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大杉潤氏インタビュー【第1回】「本が人生を変える――刺激的な本との出会いが人生を切り拓く」

 

人生は一度きりだ。そんなことは言うまでもない。しかしである。本を読めば、何度も人生を生きることができる。なぜなら、先人の生き方を追体験し、人生についてまでを考えさせられる、それが「本」だからだ。これほどのものを得ることができるのに、本を読まない理由はない。それゆえに大杉 潤さんが1万冊読破した道のりを辿ることは、本を楽しみ生きる人間にとってこの上ない贈り物となるはずだ。

 

――ビジネス書、それから新書に関していろいろな本を読んでいらっしゃいますが、そもそも先生が本に目覚めたのは、おいくつでしたか?

 

今から思い返しますと、大学生の最後の頃です。僕は早稲田大学に通っていまして、世界中の本を読んでいる多読家で、しかも7カ国語がペラペラという西川 潤先生のゼミに入りました。先生に、卒論を書くために参考になるいい本はないかと相談しますと、バーっと挙げてくれるわけです。それを見て本を読んでいる人はすごいなと思いまして、自分も読まないといけないと痛感しました。

そして就職。僕はマスコミ志望でしたが、なぜか間違って、みずほ銀行の前身となる日本興業銀行に就職しました。入行してからも勉強しろというのが企業理念でしたから、先輩も上司も同僚も読書家ばかり。読むだけでは飽き足らず、本を書く人がいたほどです。ですから、僕も自然と本を読むようになりました。みんなはフィナンシャルテクノロジーですとかデリバティブですとか金融に関する難しい本を読んでいましたが、僕が読んでいたのはやさしいビジネス書。コミュニケーションからスピリチュアル、健康本まで幅広いジャンルの本を、入行した1年目から年間300冊くらい読みました。それを36年間ずっと続けて、300冊×36年で1万冊。ここ数年は、読んだ本の書評を毎日ブログに書いていますので、年間365冊読んでいます。ですから、「どの本がいいですか?」と聞かれたときに、その人に合った本をパっと3冊、推薦できることが僕の特技。しかも、「そのエッセンスはここに書いてありますよ」とブログに書いた書評も紹介しますので、「私の求めていた本が、大杉さんは何で分かるんですか?」と、言われることが多くなりました。

 

 

――本を読むためのテクニックはありますか?

 

読んだ本が1,000冊を超えたら、誰でも読むスピードは早くなります。20年かけて1,000冊を読むよりは、3~4年で1,000冊を読んだほうがその後の加速度が違いますので、なるべく短期間で1,000冊を達成するのがコツです。僕の場合は年に300冊読んでいましたので、3年ちょっとで1,000冊。そこからはもう、どんどん読むスピードが早くなっています。読むのが遅いなと思っている人は、まだそこまで到達していない人が多いのかなと思います。

特にビジネス書ですと、どの本もだいたい書いていることが同じです。こう言ってしまっては身も蓋もありませんが、自分で本を書いてみて分かったのは、1冊の中で本当に言いたいことというのは1割くらいしかない。あとはそれを裏付けるための事例であったり、あるいは根拠であったりになります。それに、世の中にエッセンスがそれほどたくさんあるわけではありませんので、同じことを違う角度から言っているだけなんです。ですから、知識が貯まってくると、非常に読むスピードが早くなる。読む本にもよりますが、僕の場合は長くかかる場合でも、1冊を3時間くらいで読むことができます。1日のうちで、まとめて3時間取れることがなかなかありませんので、細切れで読むことが多いですね。

 

 

――Amazonで本を買うのと本屋で本を買うのとで、大きな違いはありますか?

