
カッコいい女は世の中にたくさんいるけれど、夏木マリ氏ほどカッコよく“在り続ける”女はそうはいない。2018年7月には、輝きを放つ60代以上に贈られる「プラチナエイジスト」を受賞。俳優として映画やドラマで活躍し、私たちを魅了し続けています。
そんな夏木さんですが、アフリカのエチオピアを中心に、途上国で生きる子供たちへの支援活動「One of Loveプロジェクト」をされているのです。支援を始めたきっかけ、プロジェクトが与えた自身への影響を伺っているうちに、この地球に生きる一人の女性としての夏木マリさんが浮かび上がってきました。
──ベストプラチナエイジスト2018のご受賞、おめでとうございます。
ありがとうございます。
──同賞のコンセプトは「60歳以上の輝きをはなつ人」に贈られる賞であり、夏木さんは歳を重ねるごとに活躍の場を広げ、輝きを増していますね。2018年は芸能活動をスタートされて45年。節目の年を迎えましたね。
45年続けてこられたのもたくさんの方々のお陰、感謝です。今年2018年はインプットの年だと捉えています。
──夏木さんが手にしているバラの名前は、『マリルージュ』。音楽とバラの力によって、途上国の子供たちの教育環境、その母親たちの雇用整備の向上を目指す「One of Loveプロジェクト」の支援活動を、夏木さんは十年続けていらっしゃいます。
私たちは今、エチオピアにあるディマ・マノ校に支援をしています。マリルージュの収益と、毎年6月に行うGIG(「世界音楽の日」に開催されるライブイベント)で、エチオピアの子供たちがリクエストしてくるものを一年単位で支援させていただいています。毎年、教科書や鉛筆といった教材と勉強道具のリクエストが多いです。
2018年は6月16日にGIGを開催しました。これから一年の間にエチオピアからリクエストが届くので、マリルージュとGIGの収益で物資を購入します。「足りないものは何?」と聞きながらね。

──子供たちと関係性を築きながら支援されているんですね。
プロジェクトは今年で十年目になります。けれど、支援ということは難しいものですので、活動のお声がけをいただいても以前はお断りしていたんです。One of Loveプロジェクトを始める前から、チャイルド・スポンサー(途上国の子供、その家族に支援をする国際協力)をしてはいましたけれど、自分で進めることは考えていませんでした。
パートナーと旅に行くことにした時「子供たちに音楽を届けよう」と考えたの。行ったことのない国の子供たちに会いたくて、バングラデシュ、エチオピアに行こうと思いました。
田舎町なら一日1USDで子供たちが暮らしている、エチオピアはそういう国でした。けれど驚いたことがあったのです。首都アディスアベバで食事をしようとお店に入ったら、テーブルに一輪ずつ、美しい紅いバラが飾られている。しかもどのお店に入っても、テーブルには紅いバラが・・・。貧困とバラとが結びつかず、すごく印象的な光景でした。
気になったから調べてみたら、エチオピアは農業国でバラ栽培に力を入れているということでした。標高二千メートルの高地に位置し、バラを育てるのに適している国なんですね。私の勉強不足で、そういったことは知りませんでした。その話を帰国してから友人たちへ話したら、みんな「そろそろ人のために何か動きたい」となって・・・。

──人のために何かをしたい! そういう気持ちをシェアできる友人がいるというのも素敵です。
友人たちと話をしているうちに、「何か動こう」という方へ考えが広がってきたんです。エチオピアの紅いバラ、そして音楽。『子供たちに音楽を届けたい』という想いがあって旅をしたので、音楽の力も取り入れたいと思いました。
実際に動こうと思ってから、いろいろな支援団体の活動を拝見しました。するとまた驚くことばかりでした。『田舎の町に、こ~んな大きな建物があってどうするの?』って。そこが支援団体の拠点であることもあって、人がたくさん働いていたんです。私たちが支援していたつもりのお金が、子供たちにダイレクトには届いていないということを目の当たりにしました。
当然のことですがショックもありました。支援活動をするためには組織が必要ですし、組織が大きくなるほどハード面のコストがかかる傾向は強くなる、それは流れとしては当たり前なのですが・・・。
「馬鹿正直ですけれど、欲しいと言われたものを届けたい」という考えを、私たちは抱くようになりました。そうして今でも手作りな感じのプロジェクトをさせていただいています。「バラと音楽、このふたつで何かできたらいいね」そういう友人レベルの話で進んできたのが、One of Loveプロジェクトの十年なんです。
──現地に赴き、支援される側、する側の両方を目の当たりにすると、その現実に引いちゃう人もいると思うんです。『想像していた状況とは違う!支援なんてやめちゃおう』と立ち止まる。しかし夏木さんは引くどころか、ご自身でプロジェクトを進め出した。前進するための原動力はなんだったのでしょう。
ご縁ですね。子供たちと出会っちゃったんだもの! 最初はね、「子供たちに音楽を届けよう」なんて、上から目線の旅だった。それなのに実際は、こちらがハッピーになって帰ってきました。
私たちは幸せな気分で日本の日常に戻ってきたけれど、現地にはもちろん生活がある。一度だけ訪ねて終わるというのは申し訳なく感じられて、継続したいと思いました。
たとえ仕事はいつかフェードアウトしても、このプロジェクトは死ぬまで続ける覚悟です。そういう活動になりつつあります。大変なことが始まっていますが、頑張ります。
もしもエチオピアに行かなければ、もしも子供たちに会っていなければ、私は何も知らないままだった。プロジェクトだって始まっていなかったでしょう。これもご縁ですね。

