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3.11から七年。防災ツイッターを通して考えたい私たちの「防災力」。警視庁災害対策課インタビュー第3回。

 

 

あの未曾有の大震災から七年の時が経ちました。私たちに強烈な記憶を植え付けた一方で、少しずつ災害意識が薄まってきているのも事実です。そこで、災害対策課のみなさんと一緒に、今一度「防災力」について考えていきましょう。

 

 

――災害対策課のみなさんが考える「防災力」とは?

 

「自らの生命は自らが守る」いうことは、一番のキーワードだと思っています。地域防災係の言う「共助」もキーワードですね。

ただし、防災の第一歩はやはり自分のことは自分で守ること。そうでなければ誰もが危機的な状況に陥っているなか、避難することさえ難しくなってしまいます。では、自分を守るためには何をすればいいのか。そのことを伝えるために、我々の課では地域防災係が指導や訓練を実施し、対策を行っています。

地域防災の取組に参加してくださるのは、ご年配の方が多いですけど、最近は防災ビデオなどを見ていただき、災害発生時にどう行動するのがよいか知ってもらうようにしています。

若い学生さんの姿をよく見るようになりました。企業に呼ばれて講演することもあります。幅広い方が防災意識を抱いてくれていますね。

 

 

 

 

――自分自身の防災力を高めるためには、まずは学ぶことから始めましょうということですね。「共助」の方でいいますと、現代は地域社会の人間関係が希薄になっていることが懸念です。

 

地域住民同士のコミュニケーションは、たしかに減っているように感じることもあります。地域防災係としましては、近所付き合いや町内会への参加に、積極的になっていただくよう声をかけています。

お隣さん同士でも顔さえ知らない人も多いようです。だからこそ「地域の祭礼などのイベントに参加しましょう」と発信しています。災害が発生した際、家から飛び出してみたものの知らない人だらけ、避難所で知った顔がいなくて孤独、というのはなかなか辛い状況なんですよ。防災における共助の力を強めるには、まずは日々の人付き合いから。挨拶から始めていきましょう。

と言いますのも、警察や消防による「救助」には限界があるんです。被害状況が甚大ですと、警察などの救助が行きわたらない……。「助けるぞ!」とどんなに思っていてもです。しかし阪神淡路大震災では、隣近所の人同士で救助し合い、助かった人々の数は多いのです。こういったことは共助によるところが大きいですね。

一人ひとりの防災力を高めれば、もっともっと多くの人が助かります。そして共助のネットワークが密になれば、さらに可能性が広がります。そのための地域防災係の注力ですし、災害対策課のツイッターの情報発信ですね。

特にツイッターは人から人へ、どんどん情報が広まっていきます。信頼できる防災情報がより広範囲に浸透することを期待しています。

 

 

 

 

――災害発生に対して、警視庁はどのような対応を用意していますか?

 

災害発生時、対策本部で一番大事なことが情報収集です。具体的な対策は災害の状況や発生した場所などによりますが、情報収集活動に全力を傾注します。災害発生後1時間以内に被害レベルを集約し、その情報をもとに被害が甚大な場所へ機動隊を派遣します。道府県からの要請がきますので、それに応えて救助部隊を投入することも対応のひとつですね。そのための訓練を日々、計画的に行っています。

こういった対応を担当しているのは、災害対策課だけではありません。例えば行方不明者の担当は、生活安全部。ご遺体が発見されると、鑑識事案なので、刑事部が動きます。警視庁の管轄を10個に分けた各方面本部単位で、色々な災害を想定し、災害図上訓練なども行っています。

そのほか、警視庁災害対策課では警察署への訓練指導を行っています。首都直下地震等の災害が発生した場合、まず一次的な負担がかかるのが警察署。警察署がスムーズに動けるように、訓練指導は重要だと考えています。

日々の訓練は非常に重要ですね。「災害を防ぐことはできない」ということは、我々も痛感しています。地震もそうですし、台風、豪雨……。防災を完璧に行うことは難しいんです。

そこで災害の機会を減らす「減災」を目指して課員一同、努力し業務に臨んでいます。防災ツイッターもその業務のなかのひとつですね。

 

 

 

 

――「減災」は訓練から。日常でできる訓練は災害対策課の防災ツイッターでできるところからチャレンジしていきたいものです。そのほか備えておきたいこととして、防災用品と食料にういて教えてください。

 

防災用品・備蓄食料の例がこちらです。大災害を体験した方々の声を参考にしています。

 

☆備えておきたい防災用品

・水 [なんといっても生命線。飲料用としても、生活用としても必要不可欠。]

・懐中電灯 [停電が発生しても行動できるように明かりは必須。ツイッターにもある蓄光テープを貼ることで、真っ暗闇でも懐中電灯を発見しやすくなります。]

・携帯ラジオ[情報収集のために!]

