人生100年時代を楽しむ、大人の生き方 Magazine

脱・論理化社会でストレスを軽くしよう。ゆるやかな感情コントロールが、人生100年時代を楽に生きる秘訣!

 

 

会社でのストレスに悩んだとき、相談できる相手や解消方法を持っていますか?

一人で悩んでいる人は、夏目誠先生のアドバイスを聞いてみましょう。

ストレス点数チェック表を考案するなど、長年に渡り職場メンタルヘルスに携わってきた夏目先生は産業医歴40年超!

うつ病など心の不調と本音で向き合い、講演会や執筆などでも活躍してきました。

省庁、メーカー、IT企業などあらゆる業種で人を診てきた夏目先生だからわかる、これからのストレス社会の生き方を伺ってきました。

 

 

──脱工業化という社会変動が起きた結果、現代は中高年の男性にとって「生きづらい」という指摘は非常に面白いです(インタビュー前半より)。

これからの時代はどんな社会変動が待ち受けていますか?

 

社会変動を大きくするのは、少子高齢化です。

市場から見てもそうですね。

日本の人口が増えていけば国内市場でも商売は成り立ちます。

ところが人口は減り、お年寄りもお金を持っていない。つまり物が売れません。

海外市場に出ていかないといけなくなります。

しかし海外で勝負できる企業は限られています。

国内でリストラが頻繁なのは、モノが国内で売れないからです。

人を減らさなければいけなくなりました。

アングロサクソン勢の商売は大きく、国際市場を握っています。

国際競争で日本が辛くなるワケは、「一生懸命真面目にやっているといいところにいける」けれど、いきなりルールが変えられてしまうという点です。

アングロサクソンが突如ルールを変えますね。フィギュアスケートやスポーツもそうでしょう。

 

 

 

 

──金融などもそうですよね。

不良債権の格付けを一方的にされてしまい、結果的に日本企業は成長縮小をしなきゃいけなくなる……。

 

会計制度も四半期でしょう。

以前は一年でした。三か月ごとに経営者はびくびくしなければいけなくなりました。

すると短期的な視野でしか判断できなくなります。

昔は人も商品も「三年は様子を見よう」という余裕がありました。

今は四半期ごと、せいぜい半年か一年程度しか待ってくれません。

すぐに成果がわかるもでなければ、人も商品も採用しない企業ばかりになってしまいますね。

グローバルスタンダードは、アングロサクソンスタンダードと言い換えることができるでしょう。

日本は農耕民族です。アングロサクソンのやり方を取り入れようとしても、戸惑うのは当たり前ですよ

 

──国内市場が小さくなり内需低下。

海外に出ざるを得ない状況は大きいですが、簡単にはいきません。

どんな心の持ちようで、これからの社会に進んでいくのがいいでしょう。

 

「和をもって貴しをなす」はやめていいと思いますよ。

日本ではよく大人が子供に「ルールを守りなさい」というけれど、これからは「ルールは変わるものだ」と教えましょう。

「今のルールはこうなっている、けれどルールは変わるものです」と本当のことを伝えるんです。

 

──それは今までの教育になかった視点ですね。

 

ものごとはいろいろな解釈ができるということです。

「こういう見方ができるけど、別の角度からも見ましょうね」ということを教えてください。

表と裏があるなら、今は表からの見え方のみ教えています。

裏からどう見えるか、ほかの側面はどうなっているかを教えていませんね。

たとえば歴史ものの小説。書いた人の解釈をみんな楽しんでいます。

解釈するということが一つの見方なんですよ。

多面的な見方をするのが大事です。そうしなければ、競争が激しい世の中で生き残れません。

 

 

 

 

──ルールは変わるもの。「スタンダード」と聞くと、正しいことのような気がしてきますが、正しさってなんでしょうね。

教科書に書いていることだけが正しいわけではないですし。

 

何が正しいかはわからない、と教えないといけません。

では学校は何をする場所かというと、与えられた知識について正しく覚えられているか判定をする。

それが学校です。ただしそれが正解というわけではない。

こういう教え方をしていきましょう。

 

──「正解を押し付けないで」「大人は嘘つき」とは、誰しも子どもの頃に思う、大人に対する憤りですよね。

でもその違和感を放置していては先の未来にも響いてくる……。

 