 

Amazonで本を買うよりも本屋へ行ったほうが、思いがけない本に出会えるということが大きな違いです。僕も本屋が好きなのでよく行きますが、店内をブラブラしながら本を見てまわると「こんな本があったのか」と、予想もしていなかった本を見つけて思わず買うことがしばしばあります。Amazonですと、タイトルを検索して本を探したり、あとはリコメンド機能がありますのでそれと関連した本が出てきます。ですが、思いもかけない本に出会う機会はなかなかありません。

 

――読書交流会でも本と出会う機会があります

 

読書交流会のほうが、もっと出会いがあります。僕の場合、そもそも街の本屋さんを応援したいという思いがありましたので、1年ほど前から本好きの方に本屋さんに集まっていただいて読書交流会を行うようになりました。最初に開催したのは、駒込の駅前にある「ここから書房」というすごく小さな本屋さん。そこから広がっていって、今は神保町にある「ブックハウスカフェ」という老舗の大きな本屋さんでやるようになりました。最大で10名ほどの規模ですので、こじんまりしていて参加者との距離も近く、アットホームな雰囲気の交流会です。

他の方が開催している読書会に参加することもありますが、課題本を事前に読んできて、みんなで議論するという形式が多い。それに比べて僕が開催している読書交流会では、「自分の人生に大きな影響を与えた本を、それぞれ持ち寄りましょう」ということで、参加者全員が1冊ずつ本を持ってきて、なぜ自分にとって影響の大きな本だったのかを3分ほどでプレゼンしていただきます。その後、質疑応答の時間を取って「ああでもない、こうでもない」と、みんなで議論するスタイルです。ですから、あらかじめ決められた本を読んでこないといけないこともありませんし、一人ひとりが違う本を持ってくる格好ですので、自分では絶対に手に取らないような本と出会えることが一番の魅力だと思います。

 

 

――交流会に参加されている方の年代を教えてください

 

若い方で20代の男性から、上は60代までと、かなり幅広い年代の方が参加されています。男女入り混じっていろいろな世代の方が集まるうえに、IT系企業やキャビンアテンド、キャリアカウンセラー、大手メーカー企業……と、みなさん職業もバラバラで、持ってくる本もそれぞれ違いますので本当に面白い。毎回、参加されるリピーターの方もいらっしゃるくらいです。読書交流会はだいたい平日の夜7時から始めて8時30分までの1時間30分ほどですが、その後、懇親会をやっていまして、ほぼ全員の方が参加してくれます。魚がおいしくて安いお店が近くにありますので、そこで2時間ほど本当の交流会を行っています。

 

――参加者のみなさんが読んでいる本の傾向はありますか?

 

ビジネス書限定で交流会を行っているわけではありませんので、小説を持ってくる方もいらっしゃいますし、それから自分の仕事に関係した本を持ってくる方もいらっしゃいます。カウンセラーの方でしたら心理学の本、主婦の方でしたら子育て関係の本ですとか、あるいは「癌はこうやって治った」というような病気に関する健康本ですとか、本当に様々です。ビジネス書でしたら1万冊も読んでいますのでほとんど知っていますが、違うジャンルになりますと知らない本ばかりですので、僕にとっても非常に新鮮です。

それに、その人に影響を与えた本を紹介してくれるだけあって、すごく面白い。3~5分くらいで本の内容と、自分がどう感じてどう生かしたかというところまでプレゼンしてくれますので、「なるほど」っていう説得力や迫力があります。ですから、発表が終わりますと、「あそこはどういうことなんだ」ですとか、「ここのところをもっと聞きたい」ですとか、他の参加者からの質問が殺到します。僕がタイムキーパーをやって常に時間を意識しなければいけないくらい、本当に時間が足りなくなります。

 

 

誰かの人生を変えた本が、自分の人生に影響を与える。そして自分の人生を変えた本もまた、誰かの人生に影響を与える。本が人をつなぐ――もしかしたら、今までにどんな本を読んできたのかということは、どんな人と出会ってきたのかということなのかもしれない。

 

 

写真:田形千紘     文:natsu

 

 

 

 

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大杉潤氏インタビュー「本が人生を変える――人生100年時代における定年後40年の意味を考える」

大杉潤氏インタビュー【第3回】「本が人生を変える――人生をより豊かなものにする珠玉の3冊」

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

大杉 潤

1958年 東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)に22年間勤務した後、新銀行東京の創業メンバーに人材関連会社およびメーカーの人事責任者を経て2015年より、フリーのコンサルタント、研修講師として活動。株式会社HRインスティテュート・アライアンスパートナー
著書に『入社3年目までの仕事の悩みに、ビジネス書10000冊から答えを見つけました』(キノブックス・2017年)および、2018年4月7日刊行予定の『定年後不安 人生100年時代の生き方』(角川新書)がある。
WEBサイト: http://www.jun-ohsugi.com

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