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恋のあとさき 実話編【2】 元同級生の誘い・・・会うのが怖くて、それでも会いたくて

 

 

恋のあとさき ~実話編【2】〜

事実は小説よりも奇なりという。不倫の取材をしていると、本当にそうだと実感する。意外な相手と意外な出会いや再会をして、不倫に陥っていく女性たちに計算や打算はない。

「本当の愛」を求めて、愛に身を焦がす自分を求めて危険だと承知の上で関係を続けているのだ。この話は実話である。

 

 

アラフィフになると、かつての知り合いや同級生、あるいは元カレなどとの再会が俄然増えてくる。素性がわかっているだけに女性も安心だし、若いころのお互いを知っている分、親近感も強くなるのだろう。

「私もかつての同級生に再会して心が揺れました」

そう言うのはユイコさん(51歳)だ。3年前、高校を卒業してから初めてクラス会に参加した。クラス会自体は何度かおこなわれていたのだが、ユイコさんはなかなか行くことができなかった。

「私は古いタイプの女なのかもしれません。子どもたちを置いて出かけることがなかなかできなくて」

専門学校を卒業して入った会社で職場結婚。彼女は退職して専業主婦となった。25歳で長男、28歳で双子の女の子を産んだ。娘たちが大学に入学し、成人式も終わったころに開かれたクラス会に、ようやく出席する気になったのだという。

「子どもたちがみんな大人になって、ほっとしたのとなんとなく寂しくなったのと。複雑な気持ちでいたところへクラス会の誘いがあって、気分転換に行こうかな、と。夫も『最近、元気がないなあ。行っておいで』と言ってくれたので」

当時ほのかに恋心を抱いていたTくんも来るとわかっていた。あの頃に戻ってみんなでしゃべってみたいとも思った。

「楽しかったですねえ。高校時代の友だちって、会うと高校生に戻ってしまう。夕方からのクラス会で3次会まで楽しんで。Tくんですか? 変わってなかった。いや、見た目はお互いに変わったんでしょうけど話してみたら、あの当時のままでした。その日は連絡先を交換して別れましたが、彼からは翌日すぐ連絡が来ましたね」

今度ふたりで食事でもしない? そんな誘いに彼女の胸が高鳴った。「男性からの誘い」というよりは「元同級生だったTくんの誘い」であり、そこに後ろめたさはほとんどなかった。

「1週間後くらいかな、Tくんと食事に行きました。夫にも子どもたちにも『先日会った高校時代の女友だちと女子会』と言って。やはり男性と食事に行くとは言いづらかったんですよね」

後ろめたくはないが、正直には言いづらい。すでに女性の心の中には恋心が芽生えているのではないだろうか。

 

 

酔った勢いでホテルへ行ったものの……

 

Tくんとの食事はとても楽しかったとユイコさんは振り返る。店を出ても別れがたく、ふたりでぶらぶらと散歩した。彼の手が彼女の手を握る。酔っていたこともあって、高校生のようにはしゃいでしまったと彼女は言う。

「ふと気づいたらホテルの前。彼が何も言わずに私をじっと見つめました。その目に吸い込まれるようにホテルにも吸い込まれて」

ところが部屋に入って彼に抱きしめられたとたん、ユイコさんは反射的に「いけない」と彼の胸を突いた。

「あなたのことは好き、大好き。でも私は結婚しているからできない、と思わず言いました。彼が『オレも結婚してるよ』と。そう、それはわかってる。だけど浮気はできない。すると彼が『浮気じゃない、オレは本気だ』『好きなんだよ。この年でやっと本当に好きな人と巡り会えたと思ってる』って。その日はずっとそうやって話して、結局、何もしないで帰りました」

その日から彼女は本気で考えた。彼と「恋愛」を始めてしまっていいのだろうか。子どもたちは全員大人になった。夫とは仲が悪いわけではないが、Tくんへのときめきはまた別のものだ。このままTくんと「ただの友だち」でいたほうがいいのか、自分はどうしたいのか。考えても考えても答が出なかった。

「答が出ないから、彼に連絡して『答が出ない。会いたいけど会えない』と言ったら、『答を探すために会おう』と言われて。今思えば、結局、ふたりとも会いたくてたまらなかったんですよね。それを素直に行動に移そうとしたのが彼で、私はとにかく逡巡しまくっていたような気がします」

