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合気道は争わない、しかし自分との戦いが成長につながる。それが“生涯武道”の真髄。喜多山司氏インタビュー【第2回】

 

 

合気道は勝負にこだわることなく、澄んだ気持ちで相手と和して技の上達をはかることが目的の純粋武道です。
インタビュー第2回目の今回は、自己の成長や戦後日本の武道復活など、生涯を通して武道を続けることの意義を語っていただきました。さらには、歳を経るほど強くなっていくという、合気道の不思議な力についても迫ります。

 

 

──現在六段の喜多山先生ですが、どのように合気道を極められたのでしょうか?

 

極めてないですよ(笑)。

登山だとすると、今やっと2合目か3合目辺りだと思います。

昇級は、始めてから一年間何も審査してくれなくて、1年経ったら5級くれました。

初段は3年くらいで貰いました。割と早く戴いたと思います。

ただ、帯が黒くなることが目的かというとそうではないんです。

それと実力とは別物です。また、武術には極意も近道もありません。極意があるとすれば、それは継続ですね。

私は合気道が楽しいから続けて来られたのだと思います。

上手く出来ずにもがくことも含めて楽しいんです。

気づきの楽しみも大きいですね。武術は気づきが全てと言われますが、小さくても気づきがあったときの楽しさは2倍にも3倍にもなります。

武術の上達って、稽古に比例した右肩上がりではないんです。

ずっと出来ない上達しない時期が続きます。

横這い状態が続くわけですが、そのうち身体の小さな気づきが出てきます。

それらの気づきがある瞬間にふっとつながることがある。そうすると、今まで出来なかったことがすっと出来てしまうんです。

一階で横這いだったものがいきなりポンと二階に上がってしまう感じです(笑)

上達しないからと辞める人がいますが、実にもったいないと思います。

ポンと二階に上がる寸前かも知れないのに…。

出来ない、上手くならないという時期が続いても、止めずに継続して欲しいといつも思っています。

それが自分との戦いであり、自分自身の中に成長を発見する喜びだと思います。

──合気道の強さというのが、一般の人にはわかりづらい所もあると思うのですが、先生はどうお考えですか?

 

好きな話がありましてね。

戦後、GHQがあった頃の話なのですがね。

アメリカは日本人の精神を骨抜きにしようとしたのかどうか分かりませんが、武道は軍国主義につながるとして、武道教育禁止令というのを出すんです。

さて、それには剣道や柔道など武道界の方々が困ってしまいました。

当時の政治家も立ち上がり、GHQに武道の素晴らしさを何度も伝えに行ったのです。

すると、GHQはそれなら銃剣術の米軍教官と勝負しろということになったのです。

米軍教官は真剣で、日本側は木刀でという条件付きでです。

ところがなんと、立ち会ってみると打って出た銃剣を木刀でスッと制し、その米軍教官を抑え込んでしまったのです。

おそらく、その古流剣術家には米軍教官のやろうとする動きが全部見えていたんですね。

この試合を見たGHQは「ああ、そういうことなのか」と思うわけです。

日本の武道は、そこから復活して行くんです。

 

──以前先生がおっしゃっていた、「合気道は争わない」ということにつながるのでしょうか?

 

はい、そうです。

争い傷つけ合うところからは何も生まれません。

相手を傷つけずに抑え込む。相手を怪我させず、こちらも怪我しない。

そういうのに憧れますね。

私は一介の合気道修行者にすぎませんので、合気道を云々するような立場ではありませんが、その人がどこを目指すかということだと思います。

争いの武をもって身体を鍛え、争わない心と技を育てるというのが私の思いです。なかなか難しいことですが。

価値観は人それぞれ。合気道をやるのでも、運動不足やストレスの解消だとか、健康になりたい、仲間を作りたい、護身のためとか、いろんな目的があって良いと思う。

健康のためというのも大きなファクターですね。

血流が良くなると何とも気持ち良い。私はこれで健康になれると思います。

身体はもちろんですが、心もね。

まずは、自分自身が健康でありたいと思うのは大事なことですよ。

以前聞いたのですが、ゆったりとした音楽や気功とか太極拳をガン治療に取り入れている病院があります。

医師でありながら西洋医術だけではなく、そんなことを真剣に考えている方がいて、良い仲間と思いを共有し、一緒に動くことでそこに磁場ができるって言うんです。

私は稽古で気という言葉はあまり使いませんし、使いたくないのですが、みんなが気持ち良く練習していれば良い気が流れ、良い磁場が生まれる。道場とはそういう場所なのだと思います。

 

──“気”という言葉を使いたくないというのは、どういう事なのでしょうか?

 

最終的には気の存在は大事だと思っていますが、言葉では上手く説明できないのと、武術で気というと煙に巻いたり何かの逃げ道に使われることが多いからです。

稽古では意識という言葉を使っています。同じではありませんが、気と言う漠然とした抽象的な言葉より分かり良いのではないかと思います。

例えば、稽古で皆さん体験しますが指先を意識すると、動きが変わりますよね。意識することだけでいろんなことが変わります。

意識をして身体にしみこませるというのは、自転車に乗るのと同じです。

乗れない時は、ブレーキやペダルを一つ一つ意識しますよね。でもなかなか乗りこなせない。それを超えて乗れちゃうと、そんなことは意識しませんよね。

それが身に付くということです。

力技ではなく、意識と気づきを大切に、自分のペースに合わせて、老いも若きもできる合気道。それで良いと思います。

 

──合気道を始めるにあたって、年齢制限などあるのでしょうか?

 

ありません。動ければ何歳からでも始められます。

門下生の中には、60歳を過ぎてからから始められた方もいます。

早く始めることに越したことはありませんが、思い立ったら始めることが大切です。

40歳50歳のから始めて「もう10年早く始めたかった」って言う方も多くいますから。

私もその一人です(笑)。

先代の澤村先生が亡くなられたのは82歳でしたが、私達は全然敵わなかった。歳を経るたびに強くなっていくというのは嬉しいですよね。

こわばりを無くしていくと柔らかさが出てくる。竹の様にね。

合気道の目指す強さはしなやかな強さです。

合気道は一生できます。生涯武道というのは最大の魅力ですね。

 

合気道を通して生まれてきたもの、それは自分との戦いを経て発見した喜びだった。そこに辿り着くためには、目指す場所を決めていこう。スタート地点は「思い立ったその時」。生涯武道、あなたも始めてみませんか?

 

 

写真:杉江拓哉 TRON

 

 

 

 

合気道は争わない、しかし自分との戦いが成長につながる。それが“生涯武道”の真髄。喜多山司氏インタビュー【第2回】

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

喜多山 司

喜多山 司
1949(昭和24)年12月9日北海道生まれ。昭和48年3月拓殖大学卒業。39歳の折に養神館合気道澤村支部(薫友会)澤村秀雄師範(八段)と出会い入門。以来澤村師範に師事。師に合気道には武器術の修得も必要と神道夢想流杖道を勧められ併せて学ぶ。
1994(平成14)年 杖道2段位。
2005(平成17)年 養神館合気道合気道5段位。
2006(平成18)年 澤村師範逝去。生前見舞い時に澤村師範より澤村支部(薫友会)の今後を託される。
2014(平成26)養神館合気道6段位 師範称号 第4号指導者資格。
現在は養神館合気道薫友会支部長として足立道場・江戸川道場の稽古指導を中心に活動している。

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