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人生100年時代、定年前後のギアチェンジとは? なってはいけない50代、目指したい60代

 

 

「定年退職」の4文字が頭によぎったとき、不安と楽しみ、どちらが胸をよぎりますか。

年金や退職金、定年後の再雇用や転職などお金と仕事に関する疑問を抱えているのでは?

野村証券で25年間勤め経済コラムニストとして独立した大江英樹氏は『定年前50歳から始める「定活」』などアラフィフに向けた著書を多数執筆。

講師として招かれた企業セミナーでは、サラリーマンのライフプランについて叱咤激励のメッセージを送っています。

そんな大江氏が思う「なってはいけない50代」像とはどのようなものなのでしょう。

 

 

──著書『定年前』では、定年後の不安を抱えている方に寄り添った一冊ですね。

定年後の生活に抱きがちな理想と、訪れるであろう現実とのギャップを丁寧に解説する内容でとても面白かったです。

 

定年後不安に関する本は多く出版されていますが、ほとんどが上から目線。読み手の心情に寄り添った本が書けないかと思って出したのが『定年前』です。

 

──50歳から準備すべきことを大江さん自らの取材経験などをもとに書かれていましたが、人生のセカンドライフを考えるなら、45歳くらいからでもいいのではとも思うんです。

45歳は早すぎますか?

 

45歳くらいからの方が良いというのは、理屈としてはその通りです。

しかし現実的に考えると難しい。というのは、45歳はサラリーマンが「」をかけているときでしょう。

この場合の勝ち負けは、役員になる、あるいは社長になるなど、社内の出世レースで勝ち抜くということ。

社内の出世レースなんて意味ないよとは言い切れないと思います。サラリーマンである以上は自分の勤め先で権力を得たいと思っているはず。

90%以上は負けますが、最後の勝負でひょっとしたら勝てるかもしれないという勝負時に「諦めろ!」というのは無茶な話です。

だから「45歳で定年後の人生を考えなさい」というのは厳しい。

けれど50歳を過ぎるともう会社人生の勝負は付いています。50歳を過ぎたらはやく成仏したほうがいいですよ。

 

 

 

 

──「成仏しようよ」というのは、自分らしく生きなさいということですか?

 

そうです。会社生活では成仏しましょうよ。出世にこだわるのではなく、会社以外の場所で次のステップを考えましょう。

その方が絶対に幸せになれますから。

私はよく企業が開催する50代向けのライフプランセミナーに出かけます。

参加者はだいたい52~53歳くらいの人たちです。

内心では「俺たちの何がわかるんだ」「俺の方が優秀だったのに同期のアイツが出世した。

こんなライフプランセミナーなんか、受けたくない」と心中穏やかではないものです。

特に、自分より若くて見た目もよくバリバリ仕事をしているコンサルタントに人生について説かれたら尚更でしょう。

 

──勝負が終わったとしても、まだくすぶっている時期ですもんね。

 

そこに私みたいな67歳で髭面のオッサンがやってくると「コイツの話は聞こうかな」と少しは思ってくれるみたいですね。

そしてこう言います。

「あなたたち役員になれないんですよ。わかってますか? 早く成仏しなさい」

 

──ストレートですね~!グサッときます。

 

私も54、55歳くらいまであがいていました。

けれどね、社長どころか部長にだってなれない人は当たり前に多いんです。

ですから勝負を終えたら会社の生活は横に置いて、自分の人生を考えた方がいいですよ。

 

 

 

 

──これから中高年の大量退職がやってきますが、会社員人生に縛られたままのシニアが労働市場にあふれてしまうと、日本経済の活力が……。

 

賢い人は「このままではダメだ」と思い直し、自分で考え始めます。何ができるか、そのために何をすべきか。

ですが成仏できずにいる人は、悲惨な老後を迎えてしまいますよ。

そういう人をカモにする商売も増えていますから。

 

──老後の人生にリスクあり、ですね。備えておかないといけません。

会社の外へ目が向き、会社の外からの情報に聞く耳が持てるようになるのは、50歳くらいからなんですね。

 

先程も言ったように45歳はちょっと難しいでしょう。ところが50代前半で自分のベクトルがガラッと変わる。

リンダ・グラットンさんの『ライフ・シフト』でもこれに近いことが書かれています。

ただしあの本は生き方を変えるタイミングを50代に限ってはいませんね。人によっては35歳であり、45歳、60歳かもしれない。

定年をきっかけにベクトルを変えた日本人といえば若宮正子さんも間違いなくその一人ですね。

 

 

 

 

──若宮さんは定年後に独学でパソコンを習得。

「ひなだん」アプリをご自身で開発し、appleからも注目されたシニアクリエイター。

定年後の転身の超成功例に思えますが、変化のタイミングは人それぞれ。

しかし「みんなと同じ」に安心しがちな日本人は、タイミングを自分で作るのもネックになりそうです。

 