──子供への支援のなかでも、教育に力を入れているのはどういった考えからですか?
エチオピアで感じたのが、子供たちには「学校へ行く」か「働く」しか選択肢がないということ。その子供たちの親に話を聞いてみると、「わたしは教育を受けられなかった。そうしてエチオピアにとどまって貧乏な生活をしている。だけど、勉強を頑張った兄弟は外国で働いている。勉強した人って勝ちよね」と言っていたんです。「子供たちには勉強させたい」という願いはとても強い。
字が読めない親たちはたくさんいます。たとえばバラ農園。出荷作業をしている建物に入ってみると、壁にバラの絵がいくつか描いてありました。50センチ、80センチ、1メートル、長さの異なるバラの絵です。そこで働く人たちはバラを仕分ける時は、壁の絵に一本一本バラをあて、長さを確認しているというわけ。数字も文字も読めないからです。
教育がないということは誇りを持って働けないということ。親御さんたちにも、働くことは素晴らしいんだと、生き生きしてもらいたいと思いました。
教育は大事です。私たちは当たり前の様に教育を受けてきました。だからこそ『教育がないということが・・・あるんだ!』と、エチオピアの現状にびっくりしたんです。
──限られた選択肢のなかで、生きていく姿を目の当たりにしたんですね。
選択肢が「学校へ行く」か「働く」かなら、生活のために働こうと思うでしょう。勉強したい子、才能のある子はきっとたくさんいるでしょうに。
近年はISが大きな影響を世界に与えていました。教育があるかないかで、子供たちの未来は変わってくるんじゃないかしら。
私はまず教育が大事だと考えていて、微力だけど「何かできればいいな」と思っています。自分にとって当たり前のことが実は当たり前ではないということを目にし、心が動いたものだから。
たとえば日本でも安倍首相が、アフリカへは多くの援助をしているらしいんですけど、『そのお金ってどこへ消えているんだろう』と考えるようになりました。そういう疑問もすごくあるし、怒りもあります。
で・も! そうやって怒っていてもしょうがない。誰かが一歩ずつ動き出さなきゃ、という気持ちがフッと湧いて来たんです。

──怒っていてもしょうがない、というのは今の時代いろいろなことに言えますね。そこで怒って終わりか、次へと進むエネルギーとするか。このふたつの違いは大きい。
本当に微力ですけれど、ご縁が出来たからにはやらせていただこうと思っています。
今年で十年目を迎えたGIGだって、最初の頃は「十年経ったら武道館でライブが出来るかな!?」なんて、みんなで言っていたけど全然できない(笑)。
でも、エチオピアの子供たちから「成績があがった」「パソコンを使えるようになった」とか、嬉しいニュースをもらえると『よかった』と思えるの。出来ることには限界がありますから。
「人のために動きたい」友人たちと一緒に、自分たちで出来る範囲で続けていきます。音楽とバラとみんなとで、One of Loveプロジェクトをこれからもずっと。
疑問、怒り、前進。夏木マリさんの内側で燃えるパワーが、世界を少しずつハッピーにする。「人のために動きたい」とほころぶ笑顔からは、外見も内面も素敵に年齢を重ねていることが伺えました。いくつもの花びらが身を寄せ合い咲き誇るバラのように、手と手を取り合いながらOne of Love プロジェクトはこれからも進んでいくようです。「そろそろ自分も何かをしたい」あなたにもそんな気持ちが芽生えたなら、小さい花から咲かせてみるのはいかがでしょう。
次回のインタビューでは俳優、パフォーマーとしての夏木マリさん、さらには2011年にご結婚されてからの日々についてお話しを伺います。

写真:田形千紘 文:鈴木舞
編集・構成 MOC(モック)編集部
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