕らわれないという生存戦略 

 

 

これまで多くの経験を積んできた中村うさぎさん。お会いしたらぜひ聞いて欲しいみたいことがあった。女性にとって20代、30代、40代と年齢が上がるにつれて、処女であるということはなかなか口をつぐんでしまいがちなテーマだ。実際に中村さんに悩みを聞いてもらい、また中村さん自身の男性観についても語ってもらった。

 

 

悩む高齢処女が迷いから抜け出す方法

 

──私の周りに30歳を過ぎて、お付き合いをした経験も、もちろんSEXの経験もないため、自分が女性として未成熟で、普通ではないのではという不安を抱えている方がいます。

 

私は別に処女である事は未熟なことだと思いません。ただ、これから生きていく中で、男の人と100%絶対コミュニケーションを取っていくわけです。男の人の本性というか、彼らが普段は隠している部分を、恋愛とSEXを経て見ておかないと、男の人に対する理解ができないまま接してしていくという状況になるわけですね。男の人だって、たとえば自分の性的な問題とか、いろいろなコンプレックスを抱えて生きている、一個の人間なんですね。女性は恋愛とかSEXを通じて、男性の素顔を徐々に知っていくことによって、「あ、男の人ってこういうふうに考えるのか」と男性というものを学んで、共に生きていく知識を蓄えていくわけです。一生恋愛もしないし、付き合いもしない。男性なんて、一生行かない国に住んでいる人みたいに関係ないぐらいの割り切り方であったとしたら別に処女でも、恋愛経験が無くても問題なく生きていけると思いますが、ただ、男の人を知らずっていうのは、「体験」がないという意味以上に「知識」がないという意味で、日常生活を送る中で、男の人に驚かされることが多いのではないかと思います。

男性を知っていれば、「そういう男の人多いよね」と、そこまで驚かずにすみますから。そういった意味でも、知っておいた方がいいんじゃないかな、くらいに私は思いますけどね。

ただ、例えば私は子育ての経験がないので、子育てについては何も言えないけれど、同じようにそれぞれ人には体験をしていないから口出しができない分野があるというのは理解していた方がいいと思います。だから、恋愛とかセックスを知らなければ、その世界については口出ししないスタンスで生きていくというのもありですよ。だって、誰にでも苦手分野や体験していない分野が必ずあります。多くの人が体験しているけれど、自分だけ体験していないこともよくあると思います。

女性は、性的市場で男性から値札を付けられて、商品価値を見定められます。安値で買いたたかれる女もいれば、高値のブランド化された女もいます。男性から値札を付けられるのは仕方のないことだと思います。女性だって男性に値札を付けているから。見た目、収入やさまざまな価値観で、女性も皆思っているわけですよね。男女の間で値札を付け合いますが、それはあくまで相手にとっての性的商品価値であるわけです。でも自分は、性的なだけの存在だけじゃないでしょう?

いろいろな人が、いろいろな場所で、例えば仕事の面とかで、あなたに値札をつけてくれます。たとえ誰も値札をつけてくれなくても、自分が自分に値札をつけたりすることもできるわけです。「私はこれが得意」と。自分の付ける値札と、世間の付ける値札と、いくつか自分には値札があります。私たちはどうしても他人の付ける値札で傷ついてしまう側面があるので、値札は一つだけじゃないというふうに思わないと、一つの価値に縛られてしまうことになるので、少し生きるのが辛くなるだろうなと思います。だから苦手な市場から出て、戦わないという選択をするのもありだと思います。

 

 

 

 

中村うさぎさんにとって男の魅力とは?

  

──中村うさぎさんご自身の恋愛観についてお聞かせください。30代、40代の男女関係と、50代の男女関係は違ってきましたか?

