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石井宏子さんが語る、温泉ビューティ研究家になった理由とは?

 

温泉の魅力を伝え続けている温泉ビューティー研究家・石井宏子さん。多くの媒体で連載を持ち、全国を飛び回る石井さんですが、かつては外資系会社の役職につき、部下を持っていたキャリアウーマンでした。そんな石井さんに温泉の魅力を聞いていく本シリーズ。第一回は、本当に皆が知りたい温泉の情報を伝えるという、誰も通ったことのない道にただ一人で踏み出していった、石井さんの勇気の源泉を発掘します!

 

楽しい温泉旅行が一変した出来事

 

――温泉ビューティ研究家になられる以前は、どのようなお仕事をされていたのですか?

 

外資系の化粧品会社など、ラグジュアリーブランドを扱う会社でマーケティングや広報の仕事をしていました。会社を辞めて、旅人になってからはもう13年になります。元々宿に泊まる旅が好きで、いろいろな宿に泊まっているときに、将来この経験を本にでもできたらいいなとは思ってライフワークにしていました。

 

――温泉旅行を始められたきっかけはあるのですか?

 

私は母が早くに亡くなって、父と私でゴルフなどに一緒に行っていたのですが、だんだん父もシルバー世代になってくると、たくさん歩く必要があるゴルフに行くのも止めてしまったんです。。そのとき、親子で温泉にでも行ってみようかと話をしたんです。私が場所を選んだのですが、やっぱり老舗の日本旅館がいいなと思って行ったんですね。父は、疲れたときに杖があったら楽だから一応持って行くよというくらいの感じで杖も持参して。温泉宿について、じゃあ後でねと大浴場で分かれて入って、部屋に戻って父に「お湯どうだった?」と聞いたら父は「実は入らなかった」と言うんです。

 

――せっかく温泉宿に行ったのに?

 

そうなんです。父が、大浴場の扉をがらっと開けてみると、お風呂が岩風呂だったらしいんです。それを見て「滑ったらどうしよう」と頭によぎったらしいんです。。入ろうか入るまいか考えて、「娘と旅に来ただけで楽しいんだから、無理に入らなくてもいいか」と思って入らなかったと言っていました。それを聞いて、本当にショックでした。そこまで考えて、宿を選ばないと、父も楽しめないんだなと痛感した出来事でした。

 

 

「温泉宿」に必要とされる情報とは?

 

――シニアになった両親と温泉に行くときは、お風呂のつくりに至るまで調べた方がいいんですね。それって実際に可能なんでしょうか……。

 

実際は、どこに行こうかと宿を調べても、世の中にある温泉宿の情報は、どんな料理が出て、どんな部屋で、どんなお風呂かということしか書いてなくて。本当に必要な情報は書いていないんです。

バリアフリーを完備してほしいというところまでは必要としなくても、ちょっと必要な所に手すりがあるとかいうものが情報として欲しいんです。それがどこにも書いていなくて、行ってみないと分からないんです。

だから私がいろいろな温泉宿に行って、調べてたことをまとめて“シルバーミシュランブック”みたいにして出せたらいいなと思いました。そうやって父と一緒に行ける温泉宿を調べていくうちに、せっかく温泉に行くんだったら、温泉のこともちょっと勉強しようと思ったんです。

温泉のことを将来本にするとき、温泉の知識もあった方がいいだろうと思って、温泉に関する本を読んだり、いろいろな講座に行ったりというようなことを始めたら、どんどん温泉の魅力にはまってしまったんです。そうしているうちに気付いたのですが、美人の湯や美肌の湯はどこにでもいっぱいありますが、どこがどう美人になるかとか、温泉の成分の何がどう働いて美肌になるのかとか、そういう解説がどこにも書いていないんです。当時化粧品会社でマーケティングの仕事をしていたので、例えば新製品出すときは、「この化粧水に新しいこういう成分が入っており、それが肌にこのように働いて、肌がこのくらいクリアになります」などと説明しますし、美しくさせるものはそういうものでしょうという思いを“美人の湯”とか“美肌の湯”も、この温泉の成分が肌にこう働いて美人になります、美肌になりますというのが絶対根拠があるはずだと思いましたので、それを調べ始めました。

 

 

旅人として生きることを決意させた友人の一言

 

――温泉ビューティー研究家になられたきっかけだったんですね。

 

温泉について調べ始めたころはブログが世の中にはやり始めたころで、温泉について調べたことなどをブログに書いていたら、取材の依頼や、セミナーの依頼がブログ宛てに来るようになりました。今の時代は本業があっても、副業が許される余地がある風潮がありますがそのころは企業の広報部長なんて特にはたとえ休みの日でも、会社のPR以外のことでメディアに出たりすることは許されない時代でした。