20歳前後で学校を卒業し入社して60歳で老後、というみんな一緒のライフパターンでなくていいんですよ。

人によってギアチェンジのタイミングが違っていい。

そして老後のことばかり考えるのではなく、自分の人生をどうデザインするか。

これを早いうちから考えていた方がいいでしょう。

若いときは自分にどんな能力があって何が得意なのかもわかりません。

ですからとりあえず会社に入って一生懸命やっていくしかない。

そうして30代にもなってくると得意不得意がある程度わかってきて、次はどうするといいか考えていくべきステップにあがってきます。

どう進んでいくべきかが悩みどころでしょう。自分の能力をいかにして磨いていくか。

それは「やりたいことをやる!」というので構わないと思いますよ。

ジョブホッピングみたいにどんどん転職してキャリアを積めばいいかというと、ちょっと違いますね。

最終的に自分がビジネスを立ち上げる、大企業にスカウトをされるなどの栄達を望んでいるのであればそうかもしれませんが。

 

 

 

 

──栄達……!

夢見ちゃいますよね。でも地に足つけて現実も見ないとですし。

大江さんはセミナーではアラフィフ向けて厳しいことを語りかけていらっしゃいますか?

 

厳しいことを言っていますよ(笑)。

出世レースの話でいえば、役員になれたとしても2年で任期が来る。

だからすぐに会社から放り出されますよ、と忠告しています。

いつまでも会社の看板を背負って「〇△□会社の役員だ」と威張れたとしても、外に出れば何もできない無能力者でしかない。

役員になって車と秘書がついても、その代償として自分の大事なものを失ってしまったらダメでしょう?

役員にならなくて「ラッキー!」と思ってください。

出世レースが終わった期間を活用して、自分なりに活躍していきましょう。

私はみなさんに「役職定年」をもっと楽しんでもらいたいですね。

 

──役職定年とは、実際の定年より先に管理職などから外されることですね。

今までコツコツ頑張ってきたのに!と役職定年クライシスに陥る人もいそうです。

 

たしかにガッカリするかもしれないのですが、役職定年は60歳以降の人生に向けていろいろなことを吸収できる勉強期間と捉えることができます。

役職定年になったら残業もないし、部下の面倒を見なきゃいけないわけでもない。

フリーの時間ができるのだから、フルに活用してはいかがですか?

今は多くの企業が、55歳で役職定年、60歳で定年、あるいは60歳まで働いてから再雇用で65歳まで働かせる。

しかし、役職定年や再雇用というのは、身の処し方を間違うととんでもない事態を招いてしまいます。

 

 

 

 

──アラフィフ以降の身の処し方というと?

 

60歳ですっぱり会社を辞めて別の場所に転身するなら、それはそれほど難しいことじゃないのです。

なぜなら60歳までは現役のテンションで仕事をしています。

同じテンションを保った状態ならば、どこに行っても通用しうる。

ところが定年を迎えたあとに5年間の再雇用でのんびりしていたら、テンションが下がってしまう。

使い道がない人材になってしまうのです。

 

──定年前後の行動次第では、働くテンションや活力の維持に悪影響を与えてしまうんですね。

 

野球でたとえるなら再雇用後は、マウンドに立つことはできません。

ただしホームの控え選手として、ベンチのすみっこにいてスコアをつけることができます。

でも再雇用が終わったら街にでていかなければいけない。

完全にテンションが落ちた状態でアウェーとして戦おうと思っても、一体何ができるのでしょう。

企業もそういう人は雇わないですよ。

まだファイティングポーズをしている人を雇った方がいいですし、そういう人こそが活躍できるんですよ。

 

 

 

 

サラリーマンとして勝負に出たい気持ちは抑えられるものではないでしょう。

しかし勝ち負けが決まったあと、気持ちをスパっと切り替えるのが大切。

次のライフプランの充実を図るべきなのかもしれません。

大江さんから気になるキーワード「ホーム」「アウェー」が出たところで、インタビューは後編へと続きます。

定年を控えたアラフィフが自らの人生を見直し、人生100年時代を充実させるために必要なものとは?

次回インタビューをお楽しみに!

 

写真:横山君絵 文:MOC編集部

 

 

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

大江 英樹

大手証券会社で25年に亘り、個人の資産運用業務に従事した後、01年10月の制度開始以来、確定拠出年金の投資教育等の業務に関わる。
12年9月にオフィス・リベルタスを設立。
行動経済学、資産運用、企業年金、シニア層向けライフプラン等をテーマとし、各種マスコミや媒体への寄稿や書籍の執筆、各地でのFP向け研修や投資家向けの講演を行っている。
2014年3月より始めた日経電子版のコラム「投資賢者の心理学」をはじめ、行動経済学を題材とした執筆も多く、読者も拡大している。
CFP(日本FP協会認定)
1級ファイナンシャルプラニング技能士
日本証券アナリスト協会検定会員、
行動経済学会会員、日本FP学会会員

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