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大嘗祭で日本の原点を発見。グローバルに発展してきた古代日本のミステリー

 

 

2019年に着々と準備が進められ、無事に終了した伝統儀式「大嘗祭」。

前回のインタビューではこの大礼の振り返りや舞台となった大嘗宮の意義などを、古代日本史の研究に熱意を注ぐ林博章氏に教えていただきました。

今回のインタビューでは、実は国際的な文化の影響を受けてきたと思われる古代日本の発展や、現代日本人が気づくべき大嘗祭に込められたメッセージについて考察をしていただきます。

 

 

──大嘗祭にも海外の文化の影響が見られるということですが、たとえばどんな南方系の影響がみられますか?

 

日本の文化の源流は神話、食、衣服、習俗、文化などあらゆる面において、中国南部や東南アジアなど南方系からの影響があると考えられます。

たとえば悠紀殿と主基殿に、千木(ちぎ)と鰹木(かつおぎ)があります。

屋根の上の交差した木材が千木、横に置いた丸太が鰹木です。この文化は雲南省の少数民族の家屋に見られます。

日本を代表する神社は三重県の「伊勢神宮」は高床式構造ですが、こちらも南方系の影響とされます。

雲南省など中国南西部の山岳部でも高床式構造の住居で少数民族は暮らしています。

高床式で暮らし、下部で豚や鶏を飼っています。生活しやすい二段構造になっていました。

生活と飼育ができ、虫や蛇などから身を防ぐことができます。

大嘗宮や日本の神社にも鳥居がありますが、鳥居も南方系の文化と共通点があります。

大嘗宮はそういった伝統を今でも受け継いでいるんです。

 

 

 

 

──大嘗祭を通して2000年以上続いた文化を受け継いできた歴史が垣間見えました。世界からの影響を受けてきたのが日本なんですね。

 

そうです。大嘗宮からグローバルな視点が見えて、私も嬉しかったです。

日本は海に囲まれていますから、古来からさまざまな渡来人がやってきていました。

日本人は入ってきた文化を取捨選択し、風土に合ったものを取り入れ、洗練させてきたのでしょう。

その最上級のものが大嘗祭であるといえます。

 

──大嘗祭は「和」の儀式というイメージが強いですが、本当にグローバルですね。

 

阿波忌部氏がお供えしていたサトイモにも物語があります。

サトイモは、平安時代の『延喜式』に大嘗祭の由加物として麻殖忌部が調達するものでした。

私は日本文化の源流を求めて雲南省の調査に行ったことがあります。その際、都市をまわるたび、市場を視察しました。

そこでは、サトイモ、こんにゃく、納豆、味噌、オコワなど、日本ではおなじみの食材が並べられていました。

雲南省の人たちはネバネバモチモチ食感を好むようですね(笑)。

ちまきや赤飯、寿司など日本でも親しまれている食文化と通じるところがあります。

それは佐々木高明氏が、照葉樹林文化論として提唱しました。

イザナキ・イザナミは日本創生の神様として知られています。

その二神の神社は、徳島には「伊射奈美(いざなみ)神社」として美馬市穴吹町や美馬町にまつられています。

中国には、伏義と女媧という男女が出てくる古代神話があって、それが日本に伝わり、イザナキ・イザナミになったのでしょう。

日本だけを考えるんじゃなく、いろいろなところを辿ると日本のルーツが見えてきます。

国際交流していかないと!

 

 

 

 

──大嘗祭にはいろいろなものがつまっているんですね。

 

2千年間の歴史を集約したものが大嘗宮です。

もしかしてこんなに感動しているの私だけかな(笑)。

ただし大嘗祭宮には議論がありまして、屋根の問題です。

原点を踏襲するなら茅葺屋根での復元なのですが、お金の面や技術面で板葺になりました。

大嘗祭は天皇陛下が変わる時のみ行われますから、文化を復興する意味でも日本文化の保全のためにも、グローバルな意味で世界の方々に日本の文化の神髄を紹介するためにも、あり方を考えてほしいですね。

次の時代に私たちが何を残すのかをみんなで考えるべきでしょう。

原点をどのようにして残すのか、ということです。

 

 

 

 

──しみじみとですが、日本の原点とは何か確認できるいい一年でした。

 

たとえば弥生時代にお米が伝わったときの日本人の衣服の素材は、ほとんどが麻でした。

麁服が調進される意味はそこにあると思うんです。

日本にお米が伝わったときの原点となる織物を復元しているのではないでしょうか。

阿波忌部氏が作る麻の織物はすごいんです。

麻の種まきから始まって、栽培、蒸して糸にする工程、紡いで織物にする工程……服ひとつ作るのも大変でしょう。

昔は食べ物がなくて死ぬのではなく、着るものが作れなくて凍えて死んでいっていた人が多かったと聞いています。

日本には四季があり、梅雨もある。

日本で生きていくためには衣の重要性が高かったので、衣食住の最初が「衣」なのではないでしょうか。

 

──麁服はそういう意味でも重要なんですね。

 

もうひとつ大事なポイントとして、繪服(にぎたえ)があります。

今年は愛知県豊田市稲武町から調進されました。

弥生時代は麻織物が大半でしたが、途中から養蚕文化が入ってきたのです。

大嘗祭では歴史を再現し、麻織物の次に絹織物という順番になっています。

しかし、全国で養蚕している農家が少なくなっています。

50件ほどしかいないそうです。

日本人は四季に応じて服をつくり発展してきました。

ずっと日本人の命を守ってきた麻とは何か、養蚕とは何か、あらためて考えてほしいと思っています。

 

 

 

 

──林先生が思う大嘗祭の尊さをお願いします。

 

大嘗祭宮で天皇陛下が何をお祈りしているかというと、国民の安寧と幸せです。

自分のことを一晩かけて祈るという尊いことをしてくださっています。

祈りなんて、と思う人がいるかもしれませんが、いつの時代も最後は祈るしかないのです。

宗教というわけではなく、いつの時代にも祈りにはものすごい力があると思います。

高層ビルが林立する時代でも、AI(人工知能)の時代に入っても、人は文化や精神の原点を確認することが大事です。

原点を失うと根っこがなくなるので、薄っぺらく崩れやすくなります。

土台が崩れたら上も崩れてしまう。

日本の将来、何が起こっても、崩れそうな危機が訪れたとしても、大丈夫なように私たちは何を残し伝えていけばいいかと考えてみてください。

 

 

歴史的な一年となった2019年。

令和の時代は未来へ向かって進んでいます。

前へ向かいながらも原点は忘れずに、大嘗祭に込められた古代日本からのメッセージをつかみましょう。

 

写真:大久保嘉之 文:MOC編集部

 

 

 

 

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編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

林 博章

1965年(昭和40)徳島市生まれ。青山学院大学法学部卒。2005年鳴門教育大学大学院修士課程修了(地理学)。古代史研究家。市民・行政・産業界と連携し徳島や日本創生のための活動を展開。現在、忌部文化研究会会長

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