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日本の霊性と可能性。意識を上げて自らが変われば、世界が変わる!矢作直樹 氏インタビュー【第3回】

 

 

「日本に生まれながら自分の国のことがよくわからない」という気持ちを抱いたことはありませんか? 救急医療の現場で生と死の狭間に立っていた矢作直樹氏ですが、人類の歴史や世界情勢のターニングポイントにも興味をお持ちだそう。日本国の成り立ちや国柄にも造詣が深いのです。今回のインタビューでは矢作先生に、揺れ動く世界情勢における日本の意義や人生100年時代のしなやかな生き方についてお聞きします。

 

 

──矢作先生は多くの著書を書いており、日本人、日本文化について想いを綴っていらっしゃいます。2014年発行の『おかげさまで生きる』は、普段何気なく使いがちな「おかげさま」という言葉が持つ意味について考え直すきっかけになる一冊でした。人は目に見えない“ご縁”に助けられながら生きているんですね。

 

シンプルに言うと「許す社会にしましょう」ということです。生きにくいと感じる原因は、自分にあります。自業自得なんですよ。

たとえば医療。サービス向上を目指して医者や病院は頑張っていますね。しかし頑張れば頑張るほど満足度が下がる、という事実があるんです。

「この手術をすれば病気は治りますが、2人に1人は死にます」と言われたら『助かればありがたい。死んだらしょうがない』と思うことが多いでしょう。しかし医療技術が発展し「2人に1人」だったところが「1000人に1人」へ変わったらどうですか。999人は助かって当然だと思いますし、1人は怒りを感じます。どちらも満足していないのです。

 

──満足度を上げようとした結果、受け手から感謝の気持ちが消え始めているのでしょうか。

 

そうです。こういったことは医療に限らずどの業界でも起こりうることです。日本人は良かれと思い、勝手に努力をしてしまいます。

鉄道会社でいうと、東海道新幹線の平均遅延時間は24秒だそうです(2016年度)。すごいサービスレベルです。ところが実際に定刻から遅れてしまうと、クレームが入ります。遅延なく走っているときは、ほとんど誰にも感謝されていないというのに。

「足るを知る」の心が欠けてしまうと、幸福をもたらすはずの進歩が不幸を招くというパラドックスを抱えてしまうんです。皮肉的ですが、人間は努力をしない方がいいんじゃないかと思うときもありますね。目的が「満足度を上げる」ことであれば、サービス向上に力を入れることよりも心を磨くことの方が大事なんです。

 

 

 

 

──でも私たち「向上心を持ちなさい」と子供の頃から大人になった今でも言われ続けていますし、刷り込みになっているかもしれません。

 

向上心にプラスして「足るを知る」・「感謝する」ことですね。良かれと思って努力をしているんですけれど、大事なことは目的ですから。サービスの向上を目的にしてしまうと、手段が目的にすり替わってしまいます。そもそもは、「満足度をあげたい」から「サービスの向上」に取り組むのでしょう?

一人ひとりの意識が世界をつくっています。すべてがつながっていますから、人心の乱れによる影響は決して見過ごせないんです。

 

 

──足るを知る……! あらゆることを求め過ぎなのは現代人ならではかもしれません。古き良き日本の文化が変わってきているのでしょうか。

 

敗戦を契機にして、日本の文化には捨てられた側面があります。明治維新でもかなり削がれてしまった部分は多かったでしょう。

しかし戦後から今日に至るまで、日本はかなりの苦境に立たされています。昔ながらの継がれるべきものが廃れてしまいました。特に1985年あたりからグローバル化が進み、日本のみならず世界中で苦しい立場にある国が増えています。

 

 

 

 

──矢作先生は著作でも日本という国について論じています。生まれた国についてきちんとした知識を身に付けるには、やはり歴史や文化を学ぶ必要があると思いますがほかにどんなポイントがありますか?