会うのが怖かった、とユイコさんは言う。今度会ったら、おそらく肉体関係をもってしまう。それは家族への裏切りであり、「不倫」と後ろ指を指される行動でもある。なにより彼女自身が、「不倫は絶対にいけないこと」と思い込んでいた。

「芸能人の不倫ニュースなどを見ると、本気で腹を立てているタイプでした。自分が結婚しているのに、あるいは相手に配偶者がいるのに恋愛だなんて、と。自分はそういうだらしない行動はとらない人間だと思っていたんです」

連絡をとらなければ忘れられるかもしれないと思い、彼にもそう告げて連絡を絶ったこともある。だが2週間後、彼女は「私も答を探したい。会いましょう」とメッセージを送ってしまった。

 

 

会った瞬間、涙が流れた

 

前回会ってから1ヶ月後、ふたりはようやく再会。待ち合わせたカフェでTくんの顔を見たとたん、ユイコさんは涙を流してしまったという。

「こんなに会いたかったんだと改めて感じました。もう我慢していられなかった。そのままカフェを出てふたりで黙ったままホテルへ行きました」

彼の腕の中でもユイコさんは泣いた。「泣いてばっかりだね」と彼に笑われたが、あまりの幸せに涙が止まらなかったのだという。

「子どもたちが大きくなって、あとは夫とふたり老いていくだけだと思っていたんです。私は仕事もしていなかったし、拠って立つところがなくなったような気がしていた。自分の人生、これでよかったんだろうかという思いもありました。そんなとき彼と再会して……。彼がすべてを埋めてくれるわけではない。そんなふうに依存してはいけない。それはわかっているけど、彼と関係をもった当初は彼だけが生きがいになっていました」

彼は最大限、時間をとってくれたが、お互いに家庭を持つ身。会えないことも多々あった。ユイコさんは自分自身がぐらぐらと揺れているのを感じたという。

「このまま彼だけを頼りにしていてはいけない。そんなとき知り合いが、『子どもも大きくなったんだから働いてみれば?』と誘ってくれて。私、昔から裁縫が大好きだったのでパートで洋服を縫う仕事を始めました」

一方で近所の若いお母さんから子どもの服を縫ってもらえないかと頼まれるようになり、実費とわずかな手間賃で作ってあげると、それが評判となった。今では注文が増えて、デートの時間を作り出すのが大変だと笑う。

「この3年で私の人生、激変しました。不倫なんて、と顔をしかめていた自分が不倫しているんだから、価値観も変わった。夫には申し訳ないと思っているけど、彼が言ったようにここから先は“自分の人生”も考えていきたい。だから家族には絶対に気づかれないよう万全の注意を払っています。それは彼も同じ」

性に対しても考え方が変わった。そんなふうに考えたことはなかったのに、今は「彼とのセックスで気持ちも体も柔らかくなっていく」のを実感している。そして自分の体と彼の体の区別がつかなくなる瞬間も味わえるようになった。

「今は月に2回くらい会えればいいほう。我慢を重ねてやっと会えるから喜びも大きい。そして会うたびに私の快感も深まっていきます。こんなこと、誰にも言えませんけど」

心身の喜びが大きいほど、添い遂げられない哀しさも深い。だがその苦しさも体の中にきちんと内包することで、ユイコさんは自分がたくましく、そしてやさしくなったように感じると言った。

「結婚生活は責任をもってまっとうする。そして万が一、どちらもひとりになったら一緒に暮らせる方法を考えよう、ということになっています。一緒に暮らせなくてもいい。そんな大きな望みはもっていません。私はたまに彼に会えればそれでじゅうぶん……」

満たされた中にほんの一筋、せつなさの残る彼女の表情が、なんとも色気を帯びていた。

(了)

 

イラスト:アイバカヨ

 

 

 

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編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE
亀山 早苗

亀山 早苗

1960年東京生まれ。明治大学文学部卒業。フリーライターとして、女性の生き方を中心に恋愛、結婚、性の問題に取り組む。『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『不倫の恋の決断』『妻と恋人』『渇望』『オンナを降りない女たち、オトコを降りるオトコたち』など、不倫や婚外恋愛に関する著書多数。『渇いた夜』、『愛より甘く、せつなく』などの小説作品やノンフィクション作品も手がける。

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