そういう状況下に置かれて、た考えたことは、「これは神様が私に温泉と本気で向き合う気はあるのか聞いているんだ」ということでした。

だからこれは真剣に、温泉と向き合ってみよう、旅をたくさんして、温泉のことをもっと理解しようと思って、会社を辞めることにしました。

 

――それは思い切った決断ですよね。会社勤めのときは地位もあり年収もかなりのものだったと思います。なぜ思い切ることができたんでしょうか。

 

そうですね。会社員をしていれば、決まったお金が頂けるから、安定はしています。辞めようと思ったときは、辞めて大丈夫かなという不安な気持ちはもちろんありました。でも当時、フリーランスの旅の仕事をしている友人と話をしたときに自分の行きたいところに行って記事にすることが出来ていいなと言ったら、「石井さんだったらできるよ。やってみたら?」と言ってくれたんです。そのとき、ちょっとどうしようか悩んでいたことが、「そうだよね!」と吹っ切ることができたんです。「やりたいことが決まっているのに、我慢している日々はなんだろう」「もったいない」と。人生の中で、これがやりたいと思っているなら、それで食べていけるかということを最初から考えるのが図々しいのかなと思えました。

 

同じことを一貫してやり続ける

 

――なかなかそこまで思い切ることができる人もいないと思います。どうすれば、その一歩を踏み出すことができるのでしょうか。

 

まずはやりたいかどうかが大切だと思います。やりたいことをやるために、生きていくための生活の手段は、別に会社勤めじゃなくてもいいと思います。アルバイトをして旅にいくお金を貯めて行けばいいわけです。会社を辞めるときには、支えていかなければならない家族はいなかったので、自分一人生きていくのは何とでもなると思いました。まずはやりたいことを今すぐやらないといけないと思って、決意した次の日に辞表を持っていたんです。

私にとってそのときの友人の声は天の声と同じで背中を押されたんですね。とにかく一回辞めて温泉の研究に集中してみようと思って。そうしたら連載のお仕事とか、そういうものがありがたいことに途切れずに入ってきて、この道のまま、今に至っています。

 

 

――人生の中で、かなりの方向転換をされたのですね。

 

会社員を続けていくと、どんどん役職が上がって職種というよりも人を管理する、お金を管理する仕事になっていきますそしてそれが自分にとってやりたいことかと言われると、そこにはあまり執着はなかったんです。

化粧品というラグジュアリーなものから温泉へというと、すごく違うところに飛び込んだ感じがするかもしれないんですけれど、私は旅は人生最高のラグジュアリーだと思っているんです。例えば、紙袋でも、有名ブランドのバッグでも、物を運ぶのは同じですけれど、紙袋ではなくお気に入りのバックを持つことで、幸せな気持ちになれると、なんとなく分かっていただけると思います旅も同じことで、一生旅に行かなくても生きていけるけれど、旅をすることで、人生がすごく豊かになるし、自分の心身も健康になります。旅は最高のラグジュアリーだと思ウノです。

だから自分としては、化粧品やラグジュアリーブランドのPRしたりマーケティングをしていたりしていたころと、この宿はどこがいいか、どう楽しかったとかを書くことは、全然違うことをしている意識は全くないんです。自分がいいと思っていることを、自分の経験で伝えていくということをし続けているだけで、全然違うことをしている感覚は全く無いんです。

 

温泉ビューティ研究家になった道筋を語っていただいた石井さんは、会社員のときも、独立されてからもずっと同じ道を歩いていることを語ってくれました。自分の軸がぶれていない石井さんは、語る口調に意志が感じられ、非常にかっこいい女性でした。次回からは、そんな石井さんオススメの温泉が登場します!

 

 

 

 

 

~大人の温泉「美」と「湯治」~ 石井宏子氏インタビュー第2回

~大人の温泉「心身のリセット」と「非日常」~ 石井宏子インタビュー第3回

 

写真:米田樹央 文:安藤紀子

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
人生100年時代を生きる、
大人のためのマガジンMOC(モック)
Moment Of Choice-MOC.STYLE

 

PROFILE

石井 宏子

温泉の美容力を研究する日本でただひとりの温泉ビューティ研究家。旅にでかけて宿に泊まることをライフワークとし、トラベルジャーナリストとして取材・執筆、講演など年の半分は日本・世界を旅する。温泉地の自然環境にも着目し、ドイツ・ミュンヘン大学アンゲラ・シュウ気候医学教授に学び「気候療法士」資格を取得。温泉、自然環境、食事、宿での過ごし方などを通じて、心も体もきれいになる新しい旅“ビューティツーリズム”を提唱。
外資系化粧品会社、海外ブランドのマーケティング・広報の経験から、温泉地や温泉宿のブランディングやバリューアップもサポート。

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