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「本が人生を変える――人生100年時代における定年後40年の意味を考える」大杉潤 氏インタビュー【第2回】

 

 

新卒入社した会社で経験を積み、3度の転職を経た今、「定年前起業」に向けて邁進しているビジネスマン・大杉潤さん。これまでに優秀なビジネスパーソンの発掘と育成に力を注いできたそうです。大の読書家であることを活かし読書交流会を開催するなど、多くの人と知識や感性について意見を交わし合ってきました。インタビュー第2回では、労働寿命が延びることが予想される人生100年時代において、生涯現役で働き続けるためのアドバイスをお聞きしました。

 

 

──読書交流会以外に企業研修もやっていらっしゃいます

 

企業研修は大きく2つに分かれていて、一つはビジネススキルの研修。これはプログラムがきっちりと決まっていまして、コミュニケーションやロジカルシンキングといった基本的なことを教えています。もう一つ、これからは人生100年時代ですので、いかにして長く働くかという研修を実はやろうと思っています。個人コンサルではすでにやっていますが、企業向けのプログラムを新たに作りましたので、これから展開していこうと考えています。僕は、生涯ずっと仕事を続けるべきだという考え方ですので、それをどのようにして実現させていくのかを伝える研修です。

 

 

──生涯現役で仕事を続けるために、どういうアドバイスをしていらっしゃいますか

 

定年が近くなった50代の方からの相談が一番多いですが、人によっては40代くらいから心配されています。相談内容を整理しますと、大きく3つの定年後不安を抱えていることが分かりました。一つ目は「お金」の問題。退職金や年金で、残りの人生を暮らしていけるのかという不安があります。それから「孤独」の問題。定年退職した途端に人間関係が切れてしまいますので、孤独になってしまう方が多いからです。そして3つ目が「健康」。「カネ」、「孤独」、「健康」で3大不安、3Kと言っています。この3つの不安を一度に解決できるただ一つの方法が、「生涯現役で働き続ける」ということです。

定年後も働いていますから、年金以外にも収入を得られます。5万、10万でも、毎月入ってきたらライフスタイルが変わる。ですので、お金の不安がかなり減ります。孤独についても、働くことで人間関係が続きますので寂しさを感じなくなります。それから健康。意外だという方が多いですが、健康だから働くのではなくて、働き続けるから健康になるんです。なぜかというと、働き続けると規則正しい生活になります。それから報酬をもらうということは、それだけ緊張感を維持することになりますので、働くことは心身ともに健康のためにはすごくいいことなんです。

 

 

 

 

──生涯現役で働くための具体的な施策を教えてください

 

学生時代が20年とか22年とかあって、その後の働く期間を3つに分ける。僕はこれを「トリプル・キャリア」と言っています。最初は、ほとんどの人が会社員です。これは働く時間も場所も、それから働く仲間も会社が全て決めます。その代わり収入は安定するわけです。この期間をファーストキャリアと言います。ファーストキャリアの一番のデメリットは、定年があること。働くことができるのは、60歳、再雇用で延長しても65歳までなので、定年のない働き方へとチェンジしないといけないわけです。僕の場合はなるべく早く準備をしたかったので、定年を待たずに57歳でフリーになりました。ですから研修でも、まずはセカンドキャリアへいかにしてスムーズに移行するか、ということを行っています。

フリーは意外と忙しい。フリーランスになってから2年ちょっと経ちますが、ビジネス書を読んでブログを書くことが僕の仕事ですので1日も休んだことがありません。ブログは正月も更新しています。むしろ正月のほうが忙しい。もう4回目になりますが、大晦日に1年間でこのビジネス書が一番良かったというランキングを出しますと、ワーッとたくさんの反響がきます。年を追うごとにどんどん増えてきまして、Amazonでアフリエイトもやっていますが1月だけ猛烈に売れる。それだけ、みなさんが注目してくれているということですので、ありがたいことです。

ただ、この働き方ですと70歳から80歳の間の10年間のどこかで切り替えないと体がもちません。うまくいけばサラリーマン時代より稼ぐことができて充実しますので、この生活をずっと続ける人が多い。そうするとだいたいどこかで、無理がきてしまいます。フリーになるとあれもやりたい、これもやりたいという思いが出てきますが、そこは欲張らず最後まで残すコアな仕事を決めましょうと研修では言っています。75歳プラスマイナス5年、70歳から80歳のどこかで「コアな仕事」だけに切り替える。それは健康面や体力面で無理がこない、なるべく場所を移動しなくてもできる仕事がいいと思います。

僕の場合は、「大好きなハワイに住んで執筆業1本で食べていく」というのが、サードキャリアのプランです。それに向けてプラスになる仕事をどんどんやっていこうというのが今のセカンドステージ。本を書く、出版するということが、僕のファーストプライオリティですので、それにかかわる仕事を一番大事にしています。

 

 

 

 

──中高年が社会で活躍するために、20代とは違うスキルの磨き方、もしくは50代、60代までに身につけておくべきスキルは何でしょうか?