 

本当の意味で国柄を理解するには、高次元世界の理解が必要なんです。日本でいうと神道です。

古来から日本の神事では、神職にある者が祝詞をあげますね。祝詞は音のエネルギーであり、こちらの世界が高次元と共振しやすくなるような状況をつくりだしています。神道では目的があって、祝詞をあげるという行動をとるわけです。「鎮魂帰神」などいろいろな言葉で呼ばれていますが、神おろしですね。

神道は文明人のものですから、祝詞にみられるようにある種の作法を必要としました。ですが縄文時代の人間はいつも中今で生きていましたので、作法がなくとも力がもっともっと強かったと思われます。実は縄文時代は、凄く進んでいた時代なんですよ。

 

 

──著書によると、日本において「天皇は扇の要であり精神的支柱」と分析されていますね。王権国家や立憲君主制の国家は歴史的に数多くありますが、日本が持つ歴史的な特徴というと?

 

諸外国はいわゆる「うしはける国」なんです。これは古い言葉ですが、つまり力で支配・統治する共同体です。一方、日本は天皇と国民が家族として生きる「しらす国」。天皇がしろしめす(知っていらっしゃる)共同体という意味です。

世界が本当に調和で以て平和に向かうなら、しらすに行き着くはず。統治・被統治の二項対立の考えのままで調和を得るのは無理です。ですから日本の存在意義のひとつは、しらすにあります。

 

 

 

 

──天皇は国民を「大御宝」と呼ぶそうですね。西洋など王と国民が契約で結ばれる関係性からすると、そこにみられる違いは興味深いです。

 

初代天皇とされる神武天皇はおよそ2600年余前に即位されたと考えられていますが、「天孫降臨」が起きたのは5千年前と思われます。

神々が個人に意識を共振させた結果、個人が神々の意識を持つようになることが天孫降臨です。この事象自体は決して魔訶不思議なことでありませんよ。高次元のものが日本を持ち上げようとして起こったことなのでしょうね。神々がポコッと降りてきたわけではなく、長い年月をかけておりたようです。その末裔が天皇というわけです。

こういった歴史の出発点をしっかりと論じなければいけませんね。みんなが調和して生きていこうというしらす国の始まりを知り、その反対側の野蛮とは何たるかも知る必要があります。

 

──家族関係と権力関係では、始まりが違うし得られるものの性質も異なるんですね。

 

第二次世界大戦後にハリー・トルーマン(第33第アメリカ大統領)は、ジョセフ・グルー(日米開戦時の駐日アメリカ大使)から「日本ではアメリカのような民主主義は根付かないだろう」と懸念の声を聞かされていたといいます。

歴史的に見て日本とアメリカとでは大きな違いがありますから、システムをそのまま持ってきても馴染むはずがないんです。もっと言えば魂が違うんですから。「プロビデンスの目」の方々の下の組織のすすめに調子を合わせても、うまくいかないのは当然ですね。

 

 

 

 

──プロビデンスの目とは……?

 

世界をここ二千年くらいのスパンで動かしてきたごく少数の方々、と考えていいですね。時代によって構成員は異なりますが、アメリカの紙幣や明治時代の日銀券にもプロビデンスの目が描かれています。

日銀券は日本の貨幣ではありますが、日本の意思だけでは発行できません。宗主国の関与が必要なんです。

 

──著書でもわかりやすく世界の経済や政治状況について論じていらっしゃいますが、支配構造への憤りを感じていらっしゃるのでしょうか?

 

怒ってはいません。私個人の感情的なものはありません。世界情勢の動きは人類の進化の通過過程のあらわれと言えますね。ですから情勢はこれからどんどん変わっていきます。

人類の意識が上がっていくと、支配側にいる人間たちの力の方向は変わっていきます。彼らの力の源泉はいわゆる中央銀行の支配権ですが、まずはそこのパワーが低下するでしょう。

意識が上がれば仮想通貨の流通が予想されます。さらには物々交換の意義も強くなっていくはずです。すると今は苦しい立場にある状況が、光の方へと向かっていくでしょう。

いくら強大なパワーを有していても、そこに信頼がなければ衰えは始まります。権力は信頼なくして正しい方向へは進めません。やがておかしな方向へ暴走してしまいます。

ローマ帝国の衰退とほとんど同じです。国が亡びるということは、人種や国の成り立ちが異なっていても大体の道筋が似ています。民に権限を過剰に与えると、堕落し崩壊していく。権力がパワーを持ちすぎると、暴走する。これは人間の本質のひとつだと思います。