 

私は正直に言って、好きな男の年齢が、自分と一緒に上がっていくタイプじゃないんですよ。大体30歳前後くらいで、男性のターゲットが止まってしまっているんです。

どんどん相手が年下になっていくわけですよね。40歳のときは、10歳くらいしか変わらないけれど、60歳になったら、相手とは30歳違いますから。もう親子くらいの年の差ですね。そのくらい年下だと、相手の経験値も少ないし、すごくびっくりするようなことを平気で言うから、あきれてしまうことも多いけれど、私も同じくらいの年齢の頃は、そんなふうにも考えていたのかも、と思います。若さは愚かさ、無知を含んでいるから、それも魅力の内ですね。同年代の50代の人と付き合ったことがないので、50代同士の付き合い方っていうのが、私の中ではなかなか想像がしにくいというのはあります。50代くらいの男友達はいるんですよ。でももしその人たちと恋愛関係になるとしたら、どうなるのかなって想像したら……う〜ん、なんの話をするんだろう(笑)。

深い話をしたいときは、むしろ友達のままの方が、ざっくばらんにいろいろなことを話せますし、距離感として私は心地良いですね。やっぱり40歳、50歳になると、何かしら人は経験してきた中から自分だけの人生哲学を持っているわけですよね。だから20代くらいの男性に人生哲学語られても、あまり聞く気にはなれません。正直、恋愛対象の相手にはあまり込み入った話はしないで、昨日何食べた?とか、たわいもない話をしている方が、私は楽なんです。

私は男の人の見た目ではなく、関係性とか、シチュエーション、相手とちょっとずつ近づいていく距離感の感じとか、どういうシチュエーションでHをするかみたいなことに、エロツボがあるみたいなんです。女の人には、多いと思いますが、関係性に欲情するんです。相手はもちろんイケメンであってほしいのはもちろんですが、そのイケメンの顔自体に欲情するわけではないのです。行為のプロセスのほうに欲情するという傾向があります。

 

 

 

 

40代の挑戦で感じた、男性が選ぶ女性像の真実

 

──中村さんは40代になって、整形やデリヘルに挑戦されました。何かきっかけがあったのでしょうか。

 

私は40代になってから若いホストにはまって、そのときにやっぱり自分の見た目が気になってくるんですね。一緒に街を歩いていても、親子と思われているんじゃなと。それなりに、相手に合わせて、整えなければいけないなと思ったんです。結局うまくいきませんでしたから。「おばさんはだめなのかな……」って悩みました。そういう経験を経て、仕事の対談で、タカナシクリニックの髙梨真教院長と対談をしたときに、整形の話で盛り上がって、「やってみます!」と、その場で決めました。実際に整形をしたら、周りから若返ったとか、きれいになったと褒められて、今度は私の商品価値を確かめたい、値札をつけてもらおうと思って、デリヘルをやってみました。

新人のデリヘルには、結構指名が入るという傾向があります。常連さんは目新しいものに目がいくから、新人が入ったと言ったら、「じゃあ、その子にしよう!」と。でも指名がある間に、リピーターをつかまないと、一見さんばかりだとどんどん指名がなくなっていきます。リピーターを、どれだけ多く持っているかというのが、強みになっていくわけです。私には一切リピーターが付きませんでした。整形して周りから見ても以前よりきれいになったと言われていたから、『デリヘルしたらお客さんからもモテモテになるんじゃないか』と、思ったけれど、全然モテなかったんです。それで整形施術を担当した髙梨院長に、「美人にしてもらっても、全然もてない」って言ったら、「あなたはモテるキャラじゃない、色気がない」って言われてしまって。色気というのが一体なんなのかというのは、なかなか理解しくいものでした。じゃあ巨乳にすれば色気がでるのかと思って、豊胸施術を受けたけれど、私に色気が出たと誰も言いませんでした。結局分かったのは、女性の内面から出てくるものが、色気に繋がっていて、その内面的な魅力が、デリヘルでリピーターを付けることに繋がっていくというのが、働いてみて分かってきました。美人でもつんつんしていたらリピーターはつかないけれど、逆にちょっと天然の女性は本当にモテるんですね。お客さんの言うことを「そうなんだ」って言って受け流して聞いてあげて、「お疲れさま」「私が癒やしてあげるね」というような柔らかい雰囲気の女性が喜ばれます。