・靴[避難した際に瓦礫などでケガをしないように靴を準備しておきましょう。]

・笛[声を出せない状況でも、自分の居場所を周囲に知らせることができるように。小さな笛でOK。]

・タオル[体をふく、寒さから身を守る。その他活用の幅が広いお役立ちグッズ。]

・食料[缶詰やレトルト食品のうち、温める必要がなくそのまま食べられるものが便利。]

 

――防災用品などはどこに保管しておくのがいいのでしょう。

 

一番は玄関、次に寝室です。防災用品は嵩張るのでスペースを取ってしまいますが、床下収納にしまってしまうと、開け口が瓦礫でふさがってしまうなどの事態が起こりえます。すぐ取り出せる場所に保管しましょう。実際の災害発生時を想定すると、玄関と寝室が保管場所としてよいと思います。リュックサックなどに入れておくと持ち運びが楽ですね。

持病持ちの方は常備薬をリュックサックに入れておくと安心です。それとツイートもしたのですが、メガネですね。

メガネがないと生活に支障をきたすという方は是非。視力の確保という観点にハッとした方は多いようで、ツイッターの反響も大きかったです。予備の眼鏡や老眼鏡を備えておくのは重要だと思いますよ。

 

――ユニークな切り口のツイートが注目されがちですが、内容はどれも真っ当で役立つツイートですよね。

 

役に立つ災害情報を発信するというのは基本姿勢ですね。警視庁ということで、まず初めにみなさんが抱くイメージはどうしても「堅い」ものになりがちですが、そこを少し崩すようなツイートを投稿しています。そこがウケて注目していただいているという側面はあるのかもしれません。

一方で災害に関するみなさんの関心によるところもあるのでしょう。3.11から7年を迎え、マスメディアでも特番を組んでいましたが、番組数の多さが関心の高さを物語っているように思います。やはり「あの災害を忘れてはいけない」という想いが皆さんの心のなかに根付いているのではないでしょうか。

3.11で我々の胸に刻まれた教訓のひとつが、デマの拡散による混乱です。大変な状況において、混乱を招く事態は避けなければなりません。今、これだけ災害対策課のツイッターが注目され、災害情報の伝達ツールとして機能し始めています。デマに対する火消しと、必要な情報発信。このふたつの役割を、防災ツイッターで担うことができればと期待しています。災害対策課として有事の際も計画的に、必要な信頼できる情報を発信していきたいと考えているんですよ。

 

 

 

 

――フォロワーの増加、広まっていくリツイート。インターネットを通して警視庁と市民の距離感が縮まっているのは新鮮です。

 

注目度が高まり、「変な投稿はできないな」と身が引き締まっています。みなさんにフォローしていただいていることは、課員のツイッターへの意欲、防災活動の原動力になっています。

リツイートやいいねの数も正直……私たちみんな気にしています!これまで「目標フォロワー数〇万」という数値はまったく設定していなかったんです。ただここ一年間のフォロワー数の伸びを受けて、「ここまで来たら100万突破を目指そうじゃないか」という雰囲気が出てきています。確かな防災情報を発信し、信頼を得ながらフォロワーが増えていくことが目標です。

災害が発生した場合にツイッターが果たすべき役割も考えています。有事の際、我々のツイートに期待されている情報発信がありますので、災害に関する信頼できる情報を発信する、という根底の想いは変わりませんね。課員みんなで苦心しながら、少しでも役に立つ情報を届けたい一心です。

 

 

 

 

――「信頼できる情報を届けよう」という想いはツイートを拝見しているとひしひしと伝わってきます。「やってみた」等のツイートは試行錯誤の軌跡が伺えて、より実践的でためになるような内容ですね。

 

どんな情報発信をしていこうかと考えたとき、難しい情報を発信してもなかなか反響はよくないだろうと思ったのです。できるだけみなさんが簡単に実践できる内容であることを目標としています。

キャッチした防災情報をツイッターで投稿する前に、実際に試すこともしばしばです。情報を鵜呑みにしてツイッターで発信してみたものの、「ツイート通りにやってみたのにうまくいかなかった」という感想が起きるような事態はなるべく避けたいですね。課員は自分自身や家族と一緒に、防災情報を試してくれているようです。

本当にいろいろなことを実践していますね。「水でカップ麺も食べてみたら、味は予想を裏切っていまして。投稿者とその家族にはなかなか好評だったようですし、一方で「食べられない訳ではないけどそこまでおいしくなかった」という意見も課内では出ています。

