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老後の孤独を招く「自立できない中高年」定年前後の意識改革とは?

 

 

年功序列、終身雇用がスタンダードではなくなった現代日本、定年が人生における大きなターニングポイントとなっています。

経済コラムニストの大江英樹氏は、書籍の執筆やセミナーを通して「定年」にまつわる情報を発信。

2019年に執筆した著書『定年前50歳から始める「定活」』は、アラフィフが抱える不安や疑問に応える話題の一冊です。

現代日本の老後に深い影を落とす「孤独」とは、中高年の男性が老後のライフ・シフトに失敗する理由とは?

そんな気になるクエスチョンを大江氏にぶつけたMOCインタビュー第二回をどうぞ!

 

 

──著書『定年前』では、50歳くらいから定年後に向けて準備するのが必要だと仰っていますね。

定年を区切りに、いきなり新しい生活を始めるのはやはり難しいものですか。

 

無理ですね。

実際に定年になったときによく言われるのが、「地域の人に溶け込みなさい」「奥さん大事にしなさい」ですが、すぐに実行できるかというとなかなかできないものですよ。

 

──女性と比較すると、男性の方が老後に孤独を抱える傾向がありますね。

その問題を避けるために「地域に溶け込みなさい」というアドバイスは効果的に思えますが、なかなかうまくいかないんですね。

 

何よりも大事なのは、人とのつながりを持っておくことです。家族だけではありません。

こう言うと、同じ会社に勤めている同僚を友人と指す人がいますが、それは知人です。

会社の中の利害関係を超えた場所で友人をできるだけこしらえておきましょう。

 

 

 

 

──趣味などがきっかけになりそうですね。

 

定年後に始めることで圧倒的に人気なのが、陶芸、油絵、山歩き。

でも失敗している人も多いんですよ。

なぜかというと、好きじゃないからです。好きでやっているならいいんですよ。

定年前から山歩きしていて、定年でゆっくり時間もとれるから日本百名山を訪れる。これは充実していますね。

しかし「みんながしているから」という理由で始めても続きませんし、楽しくありません。

孤独に陥らないために「〇×しなさい。△□しなさい」と、世間はよく言いがちですね。

「家でテレビばかり見てぼーっとしてたら奥さんに叱られるよ!外に出て活発にしなさい」といった具合に。

ですが私は、何もすることがなかったら家でゴロゴロしていていいと考えています。

何が悪いんでしょう。「みんなに言われるから外に出なければ」と、強迫観念に駆られなくてもいいじゃないですか。

 

──たしかに。周りの目を気にして、周りに合わせるためにする行動はストレスですし、むしろ孤独感を増長させてしまいそう……。

 

一番問題なのは、家にいるか外にいるかではありません。

「自立していない」ことが最大の問題なのです。特に男性のみなさん、奥さんからしてみたら家でゴロゴロされるのが嫌なのではありません。

「おぅ、俺の昼飯まだか?」これが嫌がられるんです。

奥さんが「ちょっと出かけてくるわ」と言ったら「どこに行くんだ、俺の飯は?」と聞いてくる。

こういうのがダメなんです。

きちんと自立しないといけません。自分ひとりではお茶も入れられない、食べるものも準備できない。

これではダメです。ご飯は自分で作れなくてもいいんですよ。

外に食べに行くなり買いに行くなりすればいいだけですから。

それなのに「俺の飯は?」と奥さんに頼りっきり。何を言っているんだ……、という状態ですよ。

 

 

 

 

──中高年の男性が自立していない大きな理由とは?

 

アウェーの経験がないからです。

特に大企業に勤めるサラリーマンの場合は会社というホームで戦ってきましたから。

女性はアウェーでやってきたんです。

会社に入ってもまだまだ男性中心の社会ですから、女性が相当バリバリ仕事に力を注いでもなかなか能力が認められません。

少し前まで女性は結婚すれば退職するもんだと考えられていました。

そうして家庭に入ったら、今度はご近所がアウェー。旦那さんの実家がアウェー。

ところが男性は違います。大企業に勤めている男性ほどアウェーの経験が少ない。

「会社の常識、世間の非常識」とよく言うでしょう。まさにそれです。大企業はみんなそう、自分が常識だと思っています。

社内でしか通用しない言葉や話題であっても、当然のように外の人間にも使ってきます。

私が大企業のセミナーに行ったときも「こんなことがあるんですよ」と自分の会社の人事の事情を話題にしてくる男性がたくさんいます。

そんなこと言われてもしょうがないですよね。同じ会社にいる者同士でしか、そんな話は楽しくないのですから。

 

──ホームとアウェー。ホームが悪いというわけではありませんが、経験の種類がまったく異なりますね。

 