結局、美醜は男性から見て女性の価値を非常に左右するけれど、男の人は、例え風俗でも美醜だけでは女性を決めないなということがよく分かった経験でした。風俗でそうなら、恋愛や結婚相手を選ぶ際はなおさらそうですよね。もちろん美醜は人の入り口だから、重要な要素ではありますけど、女性が美しいとは言えなくとも、その女性が持つ男性を引きつける内面的な魅力で最終的に男性は判断するんだなと、気付くことができた経験でした。

 

 

 

 

それでも、見た目で選んでしまう

 

──中村うさぎさんの好みのタイプを教えてください。

 

私は、自分の相手の年齢が、自分と一緒に上がっていくタイプじゃないんですよ。だから自分が30代になったら30代の人と付き合い、50代になったら50代の人と付き合う人が居ると思いますが、自分の年と相応の人と。私は、30前後くらいで、止まっているんです。

結局巨乳フェチの男の人は、内面がどうあろうと、巨乳じゃないとだめっていうじゃないですか。それと同じで、私は顔フェチで、こういう顔っていうのが、大体固定しているんです30を過ぎていても、そぐらいに見えればいいんです。

結構女の人は、男の人の見てくれよりも、知性であったり、話しの面白さであったりだとか、そういうことを求める人すごく多いですが、私は中身は全然いらないので (笑)おっぱいが大きければいい人と同じように、こういう顔だと全然OKみたいな。もうあとは本当に、もう漢字が読めなくても、全然気にならないし、1+1が3とか言っても、「そうなんだ」、みたいな感じで聞けます。あんまり深い会話をしないんですよ。深い会話をしたって意味もないし、深い会話をしようという気にならない。

ここはもう本当に、私のコンプレックスなのだと思うのですけど、知的なコンプレックスが強いから、自分より馬鹿だと安心できるんです。私より賢い友達は、いっぱいいるわけですよ。私の方がバカでも、「教えて、教えて」みたいな感じで、主導権争いにはならないじゃない。哲学なんか特に分かりやすく要約して説明してくれとか、そういうときに「私バカなんで」というのは全然平気なんですけどね。やっぱり恋愛ってなると、相手が自分よりものを知ってたり賢かったりすると、負けず嫌いが発動してしまうんですね。対等じゃないとイヤというか。むしろ自分の方が斜め上くらい(笑)。

だから好きなタイプは、コンプレックスを刺激されない相手です。多分、私より賢いっていうのが、一番私は嫌だと思います(笑)。

 

 

生死の境を彷徨ってなお、安定に浸らず、不透明な現代をさすらい続ける中村うさぎさん。やりたいことがあるならやってみようの精神で、手を咥えて見ているだけの生き方は選ばない。その姿が潔く、そして凛としていらっしゃいました。

ハッとさせられる言葉の数々、女性も男性も心地よい爽快感を感じたので社内でしょうか。中村うさぎさん、インタビューをありがとうございました。

 

写真:花盛友里  文:安藤記子

 

 

 

 

中村うさぎ氏 死線を越えて、本当にやりたかった「仕事」に向き合う 第1回

中村うさぎ氏インタビュー第2回 あなたが悩むあなたの“変”が、あなたそのもの

 

撮影場所:キリストンカフェ東京

https://www.dd-holdings.jp/shops/christoncafe/shinjyuku

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
人生100年時代を楽しむ、
大人の生き方マガジンMOC(モック)
Moment Of Choice-MOC.STYLE

 

PROFILE

中村 うさぎ

1958年生まれ。エッセイスト。福岡県出身。
同志社大学文学部英文学科卒業。
1991年ライトノベルでデビュー。
以降エッセイストとして、買い物依存症やホストクラブ通い、整形美容、デリヘル勤務などの体験を書く。

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