 

 

 

 

──「中今(なかいま)」のこの瞬間、人類は進化の過程にあり、意識の持ち方によって方向性が変わる。一人ひとりの意識によって未来は変わりそうな予感がしてきました。

 

そうですね。日本を含めて世界中である種の危機には瀕していますが、希望はしらすにあり、日本に可能性があるんです。

ただし諸外国の列強は力が強く、用意も周到です。国家が策定する計画のスパンが違いますから。日本人は場当たり的なところが昔も今もありますね。敗戦後、日本の文化が外から変質させられてしまった側面はありますが、今日までその影響が続いているのは日本人に責任があります。自分で気づきを得て、外からの押し付けや刷り込みを解かなくてはいかません。そこをダラダラと甘んじてきてしまった点は、日本人自身の責任です。

 

──近代国家としては、列強と比較すると甘いところがあるのは否めないようですね。とはいえ列強に習えばいいのかというと、文化的・歴史的背景からしてそう簡単にはいかなそうですし、列強が正しいとは限らない……。本来の日本が持っていた良さを引き出すためにできることは?

 

気づけばいいんです。正しいことは何なのかを知って、自分たちの状態に気づくこと。

病気もそうでしょう。病気は病識がないと治らないものなんです。病気というのは『今の生き方ではダメ! このままではもう生命を維持できない!」というピンチを、体がねを上げて伝えてくれているんです。そこに気づいてどうすれば良くなるかを検討することで、改善されていきます。

国家も同じです。異常な状態にあるということに気づかないと、生命体として成り立ちません。そこを放っておくのは、自分で自分の体を傷つけているのと同じです。

 

 

 

 

──自分の体を大切にするように、自分の国を大切にする。しかしそういった愛国心は「右翼」「ネトウヨ」と揶揄されたり風当たりが強かったりするので、抵抗感を感じることも。

 

右翼左翼という言葉ですね。フランス革命から使われることが多くなった言葉ですが、右左と分けて政治的な立ち位置を論じることは個人的には時代遅れだと思っていますし、日本の政治に右左を当てはめようとしてもうまくいきません。なぜなら日本には右翼というべき政党がないんですから。右と左それぞれが存在してはじめて中庸があるはずなのに、それがありません。言葉の定義と政治の実態が合いませんね。

 

──言葉が本来の意味から離れた状態で使われ、浸透してしまったんですね。

 

メディアがそうしていますし、人心攪乱を招いてしまっています。お天道様がみているという感覚があれば、メディアも自分たちがしていることのまずさに気づくはずなのですが……。

ニュースだって事象だけを伝えればいいのであれば、それこそAIに任せれば済みますね。発生した事実を咀嚼して伝えなければ、人間が行う意味がありません。そういったところはもっと真面目に取り組んだ方がいいでしょう。

こういうことだって病識がないと病気は治りません。自分を知って始めてそこから動けるわけでしょう。神様から見れば日本や日本国民は病気に見えるんでしょうね。

 

 

 

 

 

──日本人の変質には、言語感覚の鈍化もありそうですね。情報社会において言語感覚は重要な能力のひとつになります。情報の受け手側がすべき備えとしてはどういうことがありますか?

 

私の場合ですが、スポンサーのあるメディアは基本的には必要ありません。スポンサーの思惑通りにしか情報を流せませんので、そこでフィルターがかかってしまいます。

ただしそういった偏った情報源から気づきを得ることはできますね。「あ、これとは反対のことを考えてみよう」と捉えれば、いい指針となるかもしれません。でも一次情報を集めるのは大変で面倒ですよね(笑)。

かといって世界の情報源の主力というとイギリスのロイター、フランスのAFP通信、ドイツのドイツ通信社、アメリカのAP通信ですが、これはプロビデンスの目の下の組織がつくったメディアですから……。

今の時代はインターネットがありますね。玉石混合ではありますが、インターネットから玉に当たる情報を拾い上げ、価値付けしていくのはいいと思います。ひとつの情報源を信じずに、多面的に情報を取るのも現実的な手法です。そこから俯瞰的にみて、事実とはどんなものかを判断してみてください。つまりはメディアリテラシーですね。

 

 

──矢作先生は論文や文献に触れ、信頼ある情報を構築されているようですが、おすすめの本などはありますか?