ずっと狭い世界で生きてきて、外の世界と意思疎通やコミュニケーションがうまくできなくなる人が多々みられます。

数万人規模の大きい会社といっても、全人口から見たら米粒みたいなものですよ。

狭い世界にしかいたことがない。まったくアウェーの経験がない。

そういう人は上から目線になりがちで、どこに行っても嫌われるし、実のところ何もできない。

たとえば旅行に行くにしても団体旅行ばかりで、自分で行動することができなかったりします。

 

 

 

 

──自立できない中高年は、孤独にも陥りやすいように思えます。

 

孤独を考えるとき、知っておいてほしいことがあります。

「孤独」と「一人でいること」は全く違うということです。

ひとりで過ごしていても孤独じゃない人はいますし、毎日友達と居酒屋で飲んでいても孤独な人がいます。

その違いは「自分の居場所」を持っているかどうか。

自分は何によって世の中に貢献しているのか。この世の中に存在している意義は何なのか。

このことをはっきりと言える人は、たとえ一人で過ごしていたとしても孤独ではありません。

その人の存在意義が社会から求められるものであること。

そういう仕掛けをつくることは大事ですね。

ホームでずっと闘ってきたオジサンには、会社から出てしまえばアウェーの世界が待っています。

定年後の働き方を考えるなら、ホームでの経験にこだわらず、雑巾がけから始めるつもりでいかないとダメですね。

 

 

 

 

──会社員だった現役時代の記憶にしがみついていると、孤独にハマってしまいそうです。

 

もっと言えば、中高年に働いてもらわなくても社会は大丈夫なんですよ。

外国人労働者やロボットなどがいますからね。企業は使いづらい人を無理に雇わなくてもいいんです。

だからこそ、こう考えましょう。

中高年には中高年の戦い方があり、できることがある。

現代日本は労働力不足、人手不足が課題です。

その状況で、特にどの分野に不足があって、中高年がどんな風に貢献できるだろうか考えてみてください。

介護、育児業界はとても不足していますね。

このふたつの業界は肉体労働でもありますから、体の衰えを感じる中高年には厳しく映るかもしれません。

しかしそういう仕事を人生経験豊かなお年寄りがやることに意義があると思うんですよ。

 

──海外ではシニア層はどのような仕事をしているのでしょう。

 

イギリスのロンドンでミュージカルを見に行ったとき、劇場案内は超高齢のおじいさんやおばあさんであることが多かったです。

日本では若い女性が案内役を務める姿が多いように思えます。

ただしそういった仕事の給料はあまり高くない傾向にありますね。

そういう仕事を若い人にさせるのではなく、お年寄りにやってもらうのはいいと思いますよ。

 

 

 

 

──利益追求型の仕事は若い人向きで、介護や子育て、芸術など社会貢献できる仕事は高齢者も活躍できるというひとつの提案でしょうか?

 

お金の話はまたしっかりと考察すべき観点ですね。

ただし言えることとして、高齢者のうち、サラリーマンをしてきた人であれば、そこまで老後にお金の心配をしなくて大丈夫です。

定年後もたくさん稼がなくてはいけない、というわけではありません。

ですからお金よりも「自分が誰かに必要とされている」ことを得られる仕事がいいと思いますね。

孤独を解消するということからいっても、友人と遊びに行ったり飲み会をしていたら孤独が和らぐかといったらそうではないんです。

お年寄りの活用方法は絶対にあるはずです。この点を社会全体で考えていく必要があります。

お年寄りだからこそ丁寧にできる仕事、人生経験を活かせる仕事。

社会全体のバランスを見て不足しているところをお年寄りの力で補えるのであれば、活用していきましょう。

そして50歳前後のみなさん、特にホームでずっと過ごしてきた人ですよ。

会社の外を知り、友人をつくってください。ひとりの人間として自立しましょう。

それが今、定年前後にいるあなたができることです。

 

 

 

定年後の人生は、ホームで生きてきた人にとってアウェーの世界が広がっています。

そこで生きていくために必要なのは「自立」。

今まで当たり前だと思っていたことにこだわらず、その世界のために自分は何ができるか、どんな人とコミュニケーションをしていこうか、自分と社会をつなぎ合わせながらライフプランを設計していきましょう。

 

写真:横山君絵 文:MOC編集部

 

 

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

大江 英樹

大手証券会社で25年に亘り、個人の資産運用業務に従事した後、01年10月の制度開始以来、確定拠出年金の投資教育等の業務に関わる。
12年9月にオフィス・リベルタスを設立。
行動経済学、資産運用、企業年金、シニア層向けライフプラン等をテーマとし、各種マスコミや媒体への寄稿や書籍の執筆、各地でのFP向け研修や投資家向けの講演を行っている。
2014年3月より始めた日経電子版のコラム「投資賢者の心理学」をはじめ、行動経済学を題材とした執筆も多く、読者も拡大している。
CFP(日本FP協会認定)
1級ファイナンシャルプラニング技能士
日本証券アナリスト協会検定会員、
行動経済学会会員、日本FP学会会員

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