人生100年時代を楽しむ、大人の生き方 Magazine

未成年の難民4人に1人が自殺や自傷行為に及ぶ。ギリシャ・レスボス島からのレポート

 

 

エーゲ海北東部のギリシャ領レスボス島。 欧州における難民問題の最前線であるこの島では、 ギリシャ政府が管理するモリア難民キャンプに勾留されている人びとの間で健康被害が深刻化している。 特に若年層の自殺未遂や自傷行為、 暴力による致命的被害が増えている。 キャンプ内で医療援助活動を行う国境なき医師団(MSF)は、 容態の悪い人、 特に子どもをギリシャ本土やEU領内の安全な場所に緊急退避させる必要があると訴えている。

 

 

シリアから逃れてきた家族。 住んでいた家とイスラム国に支配されていた町は政府軍の爆撃で破壊された(2018年5月撮影)

 

 

ギリシャでは政策によって庇護希望者は領内の島々に留め置かれる。 今や勾留者の数は9000人以上に上り、 そのうち3分の1を占める未成年は定員3100人のモリア・キャンプに無期限で勾留されている。 MSFは毎週のように自殺未遂や自傷行為に及んだ子どもを診察しており、 キャンプ内での暴力行為や、 応急処置を受ける場所が無いことで致命的となった被害症例にも対応している。

 

 

紛争地を逃れ、 欧州でも傷つく子どもたち

MSFが2018年2月から6月にかけて、 6歳から18歳の未成年向けに行ったグループ心理ケアでは、 4人に1人(74人のうち18人)に自殺未遂や自傷行為の経験、 または自殺願望があったことが明らかになった。 その他、 選択かん黙症、 パニック障害、 不安神経症、 突発的な攻撃行動、 繰り返し悪夢を見るなど、 心身に不調をきたしている子どもの患者も確認された。

MSFのドクラン・バリー医師は「彼らは紛争地から逃れてきた難民の子どもで、 すでにひどい暴力を経験し、 心身に傷を負っています。 しかし欧州では治療や庇護を受けるどころか、 ストレスや恐怖、 性暴力を含む深刻な暴力にさらされています。 加えて住環境は危険かつ不衛生で、 下痢症や皮膚感染症を患う子どもも多くいます。 人口の過密と不衛生により、 感染症の集団発生リスクも高まっています」と話す。

9月最初の2週だけでも、 1500人以上の難民が新たにレスボス島に到着した。 だが風雨を避ける住まいも、 充分な食べ物も無く、 医療を受けるすべも非常に限られている。 MSFが治療した子どもの中には、 首都アテネに移送が必要と判断された子どもも多い。 だが、 アテネでは宿泊先の不足を理由に、 子どもたちの治療を受けいれるところは無い。

 

 

EU・トルコ合意を終わらせるとき

ギリシャにおけるMSFの活動責任者ルイーズ・ロラン=ガスリンは、 「MSFがギリシャ政府とEUに対し、 この問題の責任を認識し、 持続可能な解決策を講じるよう呼びかけてから、 もう3年目になります。 最も弱い人びとをEU領内の安全な場所にすぐに移し、 モリアで繰り返される過密問題と非人道的な状況をくい止めるべきです。 今こそEU・トルコ間の移民・難民送還合意を終らせるときです」と訴える。

MSFはモリア・キャンプで未成年を中心に小児医療と心理ケアを行っているほか、 リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)も2017年末から行っている。 またレスボス島の中心地ミティリーニでも心理ケア診療所を2016年10月から運営している。

 

本件に関するお問い合わせ先:特定非営利活動法人 国境なき医師団日本

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
人生100年時代を楽しむ、
大人の生き方マガジンMOC(モック)
Moment Of Choice-MOC.STYLE

 

PROFILE

MOC 編集部

大人の生き方Magazine MOC(モック)編集部
芸術・イベント・自治体のニュースから厳選した情報のみをお届けします。

新型コロナの感染拡大で明らかになった、南アジアにおける衛生作業員の劣悪な労働実態

ウォーターエイドの新しい報告書によると、 南アジアの衛生作業員は、 新型コロナウイルス感染症が広がる中、 防護具が不足…

新型コロナ患者の避難場所はどこに?難民キャンプでの強制隔離による健康悪化を懸念

ギリシャ・レスボス島のモリア難民キャンプで、 初の新型コロナウイルス感染者が1人報告された。 ギリシャ政府はこれまで、…

コロナウイルス×水害 復興に向け人手不足が続く、熊本県人吉・球磨。現在、支援活…

令和2年7月豪雨の被害を受けた熊本県人吉市。その復旧支援を行う一般社団法人 熊本支援チームは、 コロナによる深刻な人手…

アフガニスタン豪雨被災。コロナウイルス 感染拡大防止と緊急支援の実施準備を開始

アフガニスタン北東部で8月下旬、 局地的な豪雨による洪水や鉄砲水が発生し、 少なくとも死者160人以上の惨事となってい…

世界に広がる日系人。現在、アイデンティティーは如何に継承されているか?日系人の…

日本財団は、全米日系人博物館(米国・ロサンゼルス)と協力して、世界各地に住む若い世代の「日系人」を対象とした世界規模の…

神社は誰のものか? 創建1300年の大御和神社で起こった土地売却問題について、…

徳島県徳島市国府町で起こった、「大御和神社」の土地売却問題。前編では「大御和神社を守る会」メンバーそれぞれの想いを中心…