 

う~ん! 王道は簡単ではないような気がします。情報の確からしさ自体「これだ」と定義するのはが難しいですから。

ある国家が持っている機密情報のなかには定められた年限を経て公開されるものがありますね。こういったものは情報としてはよい範疇にあるでしょう。ただし本当の機密情報は永遠に開示されません。あくまでそういうものだと思って情報を得てください。

もしくは事実においてその場に居合わせた人の証言というのも価値がありますね。そういった声に注意して耳を傾けてみると、積み重ねた知識とつながって真実が見えてくることがあります。

 

 

 

 

──メディアリテラシーを身に付けるのはもちろん、情報を発信するときにはどんなことに注意するのがよいでしょう。SNSの浸透で、今や個人が力ある情報発信源となっています。

 

五感を働かせるということ、それから理性を働かせることです。両者のバランスをとることが大切です。

五感を働かせて虚心坦懐に事象を捉える。そこから論理思考をしていく。すると難解に見えた事実が、非常に簡単に見えてくることがあります。一方、中途半端な論理思考は事実を見誤らせてしまいます。

 

──ロジカルシンキングは重要!形而上学的なお話しと科学的な思考法は意外や意外、マッチするんですね。論理的思考と日本人を考えたとき、詰めこみ型教育の学校教育で、柔軟なメディアリテラシーを習得することは難しそうに思えます。

 

学校は個人にとっての何かを伸ばす、という場所ではありませんね。厳しい言葉に聞こえるかもしれませんが、金太郎飴のように一定の水準を目安にして能力を揃えようという場です。

それ以外の目標を日本の学校が持っているかというと……。ものごとを俯瞰的に分析するプロセスや情報の適切な取り方などを教える大学がないのが現状です。そして日本にはリーダー教育がない。高等教育の意味が違ってしまっていますしね。

ですが私は日本の教育を否定するわけではありませんよ。今の学校は教科ごとにかっちりと分けられて、学ぶことが細分化されています。リーダー学のように全体を見るようなものがあればまた変わってくるかもしれません。

 

 

 

 

──人生100年時代、老いは避けては通れません。誕生、生、死を意識しながら生きる時間が長くなりますが、変わりゆく社会やグローバルな動きのなかで幸せに生きていくために必要なことというと、やはり?

 

一人ひとりが意識をあげて、中今を生きる! 社会や世界に対して、何か大きな社会運動をすればいいというものではありません。他人様を変えるというのも現実的ではないでしょう。目的地までの道のりが遠いとか近道をしてやろうとか、そういうことを考えない方が生きる道はハッキリとしてきます。

人間の本質や、文化的歴史的背景という影響はあります。ですが生きにくさは自分自身が招いていることでもあるんです。今この瞬間に感謝して中今に生きていると、案外、人生はいかようにでもなるんですよ。

 

 

神話の時代はとても遠くの話に思いがちですが、現代に至るまで途切れることなく語り継がれてきています。きっと多くの重要な意義が積み重なっているのでしょう。直感と理性とのバランスをとることで見えてくるものがあるようです。人生100年時代、日本はどんな歴史をつむぐのか……。それは一人ひとりの意識によって変わっていきます。今日から皆さん、「中今」を生きてよりよい未来に向かって足を進めましょう!

 

 

写真:田形千紘     文:鈴木舞

 

 

 

人間は生き通し。死というゴールテープの先を目指して生きましょう。矢作直樹 氏インタビュー【第1回】

幸せな人生を歩むヒントは「中今」。すべての瞬間を感謝とともに生き切る。矢作直樹 氏インタビュー【第2回】

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

矢作 直樹

昭和31年横浜市に生まれる。
昭和56年金沢大学医学部卒業後、麻酔科を皮切りに救急・集中治療、内科、手術部などを経験する。
平成11年東京大学大学院新領域創成科学研究科教授、同工学部精密機械工学科教授兼担。
平成13年より東京大学大学院医学系研究科救急医学分野教授および同医学部附属病院救急部・集中治療部部長。
平成28年3月31日、任期満了退任。
平成28年4月(株)矢作直樹事務所を開業。

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