根本に教育があるんです。僕も大学で教えていたことがあり、思いました。

今は本当のことを教えていないのです。学生も本当のことを知りません。

物事の本質は、手探りで探った方がいいです。昔は親や周りが本当のことを教えていたのですが。

 

──建前を教えることに偏っているのが現代の特徴かもしれません。

 

ですが本音が大事ですよね。

もうひとつ今の世の中で間違っているように感じられるのが、感情よりも論理が大事とされているところです。

人間は圧倒的に感情で動きます。それを教えていかなければ。

感情が大きなポイントだとわかれば、どうやって感情をコントロールするか考えることができます。

感情をコントロールできずに怒りにまかせて行動したら、せっかく今まで積み上げてきた成果も台無し。

たとえば上司が部下に怒鳴り散らしたら、パワハラだと恐れられてしまい、コミュニケーションがうまくいかなくなるでしょう。

 

 

 

 

──感情にはネガティブなもの、ポジティブなものがありますね。

 

「自分は喜びの表現がうまいから人間関係に活用しよう」とポジティブな感情をコントロールして役立てることもできますよ。

ただし論理というのは競争であり、あくまで建前です。

アメリカにはディベート文化があり、論理で勝負しようとします。

しかしそのような論理で人に勝ったとしても「あいつが憎い」と思われたら、物事が難しくなってきます。

それなのにディベートで相手を打ち負かして、感情を逆なでる。

こういうことばかりしていると戦争になるのではないでしょうか。

相手のプライドをたてながら、そこそこのところで手を打つ。これが大事でしょう。

 

──日本の「和の精神」は感情を大事にするものでしょうか。

 

おそらくそうですね。論理はそれぞれですが、論理一辺倒の人は村社会で嫌われる傾向にあります。

みんなの感情や顔を立てながら「全体的にこうしたらいいのではないか」と考える人が重視されます。

 

 

 

 

──社会、会社、家庭でさえ論理が支配している風潮もありますね。

 

母性が先天的に備わっているかどうかはともかく、小さな子供が困った顔をしていたり、しんどそうにしているときは抱きしめてください。

まずはスキンシップ。そうして子供の顔が和んだら、本当のことを聞き出すことができます。

とはいえ面と向かって「あなたどうしてしんどいの?」と問い詰めるのはやめましょう。

子供にとって言葉にするのは難しいことです。

「どうして言えないの?!」と責めるとますます委縮して何も言えなくなってしまう。

まずは抱っこです。

ぬくもりを感じていると、だんだん気持ちよくなって防衛がとけていきます。

 

──心の防衛、とかしたいです……!夏目先生は73歳でなお生涯現役、前線に立っていらっしゃいますが、ご自身をどう自己分析されていますか?

 

人と違った見方をするタイプなので、そこが評価されるポイントしてあったんじゃないかな。

もうひとつは、僕はあけすけに会話するから、人脈を作りやすかったんですよ。

しんどいときは拾ってくれる人がいましたね。

 

 

 

 

──夏目先生の人生も気になりますが(笑)

人と違うということが持ち味だったんですね。

 

僕はね、人がたくさんいるところは嫌いなんです。

だから心療内科に進みました。

大学受験で法学部を希望する人は多いけれど医者系に進む人が少なかったからこの道に入ったんです。

メジャーなところにあまりいかないというのが、結果的によかったようですね。

 

──メジャーを目指さなくても人生なんとでもなるんですよね。

 

メジャーな道は、今までは安心コースでしたがこれからはそうはいきません。

「みんなが行くところに行けば大丈夫」というのが通用しない時代です。

見極めが、これからの若い人に必要でしょう。

皆さんそれぞれ個性的な領域を持つといいです。

オタクと呼ばれる人たちは好きなことをし続けて、努力をしています。

そして幸運に恵まれたとき、活躍するんですよね。

 

 

 

 

──夏目先生もメンタルヘルスの道を40年以上続けてこられ、ご活躍しています。

今の生きがいというと?