 

人生のプランニングを立てるという大きな前提があった上で、必要なスキルは4つあります。まず一つは「時間術」。時間をどう使うかというのは限られた人生、もう少し身近なところですと1日24時間をどう配分するかという、時間の使い方をしっかりと身に付けることはとても重要です。二つ目は「コミュニケーション術」。コミュニケーションは、会社員のときだけでなくフリーになってからも必要となるスキルです。特に会社以外のコミュニティ、「サードプレイス」とよく言いますけれども、その中で自分の居場所を確保していくためには、コミュニケーション力が大事になってきます。三つ目が、「情報リテラシー」。これはインプットとアウトプットの両方を指していまして、特に中高年が弱いのがアウトプット、つまり情報発信です。

 

僕の場合、インプットは本を読むことがメインですが、アウトプットしないとインプットした内容をすぐに忘れてしまいます。1万冊読みましたと言ってはいますが、実は8,000冊くらいは内容を忘れてしまっています。ブログには2,000冊くらいの書評が書いてありますので、1万冊のうちだいたい5分の1についてはバシっと残っている。ですから、何か聞かれたときに「この本いいよ」と推薦するのは、ほとんどがブログに書評を書いた本になっています。というのも、アウトプットをしているので、頭に残っていて情報の引き出しからすぐに出せるからです。ですからアウトプットはすごく大事。最後の四つ目は「健康法」です。巷には健康に関する情報が溢れていますから、その中で何が本当に正しい情報なのかを見極める必要があります。栄養と運動と、それから心の健康が3本柱だと言われていますが、それぞれの正しい情報を身に付けます。そして健康法を理解したら実践する。

 

中高年が若者に負けないように仕事をきちんとするためには、しっかりとした基盤を身に付けていることが大事です。例えば、新しいテクノロジーに関する情報は、正確にインプットしておかないとお金なんて取れません。昔、取った杵柄だけではビジネスはできない。ですから「学び続ける」ことも大事だと思います。

 

 

 

 

──仕事に対して、どのように中高年力を発揮していけばいいでしょうか

 

今までの長いキャリアで学んできた専門性ですとか知識、スキル、ノウハウを、若い世代に伝える仕事をするといいと思います。ただ、昔のことだけを教えるのでは価値がありません。ですから、今の世の中で必要とされている、例えばAIですとかI o Tですとかの情報を組み合わせて、オリジナルのコンテンツにすることが求められています。そういった新しい情報も加味して、自分の知識、スキル、ノウハウをきちんと伝えるという仕事は、ニーズがありますので重宝されるはずです。まずは会社の中で練習して、フリーになったら今度は外できちんと教える。そういう取り組み方ですと、生涯現役でずっと働くことができます。

 

 

──新しいものと普遍的なものを組み合わせてアウトプットするためには、その人の中での編集力が求められます

 

リクルート出身で、杉並区にある中学校の校長と奈良の県立高校の校長を歴任されている藤原和博さんは、「情報編集力」という言葉を使っています。要するに自分の持っている専門性を3つ組み合わせて新しいものを生み出しましょう、こう言っていまして僕も同じ考え方です。自分が今まで培ってきたことと、今の世の中で求められている新しいトレンドを組み合わせてオリジナルのコンテンツにして伝える。それが編集力です。この能力は、これからの時代に最も求められますし、そのためにはインプットとアウトプットをバランスよくやっていくことが大事だと思います。『定年後不安 人生100年時代の生き方』(2018年、角川新書)という僕の本には、それを実現するための具体的・実践的な方法も書いてあります。

 

 

例えば健康不安。不安があるからこそ、食事や運動を改善するという健康を意識した行動を起こす。これはつまり、不安に対策を講じることで、プラスのエネルギーへと転換させることができるということだ。そしてそのエネルギーが、生涯現役を貫くための原動力となるのではないだろうか。

 

 

写真:田形千紘     文:natsu

 

 

 

 

大杉先生の最新作が、4月7日に発売です!

 

 

「本が人生を変える――刺激的な本との出会いが人生を切り拓く」大杉潤 氏インタビュー【第1回】

「本が人生を変える――人生をより豊かなものにする珠玉の3冊」大杉潤 氏インタビュー【第3回】

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

大杉 潤

1958年 東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)に22年間勤務した後、新銀行東京の創業メンバーに人材関連会社およびメーカーの人事責任者を経て2015年より、フリーのコンサルタント、研修講師として活動。株式会社HRインスティテュート・アライアンスパートナー
著書に『入社3年目までの仕事の悩みに、ビジネス書10000冊から答えを見つけました』(キノブックス・2017年)および、2018年4月7日刊行予定の『定年後不安 人生100年時代の生き方』(角川新書)がある。
WEBサイト: http://www.jun-ohsugi.com

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