 

――そういった正直な感想を発信してくれるのもリアルです。やってみないと気づかないことはありますし、そのちょっとした気づきが大きな助けになるのでしょうね。懐中電灯に蓄光テープを貼るアイデアは「なるほど!」と目から鱗でした。

 

あれは課員の奥さんが「真っ暗な中で懐中電灯を探すのが大変」と困っていたらしく、それならテープを貼ってみようと工夫したそうです。

 

防災情報ツイッターを始めてから、我々の防災意識もさらに高まっています。「より実践しやすい方法」といった観点で防災情報を見るようになりました。ツイッター配信にはがっちりとしたマニュアルがありませんし、トップダウンでもありません。かといって課員がオリジナルで防災情報を考案しているわけでもなく……。

新聞や雑誌、インターネットから役に立つ情報を見つけて取り上げたりしています。そのうえで自ら実践し、「この防災情報は役に立つと思います、ぜひ試してみてください」というものを発信しています。

写真や動画付きで「こんな防災活動をやってみました」と発信する等、わかりやすい情報発信はなんだろう?と、手探り状態で取り組んでいます。ツイッターに不慣れだった課員が「私も写真を載せてみたい!」とチャレンジしてみることもあり、投稿スキルが少しづつ上がっているようです。だからでしょうか、課員による手作りのような味わいがツイッターから感じられることがあります。

 

 

 

――モチベーション高い防災ツイートから今後も目が離せません。災害対策課として、これからの防災ツイッターへの意気込みをお願いします!

 

日々のツイートに注目が集まり、みなさんからユニークだとお声をいただくことが多く、とてもありがたく感じています。ですがみなさん、我々は正統派の防災情報も発信していることもお忘れなく!台風が接近しているときはその旨を発信しています。そういった情報への反響はあまりないんですけどね。

私たち災害対策課のツイッターを通して、みなさんの防災力が高まることが一番の目標です。防災力を支えるキーワードは「自分たちのことは自分たちで守る、自助」、それから「共助」。ツイッターで発信している防災情報は子どもからお年寄りまで実践できるものが多くあります。ツイッターを通して、私たちと一緒に訓練しているような気持ちで防災活動に取り組んでみてください。

信頼できる防災情報がみなさんに届くよう、リツイートやいいねでより多くの人に広まっていくよう、警視庁警備部・災害対策課一同、これからも日々ツイッターでつぶやいて参ります!

 

 

 

 

 災害を完全に防ぐことはできなくとも、私たちにはできることがあります。防災力を身に付けて、たくましくしなやかに災害を乗り越えていく。そのために日々、小さな防災から始めてみませんか。身の回りのものの活用、周囲の人との挨拶。どんなことをしてみたらいいか迷ったら、警視庁警備部・災害対策課のツイッターを覗いてみれば、一歩はすぐに踏み出せるはず。防災ツイッターのこれからは、私たちの安全な未来に繋がっていくのでしょう。

 

写真:田形千紘     文:鈴木舞

 

 

※「反響大ツイートベスト10」以下のランキングはこちら。

第11位 ホテルの避難グッズの使用法(29/11/24)

第12位 水漬けパスタ(29/1/18)

第13位 キッチンペーパーで簡易マスク(29/8/7)

第14位 蓄光テープで簡易防災(30/3/1)

第15位 期限切れの保存水の利用方法(29/8/23)

第16位 簡単な毛布のたたみ方(29/11/6)

第17位 カイロの効果的な貼り方(30/1/15)

第18位 期限切れクラッカーでハンバーグ(30/1/26)

第19位 サラダ油で簡易ランプ(29/8/30)

 

 

 

注目度急上昇中!警視庁・防災ツイッターが今面白い! 警視庁災害対策課インタビュー第1回。

ためになる!試したい!教えたい!防災Tweet ベスト10! 警視庁災害対策課インタビュー第二回。

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

警視庁 災害対策課

山下桂一警視
1963年東京都生まれ。1982年警視庁入庁。青梅署警備課長、第四機動隊副隊長、警察庁長官官房国際課課長補佐を経て、2016年2月より現職。入庁以来、主に警備警察に従事。

村田尚徳警部
1974年茨城県生まれ。2003年警視庁入庁。警察署、機動隊などを経て、2017年4月より現職。熊本地震時、現地で災害支援活動に従事。

横井吾朗警部補
1976年神奈川県生まれ。2001年警視庁入庁。警察署、機動隊、警察学校教官などを経て、2017年11月より現職。主に広報啓発活動に従事。

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