 

生きがいかぁ~。

達成感はそのひとつでしょうね。課題に対する達成感。

ですが課題はいろいろなことがありますから、自分で探すのは大変です。

僕の場合、おかげさまで周りがいろいろなことを振ってくれるので、課題はやってくるんです。

こういうインタビューもそのひとつですし、講演会や執筆も課題ですね。

ですが世の中面白いもので、自分が「よし。いいな」と思った本はあまり売れないんです。

僕でいくと、自信作は昔から当たらんなぁ……。

女性をテーマにした本は自信があったんですけど、売れ行きはいまいち(笑)。

妻として母として仕事もできる、こういう図は女性にとって大変です。

「ひとつくらいは切り捨てなあかん、その方が頑張れますよ」ということを伝えたい本です。

 

──先生のアドバイスはゆるやかですよね。

出世や完璧を目指さなくていいという、肩に入った力をほぐしてくれるような。

 

ずっと言い続けていますね(笑)。ある金融機関で産業医をしていたときに、うつを発症した人とお話しをしました。

「今、あなたは調査役に就いているけれど、ずっとこの銀行にいたいのか、別の道にいきたいのか」と聞くと、90%の人はその会社にいたいと答えます。

退職を迎え、花束と拍手をもらいたいわけです。「それをしたかったら調査役以上になろうとしなくていい」と僕は言います。

するとみなさんキョトンとします。

「もっと上に行きたい」という気持ちがあるんですね。

それはわかりますが、あなたが頑張って支店長になったとき、もらう給料は1200万としましょう。

ところがうつが再発したとき、あなたの会社の人事は僕にこう漏らします。「給料一千万以上の人がまた再発か」と。

「500万くらいならこんなこと言いませんけど。我が社には残念ながら降格制度がないんですよ」。

そしてうつを再発した人は、会社を辞めていく。

 

 

 

 

──出世が選択肢を狭めてしまうのでしょうか。

 

調査役なら管理職でないから組合が守ってくれます。

組合が守ってくれるかどうかは大きい。

うつ病は8割が再発します。

私の経験では、再発すれば、またうつ病になる確率は上昇していきます。

病気の人にかけられる会社のコストは自ずと限られてしまうんですよ。

心に限らず体でもそうです。たとえば病気の人が商社にいたとして、1週間おきに海外出張に行けるかというと難しいでしょう。

 

 

 

 

──体の問題に比べて、心の問題は外からも自分からも見えづらいというのもありますね。

 

高熱は赤くなった顔を見てわかったり、骨折はギプスをしていたりするとわかったりします。

ところがメンタルヘルスはそうはいきません。

うつ病の人とそうでない人を並べても、話をじっくり聞かないとわからない。

専門家でもそうですから、同僚や上司ならなおさらわかりません。

平気に見えるからどんどん仕事を与えてしまい、そしてダウンする。

 

──「無理です」「大変です」「辛いです」と本音を言えたら違うのでしょうか。

傷つくのを極度に恐れているのも、現代人の特徴かも。

特に日本人は、面と向かって言いたいことを言えません。

 

傷つくのが人間です。

本当は、大事な言葉には毒がありますね。

喜怒哀楽で悲しいときに泣いて、楽しいときには笑う方が楽になりますよ。

 

 

 

 

出世は、人から褒められ尊敬されるライフイベントかもしれません。

しかしそこに安心があるのか、笑いたいときに笑える未来を拓いていけるのか。

こういったことを考えなくてはいけません。

現代はストレスとは切り離すことが難しい社会。

喜怒哀楽に素直になって、自分や人の感情を大切にしながら、人生100年時代を楽しんでいきましょう!

 

写真:横山君絵 文:MOC編集部

 

 

 

 

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編集・構成 MOC(モック)編集部
人生100年時代を楽しむ、
大人の生き方マガジンMOC(モック)
Moment Of Choice-MOC.STYLE

 

PROFILE

夏目 誠

奈良県立医科大学卒業。
大阪府立公衆衛生研究所精神衛生部長心得。
こころの健康総合センタ−部長を経て大阪樟蔭女子大学・大学院教授から現在は名誉教授。
現在は毎日放送や産経新聞、デサントなど7社で精神科医・産業医として「メンタルヘルスを根付かせ、発展させるか」について現場の見地から相談・診療,復職支援や講演等を行っている。

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